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箱根駅伝ロス2020① 青学の復路戦略

2020年初投稿は箱根駅伝の個人的な評論から。
今年の箱根は例年以上に熱かった。

戦前の個人的予想は、東海の一強、プラス4強(青学、東洋、駒澤、國學院)。

予想に対するざっくり総評としては、
東洋と駒澤は前半戦コケた。
青学が予想以上に良かったのとミスが一切無かった。
國學院は前評判通りの強さを見せて、10区殿地は勝負強さ、気持ちの強さを見せた。これは確実に来季につながる。
東海は復路で強さを見せた(いずれ書く)が、往路では今ひとつ前に出られなかった。

さて、今年の熱かった箱根駅伝を個人的な観点で勝手に語ってみたい。
切り口を変えながら、やる気とネタが尽きるまで書いていければ。
(せめて2回目まではやらねば笑)

第一回は、青学の復路戦略について。

往路優勝した青学は、優勝候補筆頭の東海に3分22秒、実に1km以上の大差をつけた。
こうなると、東海はリスクを追ってもハイペースで追いかけていかなければならない。

録画した復路を流し見していて気づいたことがある。
7区、8区、9区、10区、青学はいずれも、最初の計測ポイントまでは、東海よりも速く入っている。

勝負事は基本的に、リードしている方が有利である。
よって、駅伝のセオリーとしては、リードしているチームは襷渡し後の序盤は余裕を持って入り、後半に上げていく戦略をとる。

しかし、青学はそのセオリーとは反する戦略をとった。
自力で勝る東海に対し、守りに入らず序盤を突っ込んで攻めて入り、東海の焦りを誘う作戦に出て、それに成功した。

昨年、8区の区間新記録を22年ぶりに更新し、今年も8区を出走した小松のパフォーマンスと言葉が、それを如実に物語る。
小松は区間賞を獲得するも、昨年より35秒遅れ、青学に対し1秒しか詰めることができなかった。

小松は、序盤は余裕を持って入り、後半遊行寺の坂から勝負と考えていたようだ。
しかし、序盤に思いの外離されてしまったことで「マズいと思って、焦りが出て、冷静さを欠いてしまった」という

不安や焦りという感情は、酸素を消費する。
不安や焦りを感じたときに心臓の鼓動が速くなる経験はだれもが持っているだろう。
こうなるとパフォーマンスは落ちる。
逆に、ポジティブな感情はパフォーマンスを上げる。
追い詰められると不安や焦りを生み、希望が見えると元気になる。
中長距離の競技は、メンタルスポーツなのである。

東海も決して遅いタイムではなかった。
事実、6区郡司で区間新、7区8区でも青学より区間順位が高く、9区への戸塚での中継時点でタイム差2分、復路スタートから1分22秒縮めた。
しかし、プラントしてはここで1分くらいまで縮めたかっただろう。
9区10区の選手の持ちタイム比較としては、ハーフマラソンなら東海に分がある。

9区
青学 神林 1万m 29分13秒62 / ハーフマラソン 1時間3分56秒
東海 松尾 1万m 28分37秒95 / ハーフマラソン 1時間2分17秒

10区
青学 湯原 1万m 28分44秒99 / ハーフマラソン 1時間3分41秒
東海 郡司 1万m 29分01秒67 / ハーフマラソン 1時間2分07秒

参考:東京箱根間往復大学駅伝競走公式サイト チームエントリー(再々修正版)

背中が見えれば、また展開が変わったかもしれない。
しかし、その背中が最後まで見えなかった。
これが不安や焦りを呼んだ。
こんなに追っているのに、まだ見えてこない、まだ詰まらないのか、と。
テレビを見ていてそう感じた人も多かったのではないか。
東海の選手、監督もきっとそう感じたはずだ。

そして、力に勝るはずの9区で、青学神林が区間新に12秒と迫る好走で区間賞を達成する一方で、東海松尾は区間8位に沈み、勝負は決した。

しかし、ここからも東海は見せ場を作った。
10区の郡司が区間3位で青学に先着し、復路優勝を達成した。
大手町、ゴール後に涙をためて笑顔を見せた郡司の表情が印象的だった。

最後にもう一つ思ったこと。
各区間に序盤で突っ込んだ青学が終盤そこまで落ちなかったのは、脚へのダメージを緩和するヴェイパーフライネクスト%の影響も大きいのではないか。

区間新のバーゲンセールとなった今大会で、ヴェイパーフライの影響が全く無いことは考えられないが、記録だけでなくレース展開にも影響を与えているものと考える。

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