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考えることは最もコスパがいい。アフターコロナに備え身につけたい「一生食える」スキル

世界規模での新型コロナウイルス感染症の流行で、政治や経済、さらには働き方も大きく変わりつつあります。先行きが不透明な昨今、私たちは今をどう過ごし、どんな力を身につける必要があるのでしょうか。
事業家であり思想家の山口揚平さんが伝えたい、「一生食えるスキル」本質思考とは?

大事なのは、情報量より思考量

思想家の仕事とは何か。それはシンプルに言えば「再定義する」ことです。これまでも「仕事」とは「才能を貢献に変える行為」だし、「お金」とは「外部化された信用」と定義してきました。

多くの人はお金の必要性や意味合いを深く考えずに「何となく稼ぎたい」と言っていて、そもそも「働くとは何か?」に向き合わないまま、ベルトコンベアに乗せられたように日々働いています。

昨今の新型コロナウイルス感染症の影響で、リモートワークを推奨する企業が増えてきました。今後さらに、「なぜ会社に行く必要があるのか?」「なぜリモートではいけないのか?」を問う風潮が生まれてくるでしょう。「なぜ?」を常に持たずに日常に溶け込みながら暮らしていると、素朴な疑問に答えられず、ましては疑問にすら思わなくなってしまいます。

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山口揚平(やまぐち・ようへい)
ブルー・マーリン・パートナーズ株式会社 代表取締役。早稲田大学政治経済学部/東京大学大学院修士。1999年より大手コンサルティング会社でM&Aに従事し、カネボウやダイエーなどの企業再生に携わった後、独立・起業。現在は、コンサルティング会社をはじめ、複数の事業・会社を運営する傍ら、執筆・講演活動を行っている。専門は貨幣論・情報化社会論。著書『10年後世界が壊れても、君が生き残るために今、身につけるべきこと』『1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法』等、多数。https://note.com/age

例えば、多くの人が上司から「考えろ、考えろ」と言われていると思います。ですが、そもそも「考えるとは何か?」を理解している人はわずかではないでしょうか

では「考える」とは何か。私は「意識を情報と知識の海の中に漂わせ、概念を結合させる行為である」と定義づけています。もう少し噛みくだいて言うと、「意識を自由に動かす」こと。前提や思考バイアス、固定概念と距離を保ち、“意識を使って”情報を整理する状態のことです。

情報は新たな選択肢を与えてくれますが、あくまで思考のための潤滑油に過ぎません。思考のための素材であって目的ではないので、「思考>情報」の状態を維持することがとても重要です。

目の前のタスクに対応し続けるのはやめよう

「思考」することの大事さに気づかされたのは、新卒で入社したコンサルファーム時代のことでした。

入社直後、M&A案件を担当した際投資銀行のトップに膨大なレポートを提出したことがあります。時間をかけ綿密に仕上げた山積みのレポートを前にして、投資銀行のトップはさっと目を通してこう言いました。「我々がほしいのは情報や分析ではない。この会社の最もコアな価値の源泉は何か。それだけだ」と。膨大なレポートなど意味はない、と気づいた瞬間でした。

当時の状況以上に、単純な情報を収集するのは誰にでもできる時代になりました。だからこそ、物事を全体的に捉え、複雑に絡み合う情報を整理し、決定的なポイントを探ることに大きな価値が生じているのです。

中には本質にたどり着くことはコスパが悪い、と感じる方もいると思います。確かに本質を見抜く作業は簡単ではありませんし、ちょっとした小金を稼ぐくらいなら本質思考は不要かもしれません。ですが、長期的には最もコスパがいい。本質的な考え方を身につければ一生食べていけるようになれますから。

私の周りにいる生産性が高く、圧倒的に稼ぐ人たちは、総じて皆「100あるタスクの中から、本当にすべき1つのこと」が見えています。彼らは表層的な問題や日々のタスクをこなすだけだと、モグラ叩きのように必ずまた同じ問題が生じると理解しています。だからこそ、本質に目を向ける。

彼らは、「生産性が高い=効率的」なわけではなく、生産性を高める「効果的」な方法を知っていたんです。これが「考える」ことの最大のメリットです。

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「情報デトックス」はなぜ必要なのか

AI問題が叫ばれて久しいです。AIに仕事を取って代わられてしまうのではないか、という危惧です。しかしAIには「考える」ことはできません。ビッグデータを用いた交通渋滞の解消など、計算や二次元の情報処理ではAIが勝るでしょう。私たちは、意識の階層を本質へ近づくために引き上げていかなければなりません。

では、どうやったら本質的な考えができるようになるか。それは3つの方法があると思います。

1つめは「情報デトックス」です。情報が氾濫する世の中、私は情報をあえて取りにいきません。22歳の時から新聞も読んでいない。むやみに情報を取りに行くことで「固定概念」になって、せっかく思考しようとしても情報に引っ張られるデメリットの方が大きいからです。

2018年まで軽井沢と東京を行き来する二拠点生活をしていました。軽井沢で何をしていたかというと「何もしていない」んです。約2年半通いましたが、軽井沢では書籍を一冊も書かなかった。生産的な行為は一切しませんでした。軽井沢で何をしていたか、ただ「デトックス」していたんです。思考するためには、意識のキャパを増やす必要があります

とはいえ、何もしないことに対し、「無生産の罪悪感」を感じる人もいるでしょう。そういう人は、自分の意識のキャパを増やすための投資だと捉え方を変えてみてください。ノイズと距離を置いて情報をそぎ落とし、「思考量>情報量」を意識してください。

また、昨今の新型コロナウイルスの影響下で、多くの人が自宅で過ごしているかと思います。普段考える時間を取れていない人はなおさら発想を転換し、今を「考えるための時間」と捉えてみてはどうでしょうか

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アフターコロナ、「個の時代」は終わる

2つめは「問いを立てる訓練」です。先述したように、本質にたどり着くのは大変な作業です。意識の構造を上へ上へ引き上げていく、いわば思考し続けるとは鮭が川を遡上するような、体力のいる作業です。私も最初からそれができていたわけではありません。

特に、コンサル時代に「なぜ?」という考えを投げかけられ続け鍛えられました。「問いを解く」ことは訓練なので、何度も繰り返せば、自分自身でできるようになります。

難しければ、手っ取り早い方法があります。それは「前提に対して問いを立ててみる」ということ。例えば鉄道会社の収益を伸ばすことを考えたとします。鉄道では「長距離区間に乗ってもらって、高い切符を買ってもらう」ことが常識になっています。それに「果たして本当だろうか」とまずぶつけてみる。「距離と運賃が比例」しているのが常識なら「距離と運賃が反比例」している、つまり「近距離で高い切符」とは何かを考えてみる。

そうやって少しずつ考えを前に進めていきます。登山やクライミングをするときに、楔(ハーケン)を打ちながら少しずつ登っていくような感覚です。

3つめは「体験から入る」ということです。思考することで「本質を掴む」行為やそれによるメリットは実感したことがある人にしかわかりません。例えばバスフィッシングで、陸の上で多くのルアーを見比べながら「本当にこれで釣れるのだろうか…」と思案したところで、意味はありません。まず釣り場へ行ってルアーを付けて投げ込んで、実際に釣れた体験をしなければ、その実感は得られないのです。

もちろん、いきなり体感しろ、というのは難しいかもしれません。そんなときは、自分自身にとって本質的だと思える人、ピュアエフェクト(好影響)を与えてくれる人と空間を共にすることが大事です。空間と人は同化してくるので、今後より「臨在(仏教用語で優れた人のそばにいること)」にこそ人たちはお金を払うようになるでしょう。

「個の時代」と言われていますが、私は全くそう思いません。むしろ「個の時代」は終わります

これからは「個人の力」ではなく「個性」の力。人とのつながりを見出す力や、自身の個性を全体のなかにどう組み合わせるかの作業の方が重要になるのだろうと思っています。

山口揚平さんの思考にもっと触れたい方は、山口さんのnoteをチェックしてみてください。

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取材・文:武田鼎 企画編集:水野綾子 撮影:栗原洋平