THINKTANQ|シンク探究
【インタビュー】探究学習の大学生TAが考える、中高生の探究に大切なこととは?
見出し画像

【インタビュー】探究学習の大学生TAが考える、中高生の探究に大切なこととは?

THINKTANQ|シンク探究

2022年度から高等学校で必修となった「総合的な探究の時間」。

自分で課題を発見し解決していくことを学べる探究学習の時間は、これからの社会で生きていくためにも大切な学びである一方で、その指導や授業の方法に悩まれる先生方も多くいます。

また、探究的な学び自体が受験勉強の邪魔になってしまうと考える方も少なくありません。しかしながら、自分の疑問に対して向き合っていくことが探究であることを考えれば、まさに自身のテーマで研究を進める大学での学びにもつながることは確かです。

そこで我々は今回、大学生TAとして中高生の探究的な学びをサポートする大学生にインタビューを行いました。
高校での探究経験がある現役の大学生だからこそわかる視点から、中高生で行う探究を考えるうえで大切なことを探ってまいります。



■ 今回のインタビュー基礎情報 ■

インタビュイー:
Aさん(大学4年生)
教育学部で教育行政学を専攻。主に公教育と民間教育の連携について研究中。
約80人が探究に取り組む地方の私立高校(普通科)にて、大学生TAとして中高生をサポートするインターンを行っている。

インタビュアー:
佐瀬 友香
株式会社トモノカイの新卒2年目社員。
探究教材の制作をはじめ、学校における探究学習をサポート中。


探究的な学びをサポートするインターンとは?

――さっそくご質問なのですが、インターン先の学校ではどのような探究学習が行われているのでしょうか?

テーマに沿って、生徒が探究を進め、スライドにして発表するということが主な活動になっています。「SDGs」や「地域」といったある程度用意されたテーマの中から生徒が選択する形式になっており、グループに分かれてそれぞれの探究を進めていきます。学校の特色として、全国に探究成果を発表する機会も設けているので、生徒の探究に対して企業などの大人がフィードバックを行うこともあります。

――そうなのですね。となると、生徒さん自身が主体的に探究活動自体を進めていくということになりますか?

はい。グループ内での役割分担なども生徒どうしで決めますし、プロジェクトの進行具合も、ガントチャートなどを用いながら自分たちで管理しています。

――素晴らしいですね。そうなると、インターン生の役割としてはどんなことがあるのでしょうか?

基本的に、生徒たちの探究をサポートする存在です。現在は30名の生徒に対して3人の大学生TAがつく形です。
例えばグループワークの時、うまく話し合いが進んでいないチームがあれば、そこで話し合いを手助けする言葉をかけたりします。
また、そもそも取り扱うテーマに対して興味が持てていない生徒に対しても、どうやったら興味を持ってもらえるかを考えながら接するようにしています。

課題に対して興味が持てない生徒と接するコツ

――探究する際に、テーマが決まっているものだと自分の興味がない場合は探究が進まない、ということがあると思います。Aさんはどのようにしてこうした生徒に接しているのでしょうか?

僕の場合は、生徒の「強み」をまず探すことを意識しています。
見つけた強みをまずは褒めながら、一緒になって課題について考えたりしていくことで、はじめは課題に興味を持てなかった生徒も、徐々に主体性を持って探究に取り組んでいくことがあります。

――まず褒めて、自信を持ってもらうというのが大切なのかもしれませんね。

はい。僕自身、生徒を褒めることはかなり大事にしています。
そうすることで心理的安全性も確保できると思うので、発表などのアウトプットにあまり自信が持てない生徒でも、安心して発表ができるようになると考えています。

現役大学生の実体験。「高校での探究は“調べ学習”になってしまった」。

――ちなみにAさんは現在、「教育行政学」について研究を進められているとのことですが。高校時代の探究的な学びとのつながりを感じていますか?

僕自身はかなり、感じています。今、教育について学んでいることも、そもそもは高校生の時に感じた違和感がきっかけです。一人ひとり違うのに、全く同じ授業を同じ進度で進める「一斉授業」に違和感を覚えたことから、教育についての関心が深まったことが結果として、今の大学での研究につながっています。

ただ、こうして自分の興味や関心が学びにつながるというのは、特殊なことなのかもしれません。
僕が高校生の時にも、探究学習の時間はありましたが、周りは自分の疑問や興味について探究するというより、「やるしかないので仕方なくやる」という人が多くいたのです。

――そうだったのですね。ちなみにAさんは高校時代から、教育を探究のテーマとしていたのでしょうか?

実は当時は、「AI」や「ベーシックインカム」について興味があったのでそこをテーマに探究していきたかったのですが、僕も正直、調べ学習に終始してしまいました。
受験勉強に直接的に関係するわけでもなかったので、自分の決めたテーマを深める時間があるくらいなら、受験科目の勉強を優先してしまいます。このように、探究が何かに役立つ実感が薄いからこそ、結局いろいろ調べてまずは終わらせることが目的になってしまうのかもしれません。

学校での探究学習に期待すること

――Aさん自身、高校時代の探究は調べ学習になってしまったとのことでした。そうはならず、しっかり自分の疑問に対して向き合える本来の探究に取り組めるようにするために、高校での探究学習に必要なこととは何だと考えますか?

第一に、「探究学習がもっと広まる」ことが大切だと思います。
先の話にもつながりますが、現時点では、探究は受験の役にも立たない、取り組む意義が感じにくい学びという認識が大きいと思います。もっと探究の意義が広く認知され、受験の面でも探究が活用できるようになれば、先生も生徒も探究の重要性を感じることができるのではないでしょうか。

――確かに、探究の意義を感じられなければ、学びの意味が理解できず、とりあえずやるという状態になってしまうのかもしれませんね。

そうですね。
併せて、自分が探究でどんな成果を出したのかを認識できる環境も必要だと考えています。そのためには、そもそも探究成果に対する「評価」も確立されるべきですし、その成果自体が受験にも活用できたりするべきだと思います。


こうして探究の意義がしっかり認識できる状態になれば、探究学習は広がると思います。そのうちに、そもそもの探究的な学びを楽しめたり、自分がやりたいからやる、という状態も広がったりするのだと考えています。


――おっしゃる通りだと思います。では、そのために学校でできることとは何だと考えますか?

簡単なことではないと承知の上ですが……。
学校では、探究する「姿勢」や「方法」を学ばせることを中心にしつつ、探究活動のサポートこそ先生が担う、ということができると良いと思います。

――なるほど。つまり、学校で行うべきは探究の活動よりもまず、こうした学びへの姿勢や方法を伝えていくことが大切とお考えでしょうか?

それが理想的だと思います。そうでなければ結局、指導も画一的になってしまって、生徒自身がやりたいこととはかけ離れた活動になってしまい得るので。その結果として、必然的に、探究をやらされている状態になってしまうのでは、もったいないと思いますね。

加えて、小学校などの早い段階から、いろんな「経験」ができる場を学校側が用意するというのも重要なことだと考えます。
「なにが好き?」とか、 「自分はどんなことに興味あるんだろう?」ということって、急には分からないと思うんです。だからこそ、早いうちから自分自身の興味や関心に気づけるようにしておきたい。その意味では、やはりたくさんの経験をして、いろんなことに触れて、実際に感じることで、自分の興味に気づけることが必要だと考えます。

――確かに、いろいろなものを知った結果、自分が何に興味があるのかが分かりますよね。

はい、そう思います。
だからこそ、先の一斉指導への違和感にもつながるのですが、「個別最適化」された探究学習というのも、今後大切になると考えています。
というか、これは探究学習に限らず、日本の教育全体に言えることでもあるのですが。
そもそも、一人ひとりの興味や関心は異なりますし、それぞれ学ぶタイミングも進度も違います。だからこそ、僕は、一人ひとりにあった学習スタイルが確立されるべきだと強く感じていますし、そんな未来を目指したいです。一人ひとりに最適な学習ができる環境が確かに存在する未来になれば、子どもたちはもっと自分の好きなことに対して真剣に向き合えるのではないでしょうか。

総括

今回は、インターン生として中高生の探究学習に携わる現役大学生にインタビューを行いました。
自身が高校生の際に受けた探究学習での経験や、そこで感じた違和感。そして大学生になってからも、自身の研究を進めながら、その目で中高生の探究学習への姿勢を見ている彼ならではの視点は、新たな気づきのきっかけになるのではないでしょうか。

探究学習は、形だけやっていけばよいものではありません。例えば、問いに対する答えを調べて終わってしまうようでは、本当に生徒たちが探究的に考えていく力をつけているとはいえません。
そうではなく、生徒自身がこれからの在り方生き方を考えながら解のない答えを自分なりに探していくプロセスそのものを学ぶことが探究的な学びの本質です。実社会でも応用できるような、生徒たちの生きる力を育む学習こそが今、求められているといえます。

こうした学びを広げていくには、探究が生徒たちの人生に役立つものであるという意識への変容が必要になるでしょう。探究の意義が感じられないままでは、形だけの探究になってしまうことは、インタビューの中でも触れたとおりです。

まずは先生一人ひとりの探究に対する意識の変容から始まり、それが徐々に学校全体へ、そして、学びの主体である生徒自身の意識にも伝播していく。こうした変化を通じて、探究学習がやらされる何かではなく、自らに役立つ力を身につける学びとして認識される社会になっていくとよいですね。

また、探究学習は指導するものではなく、そのサポートこそ先生方が行うようにするというAさんの意見は、非常に重要な示唆といえます。
探究的な学びに取り組むのは生徒自身であり、一人ひとりで進めていくものです。それこそ、一斉に指導して成しえるものとは言い難いでしょう。
このことから、探究的な学びにおいては、ことさらに「個別最適化」を実現するための方法を考えていく必要があるのだと考えられます。

よって今後は、生徒一人ひとりにとって最適になる学びを目指していきながら、学校で探究学習を行う意義と目的についての答えを、先生も生徒も一緒になって探究していくことが求められるのではないでしょうか。

取材・執筆:佐瀬友香(THINK TANQ編集部)


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
THINKTANQ|シンク探究
THINK TANQ(シンクタンク)はこれからの学びで重要となる「探究」をテーマに、SDGsやPBL(課題解決型学習)などの話題をわかりやすくお伝えするメディアです。