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罪を天に獲る

鳥になりたい小魚がおりました。
小魚は大きな翼を広げて悠々と空を飛ぶ鳥の姿に憧れていました。なぜ自分は鳥ではないのか、なぜ両親は鳥ではないのか、魚として生まれてきた自分の運命をなげきました。

物知りの魚が「運命とは自らの努力で切り開くものだ」と小魚に言いました。
海の中には言い伝えが残っていて、遠い昔、海を追われた魚の祖先たちが、干上がった沼地で生き延びるために強い意志と努力により、丈夫な肺と手足を手入れたというのです。生命にはそんな隠された力があるのだと、物知りの魚は話してくれました。小魚の胸に希望が湧いてきました。努力をすれば運命を変えることができるのです。

それから、小魚はどうすれば鳥のように空を飛べるのかを毎日毎日考えました。鳥が空を飛べるのは2つの翼があるからです。小魚には小さいけれど5つのヒレがあります。このヒレを鍛えれば空を飛べるかもしれない。小魚はヒレを鍛えるために過酷な環境に身を投じます。ある時は大きな魚さえ飲み込まれてしまうような激しい海流に向かって泳ぎ、ある時は荒くれハンターがうようよいる深い海で捕食者から逃げ回りました。何度も死にかけるような極限まで自分を追い込み、秘めた力を引き出そうと努力しました。そのおかげで魚のヒレはどんどん大きく強くなっていきました。

そんな小魚を良く思っていない者もいました。「魚が鳥になれるわけがない」「魚が鳥になった話なんて聞いたことがない」「あいつは頭がおかしくなったんだ」などと小魚を馬鹿にします。小魚は平気でした。自分が「世界で初めての鳥になった魚になる」と強く信じていたからです。

そしていよいよ、力を試す日がやってきました。小魚はこれまでの苦しい修行の数々を思い出しました。何度も海流に飲み込まれそうになって必死にもがいて抜け出た時のこと、もう少しで気の荒いマグロに尾びれを噛み切られそうになった時のこと、いろいろなことが走馬灯のように蘇ってきます。小魚はキッと口元を引き締め、助走をつけて浮上します。5つのヒレで海面をキックし、空高くジャンプしました。

小魚は鳥になったのです。どんどん空高く舞い上がっていきます。しかし、小魚自身はそれを知る由もありません。なぜならその時にはもう鳥のくちばしの中で息絶えていたからです。

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WEBデザイナーをしながら脚本を書いています。物語作りの脳トレのつもりで始めました。英語のタイトルは英訳あり。ツイッターはこちら:https://twitter.com/thinkingfoot2
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