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2010年代オスカー作品賞にノミネートされるべきだった映画トップ10

どうも。

オスカー前日ですが、今日はこないだの企画の続きです。先日、2010年代のオスカーの作品賞ノミネート作、全作に順位をつけたものを、88位から1位まで発表しました。あれで、この10年における僕の好きな映画がだいぶ明らかになったかと思いますが、今回は

2010年代のオスカーにノミネートされるべきだった映画!

これをやりたいと思います。

オスカーの作品賞にノミネートされるばかりがいい映画ではありません。それを逃してでさえ、ノミネート作以上に素晴らしい映画だってたくさんありますからね。

ただ、今回も「オスカーしばり」はありまして、なにかしらでオスカーにノミネートされていた映画のみを対象とします。

本当はオスカー関係なく、年末にやったアルバムみたいに「2010年代の映画」でボンとやれればよかったんですけど、僕の場合、それをやるには、カンヌとかオスカーの外国語映画賞の絡む映画の見方が足りないし、あと、マーヴェル/DCみたいなものとか、ホラーとかアクションとかだと、理由がないと見ないタイプですからね。やっぱり音楽みたいになかなか雑食にはなれなかったりするので、僕の場合はやっぱり、「オスカー」みたいなしばりでやるのが、映画はいいかもしれないなと思ってます。音楽方面のこと犠牲にすれば、全体を通してもできるかとは思うんですけどね。

では、そんな感じで、今回もカウントダウン形式です。まずは10位から見てみましょう。

10.The Master (2012)
主演男優賞、助演男優賞、助演女優賞jの3部門

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10位は「ザ・マスター」。これ、非常に迷ったんですよ。他にも、リチャード・リンクレイターの「ビフォア・ミッドナイト」、デヴィッド・フィンチャーの「ゴーン・ガール」、ウェス・アンダーソンの「ムーンライズ・キングダム」とあったんですけど、ポール・トーマス・アンダーソンで行くことにしました。PTAは2000年代に「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」の大絶賛で大監督みたいな扱いになりましたけど、2010sもやはり、孤高のペースで傑作出してたと思います。作品賞ノミネートの「ファントム・スレッド」は僕も17位に選んでいたりもしましたが、この「ザ・マスター」も人によっては2010sのトップクラスに評価する人も多い映画です。

この映画は1950年代を舞台に、後にサイエントロジーとして有名になる宗教を仮名にして描いたフィクションではあるんですが、フィリップ・シーモア・ホフマン扮する教祖とエイミー・アダムス扮するその助手。この2人がかなり強力な力がありながらも、信徒になりながらもあまりに馬鹿すぎて洗脳されきらなかったホアキン・フェニックスの良くも悪くも高いヴァイタリティ。これが見てて面白かったですね。これと「Her」があっての「ジョーカー」ですからね。ホアキン、やっぱすごいですよね。この映画は、今、名前を上げた3人ともにオスカーにノミネートされましたけど、かえすがえすも、フィリップ・シーモア・ホフマンの急逝は本当に痛い。主演でも助演でもカメレオンみたいに適材適所なくせの強い演技をこなせる彼の不在は、PTA映画のみならずハリウッド全体に痛い。迷った10位をこれにしたのも、彼のことがあったがゆえです。

9.The Florida Project (2017)
助演男優賞

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9位は「フロリダ・プロジェクト」。2010年代はリーマン・ショック以降の不況が長引き、格差社会がアメリカの中で広がったことを受け、そうした社会の底辺を描く映画が、2020sに突入した今もずっと続いている感じがしますが、この映画もまさにそれ、というか、「ジョーカー」「パラサイト」の前にすでにこれがあった、というべきですね。これは、あまりにも貧しい人たちが、格安モーテルでその日暮らしをする姿を描いた映画で、働き方もろくにしらないジャンキーの若いママが自堕落な生活を送り、8歳の娘がろくな教育を与えられず、明らかにいい育ちはしてないんですけど、でも、それでもこの映画の唯一の希望になっている、いや、ならせないといけない、という製作者の切実な思いが伝わる映画です。

これは、前哨戦がはじまった当初はものすごく評判が良くて、結構大きなもので作品賞もとってました。ロサンゼルス批評家協会賞じゃなかったかな。ただ、配給がインディだった弱みでだんだんしぼんで、最後は、当初、いろんな前哨戦で受賞していた、ホテルの管理人役のウィレム・デフォーが助演男優賞にノミネートされるにとどまりました。だけど、この年のオスカー作品賞ノミネート作より、こっちのほうが僕は強力に記憶に残りましたけどね。

8.Coco (2017)
長編アニメ(受賞)、オリジナル楽曲(受賞)の2部門

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8位は「Coco」、邦題は「リメンバー・ミー」。オスカーの作品賞の枠拡大は2009年度のオスカーからで、最初の2年はピクサー映画がノミネートされていたんですけど、あとは結局なくなったんですよね。せっかく、ピクサーがあまりに評判良かったのも、スーパーヒーロー・ムーヴィーと共にノミネート拡大の理由につながったというのにね。ただ、そうなったのには、ピクサーの創作クオリティが、2000sの半ばから後半にあった怒涛の攻勢のときの勢いがなくなったからだと思うんですけどね。

そんな中、この映画はこの年代のピクサーの中ではダントツのできでしたね。「インサイド・ヘッド」も評判良かったんですけど、なんとなく話が読めたのであまり楽しめなかったりもしたんですけど、こっちは非常に話がうまく作られてましたね。これはメキシコのローカル・カルチャーの歴史へのオマージュが強く捧げられた愛すべき1作でしたね。「メキシコ版ハロウィン」の、恒例の死者の日を背景に、そこに先祖と音楽への愛を存分に投げかけ、改めて「家族の絆」、そして、「愛するからこそ許されるべき自由」が描かれています。あと、音楽への愛ね。とりわけこの映画の公開当時は、前年に大統領選に当選したトランプの「メキシコへの壁」発言が物議醸した後でもあったから、なおさら強いシンパシーが湧いたと思いますね。

7.Elle (2016)
主演女優賞

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7位は「ELLE」。これは本来フランス映画で、オスカーにかかる映画としてはなかなか考えにくい作品です。それが、外国語映画のフランス代表に選ばれていたわけでもないのに、純粋にフランス語の映画なのに、主演女優賞に、同国を代表する大御所女優、イザベル・ユペールがノミネートされました。それだけ、彼女の演技力が圧倒的だった、ということだし、僕もそれに魅了されたので、ここにピックアップした次第です。

この映画、ストーリーは非常に濃厚かつ、めちゃくちゃです。ヒロインは、若手職員から性的象にされるくらいのセクシーなデキる企業トップで、殺人犯の娘であり、若くして子供をつくってしまった息子の母親であり、飼い猫との静かなシングル・ライフを満喫する離婚女性であり、レイプの被害にあい、自分で犯人をつきとめようとする勇敢な女性であり・・・。これだけの「Elle(彼女)」の要素をいかんなく詰め込んだのはポール・ヴァーホーベン。かつてシュワルツェネッガーの「トータル・リコール」とか「ロボコップ」を監督した人ですけど、全盛時に「荒唐無稽」とも評された彼の、いちいちが極端な無理ある話の設定が、ヒロインひとりが完璧に演じるためにとっちらかず話がうまくつながるんですよね。これもイザベルの演技力の賜物。オスカーにノミネートされただけでなく、ゴールデン・グローブの主演女優賞も受賞し、オスカーでも最後まで「ラ・ラ・ランド」のエマ・ストーンと受賞争いしてましたからね。まさに伝説の演技力でした。

6.The Disaster Artist (2017)
脚色賞

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6位は「ディズアスター・アーティスト」。この映画は俳優のジェイムス・フランコがみずから監督した映画で、基本、コメディなのでオスカーみたいな賞には不利なのですが、公開当時からカルト的な評価が高く、結局、脚本賞にノミネート。後述しますが、スキャンダルさえなければ、主演男優賞も間違いなくノミネートされていたはずです。

この映画は、20年近くにわたってアンダーグラウンドでカルト・ヒットしている映画「ザ・ルーム」を、謎の俳優トミー・ワイゾーがどうやって作ったかを描いた作品なんですが、そのワイゾーが、映画の基礎も何もわからないメチャクチャな脚本と撮影、本人だけがいいとおもっている下手くそすぎな演技、いきあたりばったりで周囲との軋轢ばかりを引き起こす最悪の仕切りの中、いかに映画を完成させたかが描かれています。主演はジェイムス自らが行ってますが、同じくらい奇天烈急に悪趣味かつ無邪気な親友を弟デイヴがつとめています。いわばこれ、「現代版エド・ウッド」なんですけど、ティム・バートンが50sの鬼才SF監督を描いたときより突き放した印象はまったくなく、愛を注いで演じているのが好感持てますね。

この映画は本当に見てていい意味で爆笑したし、ゴールデン・グローブでは主演男優賞もとってオスカーも期待されていたんですけど、その矢先にジェイムスに対してのMeToo騒ぎ勃発ですよ。理由は、ある学校に演技指導の授業を行った際に知り合った女の子の学生の見てる前で変なことあってしまったがために、オスカーへの主演男優賞の夢が消えました。その事件から音沙沙汰さっぱりなんですけど、復活してほしいです。また、「ザ・ルーム」も日本公開されるので、この機会に!

5.A Separation (2011)
脚本賞、外国語映画賞(受賞)の2部門

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5位は「別離」。これは2011年度のオスカーの外国語映画賞を受賞したイランの映画ですね。今年、「パラサイト」が韓国映画ながら作品賞にノミネートされ、受賞争いの上位に加わっていますが、僕は「もし風向きが、“外国のものでも良い作品であれば”」の機運が今くらい強ければ、この映画が先にそういうことになっていたんじゃないか、と思ってたりもします。そうでなきゃ、外国語映画賞を受賞したのに加えて脚本賞にノミネートはされていなかったと思うし。このアスガル・ファルハディはこの映画でオスカーの似に監督になりまして、2016年には「セールスマン」で2度めの同賞受賞。最近ではハビエル・バルデムとペネロペ・クルス主演の映画も作ってましたね。

この映画なんですけど、「議論」で構成される映画の中でも歴代屈指のものでしたね。離婚危機にある夫婦の揉め事という意味では今年ノミネートの「マリッジ・ストーリー」を思い出させますが、この映画はそれに加えて、夫婦の間でひきさかれる年頃の子供の苦悩や、この夫婦の男性を訴えた家政婦夫婦の旦那との争いもあり、話がかなり複合的に展開します。さらに、「国外に出たい」妻を通じてのイラン国内への不満も、貧しい暮らしの家政婦と裕福な主人公の夫婦を通じて格差社会、また、主人公の父親の寝たきり生活を通じて「この国のも高齢化問題は避けられないものなのだな」と思わせたり、様々な現実的なドラマも交えられていたり。人間模様と社会への洞察力の点で、この監督は見るべきものがありますね。

4.Nightcrawler (2014)
脚本賞

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4位は「ナイトクローラー」。これも大好きな映画です。これは、2014年度のオスカーのダークホース的な存在でしたね。最初、オスカーレースへの参戦映画としてみなされてなかったところが、批評の思いの外の好評でいろんな前哨戦映画祭でピックアップされるようになり、主演のジェイク・ジレンホールも主演男優賞を結構受賞してました。幸いオスカー前に見れたときに僕も大絶賛してノミネートを心から期待したんですけど、配給がどインディだったのが響き、脚本賞のみのノミネートでした。

ただ、僕は、この映画でジェイクがせめて主演男優賞にノミネートされなかったのは大いに不満でしたけどねえ。この映画での彼の、デニーロの「タクシードライバー」の現代版みたいな演技、すさまじかったですからね。殺人現場に必ずやじうまのようにやってくる、生気のない目だけ大きく見開いた危ないキャラ。あの「目の演技」だけでもかなり異様だったのに、個人メディアを立ち上げて数少ない社員を恐怖体験させるは、本人は「正義のため」に動いていると思いつつも、どちらが犯罪者なのか見ていてわからなくなるはの偏執狂的なあの姿は、オスカーが主演男優の中に求めがちな「狂気」に関して言うと、それこそホアキンだったりクリスチャン・ベールに勝るとも劣らないものだと今でも思うんですけどね。前も特集投稿で書きましたけど、今、最もハリウッドで過小評価されている最高の演技派が彼だと思っています。そしてこの映画そのものも、「2010sの狂気の現実」を描いたものでも屈指のものだったと思います。

3.Sicario (2015)
撮影賞など3部門

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3位は「Sicario」。邦題は「ボーダーライン」。これも傑作ですね。今や「メッセージ」、それから「ブレードランナー2049」で、「SF期待の監督」みたいになっているドゥニ・ヴィルヌーヴのSFへ転身していく前の傑作ですね。もっとも彼、僕は「本当はSFより、ミステリーの方が得意じゃね?」と思えるほど、そのテの作品で結果を出してた人です。2000年代では「灼熱の魂」でオスカーの外国語映画賞の候補(僕はこれで彼を知りました)」は見事な中東舞台のスリリングなミステリーだったし、2013年の「プリズナーズ」は、自分の子供が犯罪に巻き込まれたことで「贖罪」に苦悩するヒュー・ジャックマン扮する聖職者、正義感を発揮しすぎて暴力的に暴走するジェイク・ジレンホール扮する捜査官、そしてとにかく気持ち悪すぎのポール・ダノ扮する無言の犯罪者、そしてその背後にある本当の事件の真相、とかなり複合的な謎解きが心を楔で打つような重さと共に迫ってくるような傑作でした。

この「ボーダーライン」は、「現代版チカーノ・ノワール」の傑作ですね。メキシコ国境での麻薬犯罪を追っていたエミリー・ブラント扮する正義あふれる女性捜査官が犯罪を追っていくうちに、事件の本当の悪党が凶悪なメキシコ系マフィアではなく、一見「良心」ふりかざして横暴な捜査を続け、実は全く正義でもなんでもなかったベニチオ・デル・トロ扮する元検事だった。そして、そのことに命がけで抗おうとしながら乗り越えられなかったヒロインの苦悩。この、見るものに釈然としない虚しい気持ちの重さを残して終わる様式はまさにフィルム・ノワールそのものなんですが、それが今や、ボギーのフィリップ・マーロウや、ジャック・ニコルソンの「チャイナタウン」のときの「夜のLA」ではなく、「真っ昼間のメキシコ〜アメリカ間国境」の方が似合うようになってきているというのは、見事な着眼点だし、リアリティある地域が時代と共に移行しうることを証明してます。ヴィルヌーヴのこうした才能ももっともっと評価されるべきだと思っています。

2.Bridesmaids (2011)
助演女優賞、脚本賞の2部門

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そして2位が「ブライズメイズ」。このあたりになると、2010年代だけでなく、僕の中の映画史の中のオールタイムの100作に入れるのを検討したくなるくらいの映画ですね。それくらい好きな作品です。もともと僕はコメディが一番好きなジャンルですけど、コメディでは当然2010sでベストですよ。この映画は2011年度のオスカーの脚本賞と、メリッサ・マッカーシーの助演女優賞のノミネートがあの当時話題になりましたが、その後、メリッサがかなり大柄な体型ながら「ハリウッドの美の基準を変えた」とものすごく話題になり、ついには、これまで「ヒロインのベストフレンド」の専門だった彼女が、ついにはハリウッドの長者番付3位にまで大出世するほどの映画になりました。

でも、それはあくまで副産物。この映画の最大の功績は「女性でも面白いコメディは作れる」ということがついに証明されたことです。ハリウッドでさえ、コメディの世界は長いこと男性上位で、こういう女性目線のコメディはこれまで作られてなかった。2004年の「ミーン・ガールズ」はある種、その先駆なんですが、プロのコメディエンヌがメインでないことを考えると、やっぱり歴史的にはコレでしょう。女性であろうが、マヤ・ルドルプの花嫁姿での路上ウンコ(この時代を象徴する最高のシーン!)や、クリステン・ウィグの飛行機での泥酔をはじめ、オリジナリティもった面白い笑いは提示できることは示されたと思います。全ては、この当時まだ「サタディ・ナイト・ライヴ」のエース・キャストだったクリステンの主演と脚本同時にカネれる才能ゆえだと思うんですけどね。SNLの先輩のティナ・フェイも見事ではあるんですけど、羽目外したときのバカ演技と、本物のハリウッド女優に迫れるシリアスな苦悩する演技もリアルに決めれる器用さは、あの番組の女性キャストでもベストですね。番組クリエイターのローン・マイケルズが彼女を猫可愛がりしてたのもよくわかります。今や、ケイト・マッキノンみたいな最高の後継者も現れて、SNL,すっかり女性上位になってるし、この映画の後に、これの監督を努めたポール・ファイグがハリウッドきっての女性映画専門監督になったり、エイミー・シューマーの「Trainwreck」や、「少女版スーパーバッド」の「Booksmart」が大ウケしたのも、この「ブライズメイズ」あってのものです。

そして1位ですが、これは僕が2010年代でもっとも好きな映画。

これです!

1.Carol (2015)
主演女優賞、助演女優賞など6部門

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ということで1位は「キャロル」。鬼才トッド・ヘインズによる最高傑作でもあります。

これがオスカーの作品賞、監督賞にノミネートされなかったときほど、僕がオスカーに怒ったことはないですね。これ、ニューヨーク映画批評家協会賞の作品賞で、カンヌの主演女優賞(ルーニー・マーラ)の受賞作ですよ。前哨戦の時点ではオスカーの作品賞争いまで考えられていた映画だったのにかかわらず途中から失速して、結局は、6部門もノミネートされたのに、肝心な作品賞と監督賞がないという、きわめて不可解な結果に。あの年、「Oscars So White」といって、演技部門で黒人が1人もノミネートされなかったことが大きく騒がれたものでしたが、僕から言わさせてもらえれば、その影に隠れて、この映画が露骨なLGBT差別にあったことのほうが非常に問題でしたよ。今、これを書いて思い出すだけでも、腹たってきますもの。

 この映画はロマンスものとしては、近年稀に見る傑作でしたね。トッド・ヘインズって、「エデンより彼方に」という映画でもそうでしたが、50年代の「ゆらめき系」とも言われた、女性の心の揺れと切なさを描く名手だった監督ダグラス・サークの大ファンで、彼に強いオマージュを捧げる映画が得意なんですけど、彼はこのときそれを、この当時、まだ明らかにタブーだったレズビアンで作った。「エデン〜」はそれを黒人相手にやったのですが、それを上回る禁断ぶり。しかも、原作は「隠れたゲイ映画」として伝説にもなっていた「太陽がいっぱい」の作者、パトリシア・ハイスミスの作品。

もう、バックグラウンドの時点で説得力があるんですけど、話の流れが完璧でかつ美しいんです、これ。キャロルこと、ケイト・ブランシェットの、優雅な中にあふれる強引な誘惑に、最初、本人も自覚していなかったところから胸のときめきを覚え、結局は許されない愛を受け入れてしまわずにいられないルーニーの表面は静かながら心の大きな動乱も巧みに演じた見事な演技。そして名サイドキック、サラ・ポールソンの、「カエルを睨むような蛇」みたいなすごみのある嫉妬。そして、秘密を知ってしまった人たちのいやしい野次馬根性。話の流れと構成が完璧な上に、近年の映画で記憶に無いくらいの美しいセックス・シーン。言うこと一切ありません。

あの年の他の候補考えても、「スポットライト」と「レヴェナント」が票割れした中、オスカー争ったくらいのレベルだったことを考えても、コレが受賞するべきだったとさえ思うんですけどね。その10年前には「ブロークバック・マウンテン」が作品賞逃すという、ありえない結果が出ましたけど、そのオスカーに対し、ゲイ・ロマンスが最大賞取れない中、まだレズビアン・ロマンスはノミネートさえできないのか、と思わせたところで、ある意味、この時代をしょうちょうしていたとも思います。

・・といったところでしょうか。ではオスカーで後ほど。




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