THE W決勝進出するも仕事は増加せず!? 謎めいた女性漫才師『にぼしいわし』に独占インタビュー
ボケ・にぼし、ツッコミ・いわしという芸名で大阪で活動する女性コンビ、にぼしいわし。M-1グランプリ2019では準々決勝まで進出し、先月行われた『女芸人No.1決定戦 THE W』では見事決勝まで進出し、頭角を現した。
謎めいた雰囲気のある彼女たちはどんな人物なのか?
『東京で考え中』で独占インタビューしましたので是非最後までご覧ください。
ハイスクールマンザイでは霜降り明星やレインボー池田と闘った
立川:女芸人No.1を決める賞レース『THE W』の決勝に進出しましたげ、それ以降で東京の仕事は増えましたか?
いわし:いや、仕事が増えたみたいなのは全然なくて。
にぼし:ライブ自体は増えましたけど。
いわし:関西ではインディーズのエントリー制のライブが主なので、お声がけ頂くというよりかは自分たちでエントリーしていくというのが基本なんですよね。
香川県の乾物屋さんから「我々の会社もにぼしを取り扱っていますので何か力になればいいなと思います」というDMが届いたくらいです。
立川:意気込みが送られてきたんですね(笑)THE Wの予選の段階ではお2人としては手応えありましたか?
いわし:ルミネtheよしもとで準決勝があったんですが、他の人たちがスゴいウケていてうちらは後ろから数番目くらいのスベり具合だったのでまさか決勝に行けると思わなかったです。
にぼし:誰やねん感がスゴいもんね。
立川:決勝ではファーストステージで敗退しましたが、笑い飯の哲夫さんだけにぼしいわしさんに投票していたのが印象的でした。ちなみに、2人の共通で好きな芸人さんや芸人なる前に憧れていた方はいらっしゃいますか?
いわし:よくそれ聞かれるんですが、あんまりいないんです。この人みたいになりたいって決めすぎずやった方がいいんかなって思ってます。
にぼしとはこの人のこのネタ面白いなって話をすることはあっても憧れた芸人さんが共通するという感じではないですね。
にぼし:芸人なる前は横山ホットブラザーズに憧れてました。
立川:「お〜ま〜え〜はア〜ホ〜か〜」の。
いわし:そればっかり見てたな。
にぼし:お笑いってノコギリ使うもんなんやなって思ってた。
いわし:お笑いの基本はそれなんや(笑)
立川:お2人は芸名が『にぼし』と『いわし』なんですが、本名は公表してないんですか?
いわし:してないですね。
立川:完全にしたくない?
いわし:はい。吉田羊スタイルですね。
立川:コンビ名の由来は?
いわし:高校の同級生なんですが、にぼしが入っていた部活にギャルがけっこういて、急にある黒ギャルが「にぼし」って呼び出したんです。それであだ名がそこから3年間「にぼし」になりました。ちょうどいいからそれに乗っかろうと「いわし」と付けました。
にぼし:「いわし」には何の意味もないですね。
いわし:高校3年生の時に『ハイスクールマンザイ』に出場しまして、その時から『にぼしいわし』と名乗ってました。近畿大会の準決勝まで進出しました。
立川:あ、霜降り明星の粗品さんが当時組んでいた『スペード』が出てた時ですか?
いわし:そうです。一緒の大会に出てました。その時優勝したのはレインボーの池田君が組んでいたコンビでした。せいやさんが組んでいたコンビも同じ大会に出てましたね。
(2010年8月14日・イオン大日SCにて行われたハイスクールマンザイ近畿大会のセミファイナル。霜降り明星の粗品が『スペード』、せいやが『ドンパルトン』、レインボーの池田が『STAND BOX』というコンビで活動していた)
ちなみに初舞台は高校の時にアマチュアなら誰でも出られる大会に出たのが最初でした。
大阪NSCに入学し芸人生活をスタートするも吉本には入らなかった
立川:芸歴がやや曖昧なので確認したいのですが、NSC35期を卒業してからは活動されてました?(同期はゆりやんレトリィバァなど)
いわし:半年くらいなんですけど、吉本の女芸人祭りですとか、オーディションライブとかは出ていました。
いわし:ちょっとややこしいんですけど、NSCに入ったのは高校卒業してすぐではなくて1年後なんですよ。私は普通に大学に通いだしたんですけど、にぼしは浪人生になりまして。
それでにぼしは入学金の40万円が工面できなかったので、私が大学1年生の1年間で自分の分の入学金とにぼしの分の半分をバイトで貯めて入学しました。
立川:おぉ〜スゴいですね。
いわし:私のおばあちゃんににぼしの入学金の20万円を工面してもらってて
NSC卒業後に、月1000円とか3000円とか返してたんですよ。
にぼし:ちゃんとでも封筒に入れて返しました。
立川:律儀ですね、そこは(笑)
いわし:半分くらい返した時くらいにおばあちゃんがボケ始めて、返済までにボケ切って亡くなっちゃったんですよ。
立川:おぉぉ…はい。
いわし:おばあちゃんの記憶の中でこいつはドロボウなんですよ(笑)
にぼし:貸した金返さんヤツって思われてるかも(笑)
いわし:貸した金返さんヤツとうちの孫はなんかやらされてるって思って死んでいったんですよ(笑)
立川:笑えるエピソードで着地してくれて良かったです(笑)
にぼし:でも4年くらいかけてちゃんと返しました。
立川:完全にお笑いをやっていなかった期間はどれくらいですか?
いわし:2013年デビューですけど3年くらいはやってないですね。M-1の予選だけはアマチュアで出てました。
立川:M-1グランプリ2019の準々決勝でやったネタは、やろうと思っていたネタを辞めて急きょ作ったネタで臨んだと伺いました。
いわし:『行列』というネタがあってそれをやろうと思ってたんですけど、ライブで試していてもなんかウケがイマイチだったんです。準々決勝の前日に、よく出ている劇場でライブがあったんですけどそこでもつんつるてんやって。
「大阪のお笑い好きが集まってるここのお客さんにウケないならアカンやろ」って思って。
当日のお昼12時くらいから急いで作ったネタを準々決勝でやりましたね。
立川:新ネタで挑むのスゴいですね。ちなみに、にぼしいわしさんがやられているnoteでネタの音源を販売してるのスゴくいい試みだと思います。購入される方はいらっしゃいますか?
いわし:全部買ってはる人もいるし、題名を見て興味持ってくれる方はいます。(にぼしは)知らんと思うけど。
にぼし:知らん。管理全部して下さってるんです〜。
いわし:サポートだとやりにくいと思うんですけど、漫才を買うって捉え方をしてくれる人はいるんじゃないかなと思います。
ハクション中西さんっていう事務所の先輩がいるんですけど、ネタの台本を売ってますね。
にぼしいわし初の単独ライブを東京と大阪で開催
立川:ネタをする上でこれはやりたくないですとか、自分たちの中でルールはありますか?
いわし:『女性あるある』みたいなやつは自分たちがあるあるに感じている事と世間があるあるに感じている事がズレてるんで、ネタとしてもできないし、あまりそういうネタは好んで見ないので外してますね。
ネタを私が書いてるんですけど、『にぼしが言ったら面白いこと』というのを大前提に考えていて、『THE W』のネタはそれに沿って作ったような感じで。あまり素に合わないような事はしないってのはありますね。
にぼし:ほう…
立川:分かってないんですか(笑)
にぼし:なるほど、へぇ〜。
立川:東京と大阪で単独ライブをやりますが、ライブ名の『ぱらぴりこ』はどういう意味ですか?
いわし:にぼしに、「適当にひらがな5文字言って」ってオーダーしたら
「ぱらぱらぱら」とかずっと言い出して(笑)
にぼし:ぱらぱらぱら、ぱらぱらぴ… あ、ぱらぴりこ! ええやんって。
いわし:という感じで決まりました(笑)
立川:この単独ライブのフライヤーやグッズのイラストはにぼしさんが描かれてるんですよね?
にぼし:そうみたいですね。おそらく。
立川:いや、そうですよね?(笑)
いわし:憑依してるんや、違う自分がいて。
にぼし:(絵描いてる時は)お笑いをやってる時より楽しいです。
立川:ちなみに、これは何をイメージして描いたんですか?
にぼし:単独ライブには全く関係ないんです。なんかインドが好きで、
インドのことを思い浮かべてたらこういう絵になりました。
なんか、世界のお葬式とか調べるのが好きで。
一同爆笑
にぼし:それでインドが面白いお葬式するので、本をずっと読んでたらやりたくなって描いた次第です。
立川:インドはどんなお葬式をするんですか?
にぼし:火葬で、ガンジス川のほとりで薪くべてその上にご遺体置いて燃やすんですけど、ご存知ですか?
いわし:知ってるか!
立川:ごめんなさい、勉強不足でした(笑)
にぼし:お金持ちだと薪をいっぱい買えるんでしっかり焼けるんですけど、お金ない人は薪をあまり買えないので、弱い火で生焼けになるんです。
なんで、火葬場のおっちゃんが棒でご遺体をつついてちょっとバラバラにして。
立川:はいはい笑
にぼし:ちょっと焼けやすいやすいように、中まで火が通りやすいようにして。焼き加減がレアだとかわいそうなんで。そういう事が書いている本読んでる時、楽しいです。
立川:そういった趣味的は話も伺いたいんですけど…
いわし:世界の葬式調べる趣味って何!?(笑)
東京と大阪、両方で面白いと評価されたい
立川:作ったネタの題材の中で『これは伝わらなかったなぁ』というネタはありましたか?
いわし:関西圏では給食のおかずを大おかず・中おかず・小おかずって言うんですけど、大おかずを牛耳っているヤンキーがいて、それを取り返すコント漫才を作ったんです。
冒頭私がおかずを持って「あ〜今日の菜の花のおひたし、満開やわ」って言ってそこから無音が続いて(笑)オチまで全部伝わらなかったです。
にぼし:おかしいな〜って言うて。
いわし:ホームやのに。事務所ライブなのにウケなかったです。
立川:なるほど(笑)テレビ出演自体って関西ではあるんですか?
いわし:ないんですよ。THE Wが完全に初めてです。
にぼし:オーディションの数自体も少ない気がします。
いわし:マセキ芸能社に所属している芸人の知り合いが多いんですけど、話を聞くとオーディションの数がえげつなくて。この世でオーディションってそんなに開催されてるの?って思います。
立川:東京進出は考えていますか?
いわし:大阪にいても周りから「東京行った方がいい」ってスゴい言われているんですけど、東京でも大阪でも『面白い』のが評価されるってのは一緒やから、両方でウケるようになったらいいんじゃないかなって思ってます。
スパンキープロダクションは月に一度東京に行ける機会があるので、月に3日くらいは東京でライブして後は大阪でライブをしてって生活が定着しつつあるので、今はこのスタイルを頑張りたいですね。
東京でも大阪でもライブができる状態なので、東京進出は今のところ考えていないですね。
立川:にぼしさんをどうお考えですか?
にぼし:えっと……… へぇ〜と。
立川・いわし:笑
にぼし:なるほどな〜 よう考えてはるなぁと。なんか分からないですけど、東京来たらね、めっちゃ咳出るんですよ。(笑)
いわし:水が合わへん?
立川:まぁ空気悪いとかたまに言いますけど。
にぼし:ちょっとずつ慣らしていきたいですね。
いわし:ライブの平場でスベり過ぎたからやろ?(笑)
「AマッソやDr.ハインリッヒに似てる」と言われる
立川:お2人の芸風を形容する際に「この人っぽい」と言われる事に関してはどう思いますか?
いわし:AマッソさんとかDr.ハインリッヒさんってたまに言われますね。
立川:僕もそれは思いました。その2組の要素を持ったコンビって思ったんですよ。いいとこ取りしたみたいな。
いわし:エル・カブキの上田さんに関しては私らのネタを見てないのに「Aマッソやろ」って言ってきはりましたね。
やっぱり光栄やなって思う反面、オリジナリティが足りてないのかなとも感じます。M-1の予選の時よりもTHE Wの決勝の後の方がそういう声が多くて。
その辺りをどうしてくかは今後の課題ですけど、個人の良さが出ればいいかなって思います。
立川:なるほど、ではこういった仕事をやりたいという展望はありますか?
にぼし:ラジオやってみたいと思いますね。
いわし:できればライブで食えるようになりたいです。ライブでその場にいる人と画面越しの人の反応が違ったりして、伝わり方がライブの方がストレートなので、ライブの方が魅力を感じます。
コンスタントに単独ライブをやって生活できるようになりたいということが目標ですね。
にぼしは『志村動物園』やった?
にぼし:志村動物園出たいです!
立川:動物がお好きなんですか?
にぼし:ど、ど、動物お好きです。ネコを飼ってます。歯のないおばあちゃんの。もう、ぼちぼちなネコなんですけど…
いわし:死ぬ話多ない?(笑)
立川:なんか一貫して死の話がありますね(笑)
いわし:死と隣り合わせみたいになってる。(笑)
いわし:前ににぼしが飼っていたネコが家から急に逃げて、一年くらい経ったある雨が降ってた日にドアを開けたらその逃げたネコがずぶ濡れでおったんですよ。けっこうボロボロで看病したんですけど、看病の甲斐もなく亡くなってしまって。
髪の毛乾かしたり、色々綺麗にしたりしていて顔をフッと見たら知らんネコやったんです。
にぼし:びっくりしました(笑)最後の力を振り絞って帰ってきたと思ったら全然知らんネコでした。
ということもあって、志村動物園出たいです(笑)
今年の目標は「全体を通して爆発的な笑いが続くネタを作る」
立川:インプットを増やす為に本や映画やアニメを見たりはしますか?
いわし:星新一さんのショートショートが好きでよく読みます。短い間に起承転結があって、オチがスゴい綺麗に決まっているので漫才の作り方とも似てるんじゃないかと思ってますね。
後は女ドロドロ系の小説も好きですね。湊かなえさんとかの。
芦沢央さんの『悪いものが、来ませんように』って作品もオススメです。
立川:今後の芸人象のあり方としてはどうお考えですか?
にぼし:人からの反応を気にしてまだ素があまり出せていないので泣くとか、上手く話せないとかありのままの素を出していきたいですね。自らを解放できるようにしたいですね。
いわし:ネタの内容で言うと、ワードワードでピンポイントにウケさせようとしちゃうと笑いがすぐ終わっちゃって、笑いが長続きするようなネタにならないんです。
ピンポイントピンポイントで作るよりかは全体通して爆発的な笑いが続くという感じのネタができればいいなというのは今年の目標にしてます。
立川:それを単独ライブで見ることができたらスゴく嬉しいなと思います。
いわし:(小声で)がんばりまーす…
立川:では最後に、単独ライブに向けて意気込みをお願いします。
いわし:こういう事やりたいああいう事やりたいというのをずっとずっと考えてはいました。
構想自体は長い事していたので楽しめるかと。映像もあり、漫才もコントもありますし、仕掛けがいっぱいあるような単独ライブにしていきたいなと思っています。前の晩はよく寝て、万全の体勢で来て頂けたらと思います。
にぼし:要所要所で私の踊りが入るかもしれないんですけど、けっこう腰を入れているのでそこに注目して頂けたらなと思います。体幹で踊っているので。お笑いというよりかは私のショーを見に来て下さい。
【にぼしいわしプロフィール】
スパンキープロダクション所属、ボケのにぼしとツッコミのいわしによる女性コンビ。女性らしさを感じさせない、独創的な設定の漫才を主に行う。
大阪NSC35期を卒業。同期はゆりやんレトリィバァ、ガンバレルーヤ、濱田祐太郎、からし蓮根など。
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