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日本の生物多様性は過去数十年でどう変化したのか?

先日、環境省・環境研究総合推進費プロジェクト(環境変動に対する生物多様性と生態系サービスの応答を考慮した国土の適応的保全計画)の会議で、生物多様性の時空間変動の分析結果について報告しました。その中から、今回の記事では、土地利用の変化が日本の生物多様性に与えた影響の(予察)結果を紹介します。

私たちの研究室では、生物多様性ビッグデータを整備して、日本の生物多様性の空間パターンを分析してきました(以下の記事を参照)。そして、ようやく、時間(時代)にともなう、生物多様性の変化も把握できました。

まずは、日本の気候変化と土地利用の変遷です。

日本の年平均気温は1980年代から2010年代にかけて以下のように変動しています。日本各地で温暖化が進行していることがわかります。全国平均1.08℃上昇し、特に東日本の太平洋岸では2度以上上昇した地域が多いです。

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年平均降水量の変動(1980年代と比較した変化%)も顕著です。全国の90%の地域で降水量が増加し、全国平均で降水量が11%増加してます。

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次に、今回の記事で焦点を当てる土地利用の変遷です。

下の地図は、1977年から2014年にかけての自然林の面積の増減(%)です。2014年の自然林の面積は、全国面積比で14%です。1977年は18%だったので、多くの地域で自然林は徐々に減少しています。特に北海道、石川、琉球諸島で自然林の減少率が大きいです。

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二次林の面積は、1977年から2014年にかけて、以下のように変化しています(1977年と比較した面積の変化率%)。2014年の二次林の面積は、全国面積の30%です。1977年は26%だったので、全国的には二次林の面積は増加傾向です。

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人工林の面積は、1977年から2014年にかけて以下のように増減(%)してます。2014年の人工林の面積は全国面積の27%です。1977年は26.5%だったので、全国的に人工林の面積はほぼ変化していません。しかし、地域間の差が大きく、人工林が大きく減少してる地域もあります。

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自然草原の面積は、1977年から2014年にかけて以下のように増減(%)してます。2014年の自然草原の面積は、全国面積比で1.3%です。1977年は1.0%なので、全国的には自然草原の面積は若干増加しています。

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二次草原(人為的に維持管理されている草原)の面積は、以下のように増減(%)しています。2014年の二次草原の面は全国面積比で2.1%です。阿蘇山や秋吉台、富士山周辺などにまとまって分布しています。1977年は4.4%だったので、全国的に二次草原の面積は大幅に減少しています。とくに中国地方の二次草原は大幅に減少しています。

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農耕地の面積の増減(1977年から2014年にかけての面積変化%)は以下の通りです。2014年の農耕地の面積割合(%)は全国面積の8.1%です。1977年は8.3%だったので、全国的には農耕地の面積はほぼ一定ですが、北海道以外では大きく減少している地域もあります。

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水田の面積の増減(1977年から2014年にかけての水田面積の変化%)は、以下の通りです。2014年の水田の面積は全国面積の8.9%です。1977年は11.4%だったので、全国的に水田の面積は減少しています。

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市街地の面積の増減は以下の通りです。2014年の市街地の面積は全国面積の9.5%です。1977年は5.6%だったので、全国的に市街地の面積は大幅に増加し続けています。

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以上のような環境の変化に対応して、日本の生物多様性はどのように変化したのでしょうか。

日本全土を1kmメッシュに分割して、植物・脊椎動物の各種の分布様式を分析してみました。この分析のポイントは、種の分布を予測する際に、気候や地形などの物理的環境要因に加えて、種分布情報の観測年当時の土地利用形態を考慮したことです

これで、各年代の土地利用データも説明変数にして、実際の土地利用に対応した種分布を投影(projection)しました。日本に分布する植物・哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類・淡水魚類の種について、どの地域から消失したのか、どの地域に新たに侵入したのか、定量できました。なお、今回の分析では、土地利用の変化が生物多様性に与える影響を、まずは把握したかったので、気候要因のような物理的環境条件は全ての年代(1980年~2010年の30年間)を通じて不変に設定しました。

1970年代から2010年代までの間に、生物多様性(種数)がどのように変動したのか、地図化してみました。植物、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、淡水魚類それぞれの生物分類群について、種数の変動が明らかです。赤いメッシュは種数が増加した地域、青いメッシュは種数が減少した地域です。繰り返しになりますが、この分析は物理的環境条件を一定にして、土地利用を考慮しています。したがって、赤・青色で表示された種数の増減は、土地利用の変化が与えた影響を反映してます。

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これで、将来的な土地利用形態の変化が、生物多様性に与える影響を定量できる見通しが立ちました。

市街地が拡大し続けらた生物多様性がどのように変化するのか?

里山が消失し続けたら、どのような生物に影響するのか?

水田や農耕地の減少が生物多様性に与える影響は?

これら様々なシナリオで生物多様性の変動を予測できます。さらには、長期的な気候変動の効果も合わせて生物多様性の変動を予測できるでしょう。


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