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「異なる価値観・新たな視点」探究的な学びにおけるグループワークの重要性とは

THINKTANQ|シンク探究

学習指導要領が改訂され、高等学校における「総合的な探究の時間」では、自ら問いを見出し探究する学びを通して、新しい時代に求められる資質・能力の育成を目指すことが求められています。成年年齢や選挙権年齢の引き下げなど、高校生にとって社会がより一層身近になった昨今において、探究学習は「生きる力」を育むために必要な時間であるといっても過言ではないでしょう。

探究学習では、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向け、課題の設定→情報の収集→整理・分析→まとめ・表現のプロセスを繰り返していきます。探究学習において、生徒が一人でじっくり考えたり調査したりすることは大切ですが、他者とコミュニケーションを取りながら課題解決に向け議論するグループワークも、物事を多面的に捉えるために重要な要素の1つです。

今回は、探究学習の過程にあるグループワークに着目し、その重要性と進め方や注意点について解説していきます。

「総合的な探究の時間」のグループワーク、感じたことを言葉にしよう

探究学習のグループワークは、協働性の意識を育む上で欠かせない時間です。他者とのコミュニケーションを通して、個人では偏りがちな考えを俯瞰的に捉えることができます。

以下では、地域課題をテーマとした場合の、グループワークの取り組み方の一例をご紹介します。

地域社会における探究課題の具体例

まずは地域の特色に応じた問題を出し合い、そこから課題を見出します。

  • 過疎化や都市部への人口流出

  • 伝統文化の衰退

  • 地域経済の活性化

  • 防災問題   など

今回は「地域の伝統文化」に焦点を当て、衰退していく理由についてそれぞれが感じたことや調べたことをグループ内で発表していきます。

<Aさん>
衰退の理由は、後継者がいなのではないか(仮説)→なぜ後継者がいないのか→伝統文化の魅力が伝わっていないからではないか→なぜ伝わっていないのか、もしくは伝わっているが継承しにくい他の問題があるのではないか

<Bさん>
伝統文化が途絶えつつあるということを初めて知った→そもそもこの地域の伝統文化とはいつから存在するんだろう→自分たちの世代が知らないことばかりだ→地域の人々と交流する機会が減っていることも関係しているのだろうか

<Cさん> 
祖父が伝統文化に関わる仕事をしている→誰も継がず、祖父の代で廃業するそうだ→儲からないと言っていたが、ネット社会である現代だからこそ、広める術はあるのではないか

グループメンバーの意見を聞いてみると、「なるほど、そうだな」と共感する点があることでしょう。そして「なぜそう思ったのか?」を質問し合うことにより、自分や他者の考えを深堀りする機会を得て、より深い“問い”が生まれます。

例えば、Aさんが仮説を立てた後継者がいないという問題。Cさんによる「祖父の代で廃業する」との意見。それぞれの視点は異なりますが、Cさんの意見は、Aさんの仮説を裏付ける事実のひとつとして有益な情報です。また、Bさんの「伝統文化の印象」や「地域の人々との交流機会の減少」などの意見は、伝統文化の衰退にひもづくさまざまな課題を見出すきっかけとなるでしょう。

それぞれの意見を集め、問いをどんどん掘り下げたり広げたりしていきます。そして、課題解決への最適解を見出すための探究プロセスを経て、最後にまとめ・発表となります。

どのようなテーマを設定しても、比較・分類・情報収集の過程において、多様な意見を取捨選択するグループワークをまとめるのは、容易ではないと思います。したがって、グループワークをどの期間でどのように活用していくのか、十分な授業の設計が必要です。また、それは各学校におけるカリキュラムマネジメントの方針に基づいて設定する必要があります。

探究学習での議論から生まれる相互作用

「総合的な探究の時間」のグループワークは、課題発見から解決までの多角的で深い学びが展開されることを目標としています。他者と協働し探究学習を行うことは、以下の2つの意義があると考えられます。

①他者に意見を伝えることで、自分の思考をまとめる手助けになる

相手に自分の持っている考えや情報を説明するため、言語化する力が身につきます。考えを構造的に理解した上で話すことが必要となり、齟齬がないように伝える術を習得する機会であると言えます。また、他者に伝えることで自分の思考がクリアになり、内省するきっかけにもなります。

②他者の意見を聞くことで、多角的な視点を得られる

他者の意見を理解しようとすることで傾聴力が培われ、また俯瞰に捉える思考力を養えます。1つの問いに対し、価値観の異なるグループメンバーそれぞれがどのような視点で物事を捉え、どのように課題発見から解決へ導くのかを知ることで、多様性を受け入れるための力が身につきます。
 
「他者がなぜそう考えたのか?」を意識することは、思慮深く物事を判断することにもつながります。そして先述の例のように、問いの切り口が異なる多様な情報を得ることで、新たな課題に気づくことができます。

これらのことから、グループでアイデアを出し合い考えをまとめることは、個人ワークでは成しえなかった複雑な課題解決にもよい影響をもたらすことが期待されるのです。

グループで話し合いをする時の注意点

グループワークにおいて意見交換の手法であるディスカッションを取り入れることは、主体性や協調性などの能力向上に効果的です。しかし、難しいテーマの場合、なかなか意見が出ないことも予想されます。意見が出なかったり行き詰まったりした際は、テーマや切り口を変えてみることも大事です。

一般的に、ディスカッションはそれぞれが自由に意見を出し合いながら問題を解決することが目的です。その際に取り組む効果的な活動であるブレインストーミングの目的は、多彩なアイデアを出すことであり、質よりも量を重視します。一方、ディスカッションと似た活動であるディベートは異なる立場に分かれて意見の対立があり、説得力が求められます。それぞれ、目的が違う点に気をつけましょう。

意見交換の場において、自分の意見を他者に理解してもらうためには、「結論・根拠・事実」に基づく論理的思考力が必要となります。また、「聞くだけ」「話すだけ」では一方通行となり、ディスカッションとしては成り立ちません。意見を伝えることは重要ですが、それは相手を言いくるめることではありません。ディスカッションにおいては、くれぐれも相手を高圧的に論破することのないよう注意したいところです。

ここで、先生方はサポート・伴走する存在になることを意識してみてください。生徒の主体性を引き出すことに躍起にならず、あくまで生徒の発言につながる場を提供することが大切です。また、ポジティブなフィードバックを心がけることも重要となります。

探究活動における先生と生徒との関わり方については、過去に掲載した記事をご一読いただければ幸いです。

https://note.com/thinktanq/n/n03ad77620e46


グループワークの学びから得る社会的スキル

問いの視点は誰もが同じではなく、また答えも1つではありません。他者の意見から刺激を受けることで自身の在り方・生き方に変化が生じることは、グループワークにおける探究学習の醍醐味であると言えます。

学校生活のみならず、生徒は今後さまざまな変化に向き合う場面が予想されます。立場によって異なる意見に対する理解を深め、的確に情報を整理し俯瞰することは、変化の激しい時代において必要な能力であると考えます。

働き方が多様化する現代社会では、起業やフリーランスなど、企業に所属する以外の選択肢も増えています。その場合、統括する人がいる社内での分業性とは異なり、自身が仕事の全体像を把握する必要があります。そして、営業活動も自分で行うのであれば、コミュニケーションスキルや言語化力・傾聴力も必要です。

また、一般企業の採用選考においても、グループディスカッションが取り入れられることが増えています。探究学習のグループワークは、将来にも役立つスキルを身につけるための貴重な時間となりうるのではないでしょうか。

多様な視点から気づきを得られるグループワーク体験を活かすには、論理的思考を実践することが肝心です。他者へ分かりやすく説明するための技術は、一朝一夕で身につくものではありません。実践を繰り返すことで身につくスキルであるため、ワークを通して学んだことを日頃から意識していきましょう。

まとめ

個人の探究学習とはまた異なる、グループワークの向き合い方。意見交換が肝となるグループワークでは、コミュニケーションの取り方に悩む生徒も多いことと思います。しかし、他者の意見を聞いてアイデアが膨らんだり、また新たな視点を得たりすることは、グループワークならではのメリットです。まずは、「感じたことを言葉にする」。そこから他者の多様な意見に耳を傾け、自分の視野が広がる瞬間を、生徒も先生も一緒に楽しんでみるという意識をもてると、探究学習の幅がぐんと広がることでしょう。

探究的な学びを通して育む力は、これから社会で生きていくために必要不可欠であり、少しずつでも身につけていくことが大切です。一人ひとりが社会の担い手として活躍できるよう、グループワークの場を活用していきましょう。

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THINK TANQでは、「探究」にまつわるさまざまな情報をお伝えしてまいります。探究学習を通じて、日常から得る学びがより深いものとなり、実りある人生につながるきっかけとなれば幸いです。

(執筆/尾崎朋子)



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