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気候変動と台風強大化、そして生態系の変化

日本本土では、去年、今年と連続して、大型台風の被害が出ています。

10年前になるのですが、久保田研では、以下のような科研プロジェクトを行いました。

地球温暖化に伴う台風強大化が島嶼生態系の機能と生物多様性に及ぼす影響評価
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21310025/

沖縄には20年以上前から、強大な台風が襲来するようになっています。海水温上昇のため、琉球諸島や日本列島の近海で、台風の勢力が大きくなるためです。

以下は、久保田研で分析した、過去62年間の台風の接近回数の年平均値の地図です。琉球諸島から日本西南部の太平洋岸に数多くの台風が接近しており、北に行くほど台風の襲来頻度が少なくなることがわかります。

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そして、以下の地図は、969hpa以下の大型台風の年平均接近回数です。琉球諸島から日本西南部の太平洋岸は、大型台風が高頻度で襲来することがわかります。

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沖縄では、大型台風による撹乱のため、亜熱帯林の構造が大きく変化しつつあります。10年前の科研では、この点に着目した調査研究を行いました。

台風撹乱による亜熱帯林生態系の変化

私が琉球諸島の亜熱帯林を調査し始めたのは、1990年代でしたが、例えば、沖縄島北部(やんばる)の与那覇岳の森は、林冠が閉鎖した鬱蒼とした雲霧林でした。

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しかし、ここ20年から30年の間、台風撹乱で、大きな林冠樹木が数多く倒壊して、リュウキュウチクが茂ってヤブのような森にシフトしつつあります。以前は上の写真のように樹木が鬱蒼と茂っていたのですが、リュウキュウチクが繁っているのがよくわかると思います。

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与那覇岳のモニタリングサイトを、以下の360度動画でもご覧ください。

台風撹乱の影響を調べた結果の一部を紹介します。下のグラフは、台風で森林の落葉量を示しています。特に2002年の台風は強力で、大きな風害がありました。

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森林の生産量(光合成による物質生産)を調べた結果が、下のグラフです。折れ線それぞれが、異なる森の生産量の時系列変化を示しています。与那覇(Yonaha)は高齢の原生林で、与那(Yona1)は高齢の二次林です、一方、大国(Okuni1 Okuni2)やYona2は若齢の二次林です。林齢の異なる森によって生産量が2倍以上も差があることがわかります。

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若い森(Okuniなど)の生産量が高いのは、森林生態学的には一般的な特徴です。

そして下のグラフは、台風による撹乱と生産量の関係を示したものです。台風撹乱の影響が大きいほど(グラフの横軸の値が大きくなるほど)、縦軸の森林の生産量が大きくなることがわかります。森林の生産量は、樹木の生長量の大きな若い森ほど大きくなる傾向があります。つまり、台風撹乱で大きな老齢な樹木が倒壊して森林が若齢化して、生産量が変化しているのです。

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沖縄に襲来する台風は潜在的には(本州のそれと比べて)大型で高頻度だったのですが、最近では、台風で破壊された森林が回復する間も無く(森が若い状況のまま)、さらに台風破壊が繰り返されるような状況なのです。

温暖化による台風襲来の変化

地球温暖化が進行した場合、地球では台風発生数自体は減少するが個々の台風は強大化し、同時に高緯度まで台風が北上すると、予測されています。

以下も久保田研で分析した、1979年以前(昔)と1980年以後(最近)の年平均接近数の増減を示した地図です。

関東から東北、さらには北海道まで、台風が北上するケースが増えているのが明らかです。年平均接近回数の増減(%)は、温暖化による台風予測を裏付けているように見えます。

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数十年前までは、東日本に大型台風が襲来することは滅多にないことだったので、台風に対する備え(沖縄では窓ガラスのサッシは2重ですし、家の構造も台風耐性の仕様)は、あまり必要はなかったと思います。しかし、昨年今年の大型台風は、風害・水害・地滑り、農林水産被害も膨大です。

日本本土の台風に対する脆弱性は、自然界の生態系も同様と思われます。

温暖化で、生物多様性パターンの変化も着実に進行することが予想されますが、それ以上に、台風の強大化と高緯度への襲来は、より急速に日本の生態系の構造や、生態系サービスを変化させるのかもしれません

参考)別記事では、温暖化による生物分布シフトに伴う、生物多様性パターンの変化を解説しているので、本記事と合わせて以下もご覧ください。




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