梅澤

【お笑い裏方論】テレビ朝日映像・梅澤慶光編!テレビ業界1年目のADが作った、ハートフルバラエティ番組への思い

テレビ業界の制作の人間は入社するとまず「アシスタントディレクター」通称ADを経験します。筆者である作家・立川ヒロナリも以前はテレビの制作会社でADとして働いていました。

今回は、入社してわずか半年後に自身の発案したバラエティ企画が採用され、この度BS朝日で番組が放送されることとなった、テレビ朝日映像のAD兼ディレクター 梅澤慶光さんに『東京で考え中』がインタビューをしてきました。ちなみに、この番組には作家・立川ヒロナリも構成で関わっております。

梅澤さんは他の媒体でも取材を受けており、とても注目度が高まっています。インタビューも番組も是非ご覧ください!

友達との飲みの場から『最後のホームルーム』を発案

立川:今回、企画された『最後のホームルーム 同窓会をプロデュース』(BS朝日 2020年2月24日(月)夜7:00~8:54放送)はどういった経緯で考えたのですか?

梅澤:中学校の同級生と居酒屋で飲んでいた時、「中学の時に戻りたいね」という話でとても盛り上がったんですよ。「あっこれ番組でやれば良くないか?」って思って、卒業生が同じ教室に集まって授業を受けるというのをやればイケるんじゃないかと思って企画書を書きました。

立川:大学生の頃からテレビ番組の企画を考えられているということなんですが、いつ頃から考えだすようになりましたか?

梅澤:大学に5年間いたんだけど、大学3年くらいから企画は考えてましたね。とにかくテレビ『局』に入りたかったんですよ。東京と大阪のテレビ局は就職活動で全部受けました。

立川:なるほど、企画書を沢山書いているということなんですが、一番最初に書いた企画はどんな企画でしたか?

梅澤:えぇ〜これ超ダサいよ(笑)『ゴッドファーザー』という企画で、借金を背負ってたり、無職で家にいる感じの、『普段子どもにバカにされているお父さんが子どもにカッコいい姿を見せる』という内容で、それをテレビ局のエントリーシートとかに書いてたりしました。

立川:お父さんを真人間にさせるみたいな感じ?

梅澤:真人間をさせつつ、ギャップみたいなのを楽しんで子どもの笑顔を取れたらいいなって思っていました。TBSでやっていた『しあわせ家族計画』に近い感じのイメージだったかな。

立川:けっこうお父さんに過酷なことさせる感じ?

梅澤:ハードなことさせたかったけど、就活が進んでいくにあたってハードなことはさせられないよねって面接してくれたディレクターさんや人事の方に言われたね。

立川:ざっくり、テレビ局というのはどんなところですか?

梅澤:なんか…猛者がいっぱいいますよ(笑)

立川:猛者(笑)

梅澤:一人一人おもしろいと思っていることが当然違うので、意見をぶつけながら一つの番組を作っていくんでだけど、こだわりが強い人がいたり、それを円滑に上手く回す人もいるし、一人一つ何か飛び抜けた特徴を持っている人がいっぱいいるって所で『猛者』って感じがしますね。

立川:皆違った能力あるの、HUNTER×HUNTERの幻影旅団みたいですね(笑)

梅澤:一人一人持っている武器が違う感じがします(笑)

梅澤流テレビ業界を就活する上で意識していた2つのこと

立川:では、現在担当されている番組についての質問なんですが、テレビ番組が作られていく過程でどういったことを担当していますか?

梅澤:現状はAD業務からディレクターから演出の部分まで全部やってますね。AD業務だとリサーチ(編者注:番組のロケ先の情報やスタジオで紹介する物の情報やタレントの情報などをネット・書籍・聞き込みなどで調べること)や仕込み(編者注:ロケや収録に向けての準備の総称。撮影現場で使用する小道具の発注やロケ先との段取りなど)なんかをやって、ディレクターだと台本を書いてロケ行って編集してってやってますし、演出は全体のバランスを見てこうした方がいいというのを会議で提案したりしています。

立川:そもそも、テレビ業界に入って1年目で自分の企画が通るなんてかなり稀だもんね。普通はADならADだけをやるのに、全部いきなり経験していて本当にスゴいです。テレビ業界に入ってみてのギャップはなにかありましたか?

梅澤:一番思ったのはちゃんと休める(笑)

立川:イメージが先行しているけど、業界も変わり始めているってことだね(笑)

梅澤:周りから帰れないんでしょ?って言われがちだけどそんなこともなくなってる気がする。だから企画考える時間があったかもしれない。

立川:働き出す前までに何本くらい企画書を書いていましたか?

梅澤:100本はいかないくらい書いていた気がしますね。『ADの企画書』 というアカウント名でツイッターをやっていて、そのアカウント上やアメブロに企画書を公開していました。

立川:それに対して何か反応はあったりしました?

梅澤:来る時と来ない時がありましたね。面白がってくれたテレビ局員の方がDMをくれたりして、「こうしたらいいよ」とアドバイスをもらうこともありました。

立川:それは自発的に連絡するのではなく、相手側から来ることが多かった?

梅澤:向こうから来てましたね。本当にありがたかったです。

立川:今のSNSの時代だからこその繋がりだね。そもそも昔はどんな番組が好きでした?

梅澤:『めちゃイケ』『はねるのトびら』と紳助さんがMCをやっていた時の『行列のできる法律相談所』はめちゃくちゃ見てました。ただずっとサッカーをやっていて、高校では寮生活をしていたので、その頃はほぼテレビは見てなかったですね。

立川:大学のいつ頃からテレビ業界にいきたいって思いました?

梅澤:大学2年の時にサッカー選手の夢を諦めたんですよ。それが大きいですね。高校の時に全国大会に出たりしてけっこう本気でやってたんですけど、俺は通用しないなって思いまして。『イッテQ』と『水曜日のダウンタウン』を見ていて、芸人さんの面白さを裏側にいる人たちがより引き立てているってのがよく分かって、その2つの番組に非常に影響を受けました。
大好きな芸人さんには自分はなれないけど、その人の良さを活かして人を笑わせたり、楽しませる仕事に就きたいなって思いました。

立川:自分なりに就活中に工夫していたことってありますか?

梅澤:2つあって、1つが『タイトルをつけて喋る』のと、もう1つが『擬音を使う』ということですかね。
『人志松本のすべらない話』がスゴい好きでよく見てて思ったのは、「小学校3年生くらいの時のことかな…」とか「お父さんの話なんですけど」っていう感じで、『これから何を話しますよ』ってのを相手に伝えるというのは工夫してましたね。冒頭で面接官に自分のタイトルみたいなのは伝えてました。
『擬音を使う』というのは、例えば「車が出てきて〜」って言うより「車がバーンって出てきて」って言った方が臨場感あって伝わるので意識してました。面接で喋る時に、相手の頭の中に映像が浮かぶような喋り方ってのをすべらない話を見て研究しましたね。
でも、2年連続テレビ局は全滅したんです(笑)だからそこを参考にしろとは言わないです。

立川:よりイメージが鮮明に相手に伝わりやすいしね。宮川大輔さんは『擬音マジシャン』ってキャッチコピーが付いてましたもんね。
では、企画の話に戻りまして、どういった風にテレビ番組の企画を考えていますか?

梅澤:これも人の受け売りなんですけど、SHOWROOMの前田さんが「メモの魔力」という本を書いていて、『何かあったことを抽象化して自分のことに転用する』といったことを謳っていたんですね。これはなんでこういった形なんだ?って何でも疑問に思うようになって、それを自分のことに置き換えると企画が思いつきやすくなりましたね。
『何かを抽象化して転用する』というのは特に意識してますね。スゴい良い本でした。

立川:僕も読みましたけど、クリエイティブな仕事をしている人は読んだ方がいいよね。あらゆることに疑問を持つ、興味を持つっていうのが企画の種になったりするし。

梅澤:そりゃあの本売れるわ。

立川:そりゃ女優さんと付き合いますわね。

一同爆笑

梅澤:一回でもいいから前田さん会いたいね。番組によってはキャスティングできそうだし。

300の企画応募があった中から自分の企画が採用

立川:テレビの制作をやっている上でどんなことが難しいと感じますか?

梅澤:今やっている番組でいうと、卒業生の密着パートを撮影している時に相手のおもしろい要素をどうやって引き出すかが難しいですね。人生って山あり谷ありなのでその卒業生たちに「折れ線での人生グラフ」というのを書いてもらったんですよ。
充実度合いを示しているもので、折れ線グラフがスゴく落ちている時もあれば、MAXに幸せみたいなところもあるので、そこを重点的に聞いていったら
けっこうその人の意外な要素を深掘りできたりしましたね。

立川:そういう小さい点からが『演出』になるよね。自然と引き出すのが若手だと難しいところありますもんね。テレビの制作をする上でどういった点に特に気を付けていますか?

梅澤:視聴者目線を忘れないってことですかね。アイディアを出した時、自分の中では超面白いけど、視聴者はどうなんだって自問自答します。自己満にならないようにというのは意識してます。

立川:この番組はどんな方に見てもらいたいですか?

梅澤:色々な世代の人に見てもらいたいというのもあるけど、『学校』に在学している人にも見てもらいたいですね。学校に行っていた期間ってとても少ない大切な時間なんですよ。母校というのは誰にでもあるので、共感してもらえる部分はあると思います。

立川:今後やってみたい仕事や番組はありますか?

梅澤:今回は大型番組だったので毎週放送される、レギュラー番組をやりたいとは思います。あとはAmazonプライムだったり、ネットの番組もいいなと感じます。サブスクで繰り返し見れるのでそこにはそこの良さがあったりすると思いますね。

立川:そもそも、テレビ番組の企画というのはどうやって決まっていくんですか?

梅澤:新規トライアル枠が設けられていて、それに応募する形が一般的ですね。BS朝日が募集していて、それぞれの会社から提出するって感じです。うちの会社からは20企画を提出したんですけど全体で300くらい応募があって、その中から僕のを含めて3つの企画が採用されて特番になったそうです。

立川:中々それが通らないんだよね… けっこう睡眠時間を削って書いたりすることもあるので落ちたと分かった時しんどいよなぁ。

梅澤:そんな甘くはないんだなぁって思いますね。僕も自分の企画が通る一つ前の募集でいい所までいったのに落ちてしまって、真夜中で迷惑にも関わらず半泣きで上司に電話しました(笑)

「根底にテレビが好き」な人がテレビ業界に向いている

立川:今回の番組の中で自分の考えが反映されて嬉しかった点はありますか?

梅澤:結婚式の披露宴などでよく行われる『メモリプレイ』というサービスを仕掛けていて、そこはとても力を入れた点なので視聴者の方に是非見て頂きたいですね。

立川:とてもハートフルな感じの番組になりそうだもんね。

梅澤:前半は松嶋尚美さんが母校を卒業した一般の方々を沢山イジっていて、そこはバラエティ的に笑える点が多いので楽しんで欲しいなと思います。

立川:タレントさんは松嶋さんしか出演してないですけど、これのキャスティングの理由はなんですか?

梅澤:一番、『寄り添える』という点を考えました。卒業アルバムを使って現在と過去を比較するコーナーがあるんですけど、男性タレントの方がイジッたりすると若干圧があったりすると思ったので、一般の方の良さを広げることができる且つツッコミもできるということで松嶋さんが適任なんじゃないかって思ってご出演していただきました。

立川:どんな方がテレビ業界向いていると思いますか?

梅澤:(即答で) 本当に思うのはテレビが好きな人。AD業務を日々やっていると、「これ何の為にやっているの?」と思うこともありますけど、自分は企画を通すっていうモチベーションがあるのと、根底にテレビが好きってのないと続けようとは思わないです。

立川:では、最後の質問です。『最後のホームルーム 同窓会をプロデュース』を見ていただく視聴者の皆さんにメッセージをお願いします。

梅澤:自分の学生時代にタイムスリップすることができるような番組になっていて、懐かしい気持ちを味わえるんじゃないかなと思います。在校生の人も今自分が置かれている状況が貴重な時間なんだというのを改めて知れる番組となっているので、是非見ていただきたいですね。

立川:なるほど、それで狙うは…

梅澤:ギャラクシー!(ギャラクシー賞) Hello ギャラクシー!

立川:いいですね、そのフレーズ。この番組が終わっても関係なくやっていきましょう。

一同爆笑

梅澤:俺この番組終わったらまたADだからね(笑)

立川:いっそのこと、「ギャラクシー梅澤」みたいな芸名みたいなの付けよ。

梅澤:マッコイ斎藤みたいな感じだね(笑)でもパッと見、こいつおもんなさそうって思われる(笑)エンドロールに「ギャラクシー梅澤」って流れてきたら面白いけど、超恥ずいなぁ〜。


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