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ヴェイパーフライ規制の「噂」を世界陸連の力学から考えてみたら

もう皆さん食傷気味かとは思いますが。
ナイキのヴェイパーフライを世界陸連が規制しようという「噂」についてモヤモヤ考えていたのですが、規則とか違反とかではなく、世界陸連や業界の力学を考えてみると、わりとしっくりくるなと思ったのです。
(情報元などはありません。ただの妄想。)

結論から言うと。

トップレベルにおいて特定メーカーがあまりにシェアを上げすぎると競技を統括する組織は規制の動きを取らざるを得ない。

特定メーカーの道具が記録の大幅更新を助長し選手以上に注目を集める。
この現象はSPEEDO社の高速水着、レーザーレーサーを思い起こさせる。

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2008年の北京オリンピック選考会であるジャパンオープン、17の新記録のうち16がレーザーレーサーを着用する選手によるもので、日本水連は契約していないSPEEDO社製の水着の仕様を許可せざるを得なかった。(参照:Wikipedia
北京オリンピックでは実に23もの世界記録が更新されている。
この後、2010年からレーザーレーサーはFINA(国際水泳連盟) により禁止され、水着の布地や肌を覆う範囲が新たにルールに加えられた。
水着の素材や体型そのものを変えるテクノロジーが浮力を上げることと高価さによる不公平が問題視されたらしい。

もう一つ、テクノロジーによって大きく記録を伸ばした競技がある。
スピードスケートのスラップスケートである。
こちらも禁止が検討されたようだが、ご存知のとおり、規制されず、今ではトップ選手間で主流となっている。(接触・転倒の多いショートトラックは危険なため禁止。)
誰でも入手できる既製品であることに加え、複数メーカーから販売されたためと考える。(詳細不明)

特定メーカーの一人勝ちによって何が起こるのか。
スポーツ大会は、スポンサーの支援によって運営されている。
競技者によって使用される道具が特定メーカーによって独占されると、他メーカーによる大会のスポンサードが成り立たなくなる。
最悪のシナリオとして、道具のテクノロジーが特許を取得して他メーカーが追随できなくなると、その道具の開発から撤退するメーカーが続出してしまうかもしれない。
メーカー数の減少、さらに独占的な市場となると、スポンサードの金額は下がり、大会運営は規模縮小を余儀なくされる。
大会の規模が小さくなれば組織の規模を維持することも厳しくなるし、選手もその競技で生活していくことが難しくなるかもしれない。
結果として、そのスポーツの衰退につながる可能性すらある。

今回の規制の報道は、まだ世界陸連から公式に発表されたものではなく、「イギリスの複数のメディア」が報じている「噂」レベルである。
これからどうなるかはわからないが、おそらく、一度メディアにリークして世論を問うてみた、というところがあるのではないか。
加えて、メーカーの新たな開発にも釘を刺す部分もあったかもしれない。
アルファフライという、ヴェイパーフライより更に上位のシリーズが開発されているらしい。

言ってしまえば独禁法違反の取締りのようなものであるが、資本主義市場は自由競争であり、道具の進化によって選手や一般競技者が直接損失を被るものではないので、このような理由での規制を明文化するのは難しいだろう。
もしかしたら、他メーカーの圧力のようなものもあったかもしれない。
なにかしら理由をつけて、ルールを整備していく、という動きになると考えるが、マラソンという、負荷が高く準備に時間がかかる競技において、この時期にシェアの高いシューズの禁止はインパクトが大きく現実的ではない。

道具の進化は記録の進化を後押しするものであることは間違いない。
それでも、競技するのは人であり、これから先も人類は限界を超え続けていくだろう。

レーザーレーサーが公式レースで着用禁止となったのは2010年。
現在の世界記録は、男女合わせて40種目中28種目が2011年以降に更新されている。



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