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投資ファンドの世界【資産運用】

20代はがむしゃらに働き、30代になってある程度の貯蓄ができたころになると「資産運用」というものに興味を持ち始めるころではないだろうか。

Googleで「資産運用」と検索すると、株式、不動産、債権、ビットコイン・・・などといろいろな投資対象が出てくるが、投資初心者としてはどれに手を付ければいいかわからない。そんなとき自分の代わりに資産運用してくれるのが「投資ファンド」というプロフェッショナル集団だ

彼らは何となく怪しく、何となく凄みのある雰囲気があるが、彼らがどのようなことをやっているかについていまいちピンと来ていない人が多いのではないだろうか。

今回は華々しくスポットライトを浴びないながら、影で活躍している彼らの存在について解説をしていきたいと思う。

1.投資ファンドって何?

投資ファンドと呼ばれる集団に共通する仕組みは、以下の通りだ。

①人からお金を集め
②集めたお金を何かに投資をして
③儲けたお金をみんなで分け合う

このように投資ファンドが行っていることはたった3つのことしかない。実に簡単な仕組みである。

しかしながら、この3つのテーマも深堀をすると多種多様で非常に細やかな芸当が必要になることが以下を呼んでもらえれば分かるだろう。

2.①人からお金を集める

投資ファンドは誰からお金を集めているのか。

「いやいや、書いてあるじゃん、『人』から集めてるんでしょ。」

これは半分正解で半分不正解である。正しい答えは、「お金を持っている人」からお金を集めているのだ。つまり、誰しもが投資ファンドを利用できるわけではなく、投資ファンドを利用するためにはそれなりの「お金」が必要になるのである。

もちろん、投資ファンドの種類によっては、低額(数万円)から利用できるというものもある。しかしながら、低額利用を認めると投資ファンドは極めて多数の人からお金を集なければならず、これらの多数の人に日々情報開示等のケアをしなければならない。そうなってしまったら非常に効率が悪い。

そこで、利回りの良い投資ファンドは一般的に「多額のお金」を持っている少数の人しか相手にしないことが多い。その分かりやすい代表例が「プライベートバンク」だ。

プライベートバンクは資産が1億円~10億円以上の個人富裕層のみを相手とするファンドであり、期待利回りは年利5%以上である。5%はさほど高くないと感じる人もいるかもしれないが、プライベートバンクは「守りの投資で(高い可能性で)年利5%」の実績をたたき出すツワモノ集団である。10億円をプライベートバンクに預けている富裕層は何もしなくても高い可能性で年間5,000万円のリターンを出すことができるのだ。

「何やねん。金持ちの話かいな。関係あらへんわ」と思ったかもしれないが、近年小口からでも利用できるスキームが台頭しているため、続きを読んでもらいたい。

3.②集めたお金を何かに投資する

ファンドには種類がたくさんあるが、その種類は「何に投資をするか」によって概ね分類することができる。代表例は以下の通りだ。

(1)不動産ファンド

不動産ファンドはその名の通り、集めたお金を不動産に投資をし(不動産を買う)投資した不動産価格が上がったところで売却することによりリターンを得るファンドのことである。

日本では昭和の時代(バルブ期を含む)から現在に至るまで不動産投資が好きな国民性である。その理由は、戦後の日本の都市化のスピードの早さにあるという考えもあるらしい。すなわち、戦後の高度経済成長期を通して全国で都市化が進んだが、その時にたまたま都市開発部に土地を有していた地主が多額の利益を得るという話が各所で起きたことから、「不動産価格は上がるものだ」という認識が生まれ、この認識がさらに不動産需要を喚起していき、どんどん不動産価格が上がっていったという話だ。その結果バブル経済を呼んでしまったのだが。

他にも昭和期の人口の急激な増加が不動産需要を生んだという話もあるが、まぁ、不動産投資が好きな国民性にはいろいろな要因が重なったということだろう。

伝統的な不動産ファンドは、ただ不動産を「安く買い、高く売る」というスタイルであったが、近年は「買った不動産に手を加えて高くする」という手法も使われている。分かりやすい例でいうと、建物のリノベーションなどがこれにあたる。

不動産ファンドの特徴は、その値段のつけられ方がシンプルであるということ(ただ人がその不動産を欲しいかどうか)と、それゆえに値動きが読みにくいという点だ。「あそこの不動産価格は絶対に上がるぞ」と豪語しているおじさんをよく見かけるが、それはなぜかと問いかけると、明確な答えが返ってこないことが多い。

不動産ファンドを利用する場合にはそれこそ「地脈」を読む力が必要となる。期待利回りは3~15%と上下の幅が大きいが、比較的小口からの出資ができることが多い

(2)ヘッジファンド

ヘッジファンドとは、金融工学等を用いながらリスクをヘッジ(回避)しつつ投資をするファンドのことだ。何に投資しているのか、と聞かれればメインは「上場株式」だが、債権等のあらゆる分野に分散して投資することが多い。

具体的にリスクをヘッジ(回避)するとはどういうことか、簡単な例を示してみる。例えば、インドの自動車業界の景気が右肩上がりに急成長しており、投資する価値が高いと考えた場合、インドの特定1社の自動車会社に投資をした場合、その会社が「へま」をして倒産する可能性がある。このような場合に、インド自動車会社複数社に分散して投資をすることにより、「自動車業界全体としての成長性」に投資ができるようにするのである。

これは非常に単純な例であるが、実際にはヘッジファンドのプロフェッショナルは業界・時系列・トレンド・統計・政府の経済政策等のあらゆる情報を考慮しながらリスクをヘッジ(回避)している。これは並々ならぬ情報管理と緻密な計算がなければできない芸当である。期待リターンは安定的に10%程度を出しているが、小口の投資は受け付けないことが多い

なお、ヘッジファンドに就職したいという人も少なからずいるが、アジアにおけるヘッジファンドの多くは香港やシンガポール等の税金が安い地域に固まっているため、ヘッジファンドで働きたい人は言語能力も必要となる。

また、ヘッジファンドをベースとして、上場株式に投資したうえで、当該投資先企業の経営に関与することにより株式価値をあげることを検討するファンドがいるが、これがいわゆる「アクティビストファンド」(モノ言う株主)と呼ばれるものである。

(3) プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)

プライベート・エクイティとは、「非上場株式」のことである。すなわちPEファンドとは、上場していない会社の株式に投資をするファンドを意味する。

PEファンドには大きく3つに分かれる。すなわち、

(i)  ベンチャーキャピタル(VC)
(ii) バイアウトファンド
(iii) 再生ファンド

(i)まず、ベンチャーキャピタル(VC)とは、創業間もない非上場会社に投資をするファンドである。VCは数千万円~数億円程度の金額を新しい複数の会社に投資をし、ほとんどの投資が外れるが、数十社に1社程度100倍のリターンを得るというスタイルの投資である。VCは投資対象の会社を選ぶ際、「ビジネスアイデア」と「創業メンバーの質」を重視する傾向にあるが、極めて定性的な判断であるため、投資家としての目利きが試される分野である。

(ii)次に、バイアウトファンドとは、典型的には成長が止まりつつある会社の100%の株式を買取り(M&A)、ファンド自身がその会社の経営を行うことにより更に成長させ、その成長により株価が上がったときに会社を売却することでリターンをあげるファンドである。一般的に「PEファンド」と呼ぶときはこのバイアウトファンドを指すことが多い。バイアウトファンドは、M&Aや経営の高度なスキルが必要とされるためゴールドマンサックスやモルガンスタンレー等の投資銀行やマッキンゼー等のコンサルティングファーム出身者のような「職人」気質な人が中にいることが多い。昨今東芝買収提案で話題となっているCVCもこのバイアウトファンドの一種である。(https://news.yahoo.co.jp/pickup/6390767

(iii)そして、再生ファンドとは、倒産寸前の会社を安値で買収し、応急処置をすることにより株価を上げて売り抜けるファンドである。倒産寸前の会社が対象となるため、ハイリスク・ハイリターンな投資ということができる。

PEファンドは期待リターン12~15%という高い利回りを誇るが、億単位の大口からでないと利用できない特徴がある。しかし、近年「SPAC」というスキームが世間をアメリカを中心に話題となっている。SPAC(Special Purpose Acquisition Company:特別買収目的会社)とは、非上場会社を含む会社を買収するために作られた上場会社である。すなわち、上場しているSPACの株を買うことにより、小口でPEファンドへの投資が可能になるのだ。日本でも近い将来実現されるスキームと思われるためぜひ検討してもらいたい。

(4) その他

その他にもいろいろな種類のファンドがあるが、面白いものに「コンテンツファンド」というものがある。コンテンツファンドとは、映画等の芸術作品の創作のためにお金を集め、その芸術作品の創作に投資をするファンドである。芸術作品はその作成者、演出者等のアート的な才能に左右されるため最も「目利き」が必要なタイプの投資と言える。お金に余裕があればいつか試してみたいという人が多いタイプの投資である。

4.③儲けたお金をみんなで分け合う

投資ファンドによる運用により儲けたお金はみんなで分け合うことによある。ここで、「みんな」の中には投資ファンドも含まれる点に注意が必要だ。当然、①によりお金を出した人にもリターンは分配されるが、その一部が投資ファンドの内部の人に分配される。この分配は「手数料」や「キャリードインタレスト」と呼ばれるものであるが、これにより投資ファンドで働く人間に億単位の報酬が支払われることは稀ではない

他人のお金を利用しておいて億単位の報酬を得るなんて不届きものだ、と思う気持ちももっともだが、それでも投資ファンドが利用されるということは、それだけ彼らの投資技能を求めている人が多いということのあらわれだろう。

5.最後に

今回の記事から投資ファンドの世界が何となくつかめたのではないだろうか。資産運用は難しいが、真に実力のあるプロフェッショナルにその運用を任せた場合、比較的高い確率で資産を増やすことができるという点は歴史が物語っている。今は利用しにくいファンドも近い将来より身近な存在になると考えられているため、ぜひ資産運用手段の一つとして検討してもらいたい。





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