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【お笑い裏方論】ワラリー!編「ライブシーンを盛り上げるプラットホームになりたい」

突然予定が空いたからお笑いライブに行きたい!気になる芸人さんのライブ情報を知りたい!そんな時に便利なサイトがワラリー!です。全国のお笑いライブを日付やキーワードで検索できるこのサービス、お笑いライブによく行かれる方はご存知の方も多いのではないでしょうか。今回はこのワラリー!を運営するかしいさんを取材してきました。まだまだライブの自粛が続く日々ですが、ライブ解禁後のご予定を考えながらぜひご覧ください。

立ち上げから運営まで1人で手掛ける

坂本:今回はコロナウイルスの影響もあり、初めてオンラインで取材をさせていただきました。まずは多くのライブが中止になっている現状に対してどう考えていますか?

かしい:楽しみにしていたイベントがどんどん中止になっていくのは心苦しいですね。プレイガイドが返金手数料の無料化を発表したり、動画配信サービスでの投げ銭などいろいろイベント主催者さんをサポートするサービスも増えているので、有益な情報は広めて少しでも主催者さんの力になればいいなと思います。
イベント自粛要請が出てから2週間近く経ち、しょうがないとわかっていてもやっぱりどこか退屈です。配信ももちろん面白くてありがたいのですが、ライブならではの熱気があるというか…。「ライブに行けない」というフラストレーションがみんなの中にたまっていると思うので、行けるようになったときにもっと便利に使えるよう、今はワラリー!の開発を進めています。

坂本:そもそも「ワラリー! 」を作ったきっかけは何ですか?

かしい:2014年からWalive!というお笑いライブの検索サイトが運営されていたのですが、2017年9月に閉鎖されてしまったことがきっかけです。サイトがなくなってしまうのはもったいないので、自分で新しく作ることにしました。2017年5月頃からお笑いライブに行くようになって、「こんな面白いものがあったのか!」「なんでもっと知られていないんだ!」とWalive!さんのコンセプトに共感していたのも理由です。今はおもしろい芸人さんやお笑いライブがたくさんあることを知ってほしい、初めてお笑いライブに行く人にもわかりやすく情報を伝えたいという思いでサイトを運営してます。

坂本:なるほど。本業はWEBエンジニアですか?

かしい:エンジニアではないです。本業はエンタメ系のIT会社で、チケットの不正転売防止に取り組んでいます。前職では大規模な業務システムの設計や要件定義をやっていましたが、WEB開発の知識やスキルは全くありませんでした。
Walive!さんが閉鎖してから独学で勉強して、いろいろな人にアドバイスを聞きながら1人でワラリー!を作りました。仕事の合間にやっていたので、リリースまでは約1年かかりましたね。最初の1年はTumblr(タンブラー)というブログサービスを使っていて、2018年11月に現状のRuby on Railsというフレームワークで構築しているWebサービスになりました。

技術的なことに関して気になる方はこちらもご覧ください▼

坂本:個人開発でここまでできるのはすごいと思います。簡単に言うとどういう仕組みなんですか?

かしい:Tumblrを使っていたときは、全部手動でライブ情報を入力してました。1つのライブを入力するのに2、3分。それが1年で1万件。大変すぎてなるべく手動入力は減らしたいと思って自動化しました。今はライブ情報の9割近くはプログラムで取ってきて表示させてます。TIGETとかを使ってくれたら自動で情報を取得できるんですけど、Twitterでしか告知しないライブも結構あるので、残りの1割はそういうのを見つけたら自分で入れたり、主催者さんがたまに自分で登録してくれたりしてます。
全部のライブ情報は網羅しきれないので、主催者の方にももっと使ってほしいんですけど、入力方法がわからないのか、入力がめんどくさいのか、ワラリー!に登録して集客が増えるということが伝わっていないのか、まだあまり使ってもらえてはないです。そこはずっと課題ですね。

坂本:ワラリー!に載ることで集客が増えると思うんですが、実際どうですか?

かしい:ワラリー!に登録してくれているライブ主催者の方からは、ワラリー!経由で予約してくれる人が増えたと教えてくれましたね。最近Googleタグマネージャー(リンクをどれくらいクリックされるかわかるシステム)を入れたんですけど、それを見ると予約サイトやメール予約をクリックしてくれる人も結構いるみたいです。実際に会場に足を運んでるかまではわからないですが、ワラリー!経由でチケットを買ってくれている人は確実にいます。集客を上げるためにも、もっと主催者の方にも使ってほしいです。(ライブ登録はこちらから!)

自身でも週1はライブ会場へ

坂本:本業もやりつつ1人でサービスを運営してるということは、今はバグがあったら深夜とかに対応してるんですか?

かしい:週末か夜になりますね。あまりメンテナンスできなくて、バグがあっても放置されていることもあるので、少しずつ改善していってます。ライブに行かなければ開発できるけど、それってどうなんだってせめぎ合いがありますね。自分がライブに行ってばかりだと開発できないし、でも自分がライブに行かなくなると、お笑いライブに行く人を増やしたいって言ってるのに矛盾してないかって…だから本業と趣味とのバランスを取ってやってる感じですね。

立川:ご自身ではどのくらいの頻度でお笑いライブに行かれてるんですか?

かしい:週2〜3くらいですかね。少なくとも週1は必ず行ってるので、今回のコロナでまったくライブに行かないっていうのがかなり久しぶりです。

坂本:かなり行かれてるんですね。ちなみに好きな芸人とおすすめの芸人を知りたいです。

かしい:好きな芸人さんはたくさんいらっしゃって難しいのですが、お笑いライブに行くようになったきっかけはザ・ギースさんです。「すいているのに相席」というユニットコントの公演を見て、「コントって面白いんだ!」と思いました。
あとは2017年のキングオブコントがすごく印象に残っていて、ゾフィーさん、にゃんこスターさん、パーパーさんが今でも好きですね。じわじわライブシーンで評価されていたときに決勝にバーン!と進出して夢を与えてくれたのが衝撃でした。
おすすめの芸人さんはひかるぶんどきさんです。現在はひとりコントのネタが中心なのですが、とにかく一挙手一投足に気迫があって目が離せないですね。今年のR-1ぐらんぷりの予選でも拝見しましたが、誰にもできないことをやってのけてるなと思いました。アニメみたいな展開なのに妙にリアリティがあるんですよね。

ひかるぶんどきチャンネル▼

立川:ワラリー! を運営していてアクセスが集中する時期があったり、特定の検索ワードが増えたなと感じることはありますか?

かしい:去年のM-1の後からアクセス数が増えてきて、ぺこぱさんが人気ですね。お笑い自体も「第7世代」というくくりが浸透してきて、盛り上がってる感じがします。吉本の芸人さんだったらチケットよしもとを見れば大体ライブのスケジュールがわかると思うんですけど、それ以外の芸人さんだとどこを見ればいいのかわからないので、結構ワラリー!で検索されやすいのかなと思います。
あとは、テレビ番組「笑ってコラえて!」にささやきロリポップさんが出演されたときにアクセス数が急増しました。ネット上にあまり情報がなかったので、「こいつら誰なんだ?」と検索した人が来てくれたのかなと。
まだあまりテレビに出演していない芸人さんでも、検索されたときのためにネット上に情報を置いておくことは大事だなと思いました。

立川:推しの芸人がいなくて初めてお笑いライブに行くという人はワラリー!を通してどうやってライブを見つければいいですか?

かしい:そういう機能はないかもしれないですね。基本的には好きな芸人さんをきっかけに検索して知っている芸人さんが何組かいるライブを選ぶ、ライブによく行っている方が日付で検索してどのライブに行こうって選ぶという感じです。出演者をまったく誰も知らないと取っ掛かりがなくなっちゃうので、本当にきっかけがない人のためには人気のライブを表示してあげたらいいのかな。初めての人にも使いやすくしていきたいですね。

立川:芸人さんから意見をもらったことはありますか?

かしい:ありがたいですと声をかけてもらえることはあります。アンケートはライブに行くような人たちにとって新しい気付きになればいいなと思ってやってるんですけど、芸人の皆さんもアンケートの結果は気にされてるようですね。入賞したぞってライブやYouTubeで話題にしてくれる芸人さんもいて、モチベーションになっているのであれば嬉しいです。

立川:ライブに行ってる人が回答しているアンケートなので、よりコアなお笑いファンの人の結果ですよね?

かしい:ライブシーンのことを中心に書いてくれてるときと、テレビを見る人も回答してくれることもあるので、「MCがおもしろいと思う芸人アンケート」で1位がトンツカタン森本さん、7位がくりぃむしちゅー上田さんみたいな、不思議な結果になりますね。テレビにたくさん出てる人はもう当たり前だろって思って多分投票しないんだろうと思うんですけど、それはそれでおもしろいなと思います。

MCが面白い芸人さんアンケート

ファンが自発的に行動する文化を守りたい

坂本:プログラムを勉強するにあたって挫折はなかったんですか?

かしい:よくわからなくて手をつけられてない機能はあるんですけど、基本的には理論上できるはずって思うんですよ。できるはずだけどできないのがもどかしいので、人に聞いたりネットで検索したりしてなんとかできるようにしてます。技術が好きというよりも実現したいものがあるという思いをベースに頑張ってます。

坂本:作りたいものがあるとモチベーションになりますよね。

かしい:私はお笑いだけじゃなくて映画、音楽、漫画とかいろいろ文化的なものが好きなんですけど、だんだん見るだけじゃなくて自分も演者のように生きたいなと思うようになって。誰にも気にされてなくても自分がやりたいことをやって道を開くというか、「表現する」ということの一環でサービスを作っているというイメージです。

芸人さんも最初のうちは下積みでバイトしながら好きなことをやって、伝わるように四苦八苦して、新しいものを生み出してしていきますよね。自分は会社員としても働いてるからまったく同じではないんですけど、自分が好きな人たちと同じ価値観に身を置きたいっていうのはありますね。

坂本:なるほど。アツいですね。

かしい:ちょこちょこ競合サービスは確認してるんですけど、どれも途中で更新が止まっちゃったりしてて、作るのは簡単だけど運営し続けるのが大変だなと思います。ファンはお笑いや芸人さんに興味があるので、べつにツールはなんでもいいんですよね。基本的に中の人の気持ちなんてどうでもいいと思うので、そこでいかにコンセプトに共感してもらって、サービス自体のファンになってもらえるかが難しいなと思います。例えばK-PROさんだったらK-PROさんのファンがいますけど、やっぱり15年続けてきたという信頼も大きいんだろうなと思います。

坂本:めっちゃくちゃわかります。続けることが一番難しいんですよね。

かしい:でもずっとやり続けて、本気さを伝えていかなきゃなと思います。やりたいことをやって、どれだけ支持してもらえるか、便利なものを提供できるかなって感じですね。

坂本:では今後の展望を言える範囲で教えてください。

かしい:スマホアプリ化して、芸人さんをフォローしたら新しいライブの情報がプッシュ通知される、とか作ってみたいですね。今は完全に1人で運営しているのですが、今後はいろんな人を巻き込んでいけたらいいなと思っているのでお楽しみにしていただければ嬉しいです。

坂本:アプリ化するとさらに便利になりそうですね。リリースはいつ頃をイメージしてますか?

かしい:自分が開発するとなると難しいんですけど、開発費とか出せるようになったらすぐやりたいです。今のワラリー!を維持するだけでも大変なので、まずはライブ情報を豊富にするということを優先した方が良いのかなと思ってます。アプリ化する前にメール通知機能を作って、アプリ化してからプッシュ通知機能に切り替えるとか、段階的にやろうかなと考えてます。

坂本:最後に、今後ワラリー!を通してどんな世界を作っていきたいですか?

かしい:お笑いライブに行く人が増えて、おもしろいものが広まる。芸人さんは売れる、ファンは楽しいという幸せな世界にできたらいいなと思っています。
「おもしろい」と感じるものは人それぞれなので、自分が「好き」だと思えるものを見つけてほしいですね。1000人が集まる大会場から10人規模の区の会議室まで、お笑いに関わるものは全部サイトに載せたいです。人生で自信を持って好きだと言えるものが見つかるなら、それって素晴らしいことだなと思います。

お笑いライブシーンってファンが自発的に行動する文化があるなと思っていて。最初は知名度が低いからファンが情報アカウントを作って告知に協力したりとか、それでファンの人も芸人さんも助かるみたいな仕組みがいいなと思ってます。ワラリー!はそれをみんなでできる場になったら嬉しいです。

お笑いが好きだと言う思いから、ここまでのサイトを作り上げたかしいさんの行動力と熱い思いを伺えた貴重な機会でした。素敵なお話をありがとうございました。皆様も、お笑いライブ情報を探す際にはぜひワラリー!を使ってみてください!



サポートはすべて今後の運営費とさせていただきます。