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『共同幻想論』吉本隆明の予習教材

 今月、NHKの「100分de名著」で吉本隆明『共同幻想論』が取り上げられるようなので、『共同幻想論』を理解する補助線となる講演を私のいくつかの記事でも引用している『吉本隆明の183講演』より紹介していきたい。これはウェブ上で閲覧可能だ。

 上記に紹介したフリーアーカイブ内では、『共同幻想論』に関する講演が特集としてまとめられている。まずはこれを聴いたり、読んだりしてみるとよいだろう。

 私が特集の中で特におもしろいと考えるものは「現代とマルクス」だ。『共同幻想論』の前提になっている吉本のマルクス理解が語られている。ヘーゲル、マルクス、ロシア・マルクス主義と続いた流れの中で、ロシア・マルクス主義を批判する形で『共同幻想論』は書かれている。ロシア・マルクス主義は、現実の価値を偏重したり、現存在/理念、現実世界/芸術の区分をくずしたりしてしまった。吉本は、ヘーゲル、マルクスが提唱したこれらの区分を厳密に維持しながら、それを発展させようとしたと私は理解している。

この特集以外で『共同幻想論』を理解する上で私がオススメするのは下記だ。

「芸術と疎外」・・・『共同幻想論』の前に書かれた『言語にとって美とはなにか』のキーワードのひとつである「自己表出」を中心として吉本の芸術に対する考え方が語られる。『共同幻想論』はマルクスの影響を受けて発想されたものだが、マルクスとともに影響を受けたヘーゲルに対する吉本の理解、マルクス主義の芸術観に対する批判、現実世界/芸術の区分など『共同幻想論』につながる考え方が語られている。

「宗教と自立」・・・『共同幻想論』に登場する自己幻想・対幻想・共同幻想の考え方が簡単に説明されている。後半では、「吉本隆明、その思想の核心」という節で吉本の思想の中で重要な「大衆の原像」に関しても語られている。

「国家・家・大衆・知識人」・・・この講演も「大衆の原像」に関して語られている。こちらは具体的な例が出てくるので分かりやすいかもしれない。

「芸術言語論―沈黙から芸術まで」・・・冒頭で吉本の戦時中・戦後の思索が語られている。戦争体験は吉本に大きな影響を与えた。

おまけ 「究極の左翼性とはなにかー吉本批判への反批判」・・・批判に対する批判ということで語り口が段々ヒートアップしていく。ぜひテキストでなく、音声で聴いて欲しい講演。


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