見出し画像

世界中で自分しか持っていない「宝物」を見つけよう──大木浩士さんインタビュー(3/3)

主体性とは何か。混沌とする今の時代に主体性がますます重要になってくると感じた私たちTOIは、主体性をテーマにした哲学対話の開催などを通じてこの問いに向き合い、それは「自分らしく生きること。自分の意志で自分の未来に向かい、一歩進むための行動を起こしていくこと。」と考えました。
では、その主体性はいかに生まれ、発揮されていくのか。問いと対話の場の提供を通じて参加者の方が自分自身の内面に向き合い、前向きになる様子を目の当たりにしてきた私たちTOIは、対話には人の主体性を引き出す可能性があると考え、この仮説を対話の場づくりのプロにぶつけてみることにしました。
今回お話を聞いたのは日本全国の中高生を対象に対話型授業を提供してきた大木浩士さん。大木さんが対話の場づくりを通じて考えてきた「主体性と対話の関係」について、全3回に分けてお届けします。
第2回に続く最終回の今回は、主体性を継続していく上でできることについてお話を伺いました。
(interview by tagai, nakada, taninaka, photo by kyoichi)

■ 「なんでも言っていい」って思える、安心できる場を作る

──第2回で日常の中で「主体性」を発揮する方法を聞いてきましたが、実際1回きりで終わっちゃうこともあると思うんです。どうやったら、モチベーションを維持できるのでしょうか?

大木:僕自身の活動も、どうしても1回きりのワークショップになりがちなんですが、あるワークショップで全然喋らない子がいたんです。
 全然喋らないまま1回目は終わっちゃって、「あー、つまらなかったかな」ってその子のアンケートを見たら「超楽しかった!」って書いてあって(笑)

──え!?意外ですね。

大木:僕も「えー!」って思って、そしたら2回目にも参加してくれて、「今回も喋れないのかな」って思っていたら、今度は喋るんです!アイディアをポツポツと。それで、またアンケートに「超楽しかった!」って書いてあって(笑)

──(笑)

大木:面白いですよね。そして、3回目に来た時は、今度はリーダーシップを発揮してファシリテーションまでしてて、「え!なんで!」って思って、その子に話を聞いてみたんですよ。

──なんでそんな風に変わっていったのか気になりますね。

大木:そうなんですよ。
 そしたら、「この場は、“レッテル”を貼る人がいないから、何を言ってもいいって分かった」って答えてくれて。その子は色んなことを考えていたみたいなんですが、学校でそれを言ってしまうと「〇〇って変だよな」って言われるんですって。だから、人前で話せなくなったって。

──周りの人からの言葉を気にして、話すのが怖くなってしまっていたんですね。

大木:逆に、私のワークショップみたいに、初対面で一度きりの人たちだったら話せる人っていうものいるんだな、って感じましたね。
そういった、「自分が何を言ってもいいんだ」って思える場づくりも大切ですね。

画像3

■ 対話する相手がいない!
そんな時は「言語化ノート」で「自分らしさ」を磨く

──安心して「対話」できる場って大切ですよね。ただ、やっぱり他の人がいないと「主体性」って維持できなくなるのでしょうか?

大木:いえいえ、対話は大事ですが、1人でもできることはありますよ。
前回お話しした「言語化ノート」もすごく重要で、自分の中にある考えたこととかひらめいたことをちゃんと文字にしてから棚卸しするっていうのを1 日1ページでもいいし、7分間だけでもいいので言語化していくと、ヒラメキ力とか自分のやりたいことが鮮明になって、「主体性」にも繋がっていくので、オススメですね。セルフモチベーションにもなりますよ。

──そもそもの話になっちゃうんですが、この「言語化ノート」ってどうやって思いついたんですか?

大木:これは、もう大好きな本があって、『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』って本なんですが。
この本では、大きな2つのワークがあって、その1つに「毎朝3ページ何でもいいから書きなさい」っていうのがあって、これを20年近くやっているのですが、気づき力、ひらめき力、思考力、言語力とか、本当にすごい効果が得られるんですよ。
 もう、「書きたくない!」って思ったら、そのまま「書きたくない」ってノートに書くんです(笑)

──本当に何でも思ったままに書いちゃうんですね(笑)

大木:そうです、そうです。
 あと、これも毎日しているんですけど、1日3つ「10年後のために意味がある」と思ったことを書くってことをしています。それは、映画でもいいし、ひらめいたことでも良くて、これをやっていると「今日も意味があることをしたなぁ」ってポジティブにもなるし、行動が変わるんですよ。

──「行動」ですか?

大木:ええ、「思考」ではなく「行動」です。毎日3つのことを書くために、行動を起こすように変わっていくんですよ。これも、非常にオススメの方法ですね。
 「種まき帳」とでも言うんでしょうかね。新しい行動を起こすための種を撒けるようになるんです。

──これは、ずっと1人でされてきたんですか?

大木:ええ、そうです。
「1人対話」みたいに、自分と対話して、思考を深めていく方法ですね。
人間って血液とかもそうですが、「循環」って言うのが重要で、「思考」も循環させる必要があるんですよ。そのために、アウトプットをしていく。そして、またインプットをして、アウトプットする。こんな感じに循環させていくんですよ。

画像4

──これなら、日常的に出来そうですね!

大木:っていうことをやりながら、僕は行動を起こしてきましたね(笑)
やりたいことがあるけれど、人ってなかなか行動にうつせない。お金がない、時間がない。そんな言い訳をしながら、やりたいことを先延ばしにしてしまう。もったいないって思います。「今やりたいことがあるのなら、今やろうよ!」って思いますね。だって、10年後 今やりたいと思ったことを好きでいられるかどうかわからないじゃないですか。

──確かに、そうですよね。「今、この瞬間にそう思っている」ことをやらないと、いつまで経っても行動になんて移せないですよね。

大木:「これは今やりたい」とか「今、好きだ」と思ったことは、小さくていいから、とにかくやってみてほしい。それこそ、僕みたいに「言語化ノート」でもいいし、小さなことでいいの。
例えば、「セミナーをやりたい」って思ったら、 お客さん1人でいいからやってみる。「やる」と「やらない」は雲泥の差がある。やってみたら、絶対変わるよ。
 僕なんかも、「企画書講座」は最初、お客さん2人でしたからね(笑)それでも、今は開催すれば、たくさんの方に参加してもらえるようになりました。

──大木さんの『対話型授業のつくり方』の中にも「自分が望む未来を作りたいなら、自分が動くこと。待っていても、あなたが実現させたい世界は、誰も作ってくれないよ」とありますが、まさしくそこに集約されているように感じますね。

大木:ありがとうございます(笑)

■ 「主体性」は、自分以外との「交流」の中にある

──ここまでお話を聞いてきて、「主体性」の重要性や「対話」との関係性がわかってきたのですが、それでも主体性を発揮できない人は幸せにはなれないのでしょうか?

大木:いや、そんなことはないと思いますよ。
1億人いれば、それぞれの価値観があるので、「主体性」を発揮せずとも幸せに感じている人もいるでしょう。自分の個性はもう埋もれさせて、出さずにいても「私は幸せ」っていう人もいると思います。それは、その人の幸せだから、そうしたらいいと思うんです。
僕は、自分らしく生きた方が幸せだと思うから、行動するのが楽しいんです。これも、それぞれ「主体性」の定義が違うので、人それぞれですよね。

──今回、取材させていただくにあたって「主体性」を「自分らしく生きる」というものだと私たちは考えていたのですが、「自分らしく」生きれないのに幸せになれることもあるのでしょうか?

大木:ある意味、修行じゃないですが、ストイックな人っていますよね。自己犠牲とかが幸せに繋がっていて、誰かのために生きたいっていう人もいると思うんですよね。
そういう意味では、逆に「主体性を発揮しない」っていう「主体性」もあるかもしれませんね。

画像4

──そういう「修行」とかも大事な行動なのでしょうか?

大木:「こうなりたい」って目標があると、自分が持っているエネルギーを爆発させて、推進していくので、「修行」をする時期っていうのも大事ですね。

──なるほど。自分のエネルギーを爆発させる「修行」も大切な時間なんですね。
最後に、個々人の主体性を実践する上で、どういう姿勢で臨むのがいいのでしょうか?

大木:「交流」っていうキーワードを忘れないことですね。
他者との交流みたいに、自分だけの存在じゃなくて、やっぱり世界には自然もあるし、大気もあるし、他の人の魂だってある。そういった目で見えるもの以外の様々なものに手を合わせたり、感謝したりしていくと、自分自身の気づきになって返ってきたりするんだと思うのです。
会話を通しての交流もあれば、会話を通さない交流なんかもね、あったりして。そういった「交流」の中で、相手が「鏡」になってくれるんですよ。自分が与えたものと同質なものがちゃんと返ってくる。

──「鏡」ですか?

大木:「対話」ってそういう要素がありませんか。自分が質問をすれば、答えが返ってきますし、出したものが返ってくるでしょう。だからこそ、鏡になる存在を持っておくっていうのが大切なんですよ。

──鏡となる人をいかに見つけるか、が重要になってきそうですね。

大木:僕なんかは、奥さんが鏡です(笑)
他の人だと、旦那さんとか家族だったりね。身近な人でいいんです。ちゃんと交流して、対話をしていく。それが「主体性」を発揮する近道です。

──やっぱり、誰かとの「交流」や「対話」をしていくことが大切ですよね。非常に、他者との交流や対話から、「自分らしさ」って見えてきて、行動にも移せるようになってくるんだということを実感させられた時間でした。本日は、楽しくて素敵なお時間をありがとうございました!
最後の最後で、大木さんから読者の方へのメッセージをお願いします!

大木:世界中に何十億って人がいますが、「自分らしさ」ってこの世界で自分しか持っていない「宝物」なんですよね。
 みんながそれぞれ自分にしかない「自分らしさ」を持っているんですよ。それをみんなが気づけて、それに根ざした活動や仕事をできたら、こんなハッピーなことってないじゃないですか。「自分らしさ」は、誰にも真似できないし、発揮できていないのはすごくもったいないんですよ。
 だから、「自分らしさ」を見つけるのを、「宝物」を探すように楽しんでください!


─ INTERVIEWEE PROFILE ─

画像4

大木浩士(おおき・ひろし)
株式会社博報堂 H-CAMP企画推進リーダー。大学卒業後、経営コンサルティング会社を経て、2001年より博報堂勤務。マーケティングや広告制作等の業務を経て、2013年に中学生・高校生を対象とした教育プログラム「H-CAMP」を立ち上げる。7年間で600回以上の対話型授業を開催。2016年に経済産業省が主催する「キャリア教育アワード」で、経済産業大臣賞と大賞を受賞。とちぎ未来大使・交流企画プロデューサー/独立行政法人 中小企業基盤整備機構・人材支援アドバイザー/都市と地域の人をつなぐ 里都プロジェクト・代表/羽黒派古修験道 山伏、などの顔も持つ。

よろしければサポートいただけますと幸いです。いただいたサポートは哲学対話を広げるために使わせていただきます。