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無意識のうちに「女性ロック産地国」のイメージ持たれている日本について

どうも。

このところ、女性のロックについて考えることが増えているのですが、そうしていたら


羊文学が素晴らしいアルバムを出していましたね。彼女たちのことは、前も取り上げたことあるし、2020年の年間ベスト・アルバムでも27位くらいだったと思うんですけど、GEZANとともに初めて僕の年間ベストに名を連ねた日本人アーティストにもなってるくらい好きなんですけど、歴代の日本のバンドの中でも、ことセンスの良さに関しては上位レベルにまでなってる気がするんですよね。

 世界的に見ても、女の子のシューゲイザー・バンドって数はあるんですけど、ここまで楽曲完成度、ギターの音色センス、強力なバックコーラス、タイトなリズム隊持ったバンド、なかなかないですよ。世界のインディの中でもシューゲ人気は高いし、女性のロックが国際的に熱い今、紹介されればいいのになと思ってます。ウケますよ。

 彼女たちのことを考えるに「そういえば、日本、国際的に見ても「ガールズ・ロック」の印象は強い国でもあるんだよな、と思ってます。

 

Chaiが去年出したこのアルバムは世界のレビュー・サイトでもかなり積極的に紹介され、そこそこウケてましたしね。あと、国際的だと、賛否は割と分かれてますけど、BABY METALをロックの区分に入れて評価する人も実際にいたりもしますしね。英米のチャートのトップ50以内に入ってもいるし。

あとですね

椎名林檎。この人が何気に国際評価、高いんですよ。僕も実際、多くの欧米の音楽ファンが彼女のことについて話しているの、聞いたこと少なくないですね。

その直接的な理由は

今や国際的にもかなりのビッグネームですけど、ミツキにも、リナサワヤマにも、「自身のルーツ」として名前が挙げられているからです。特にミツキのファンサイト内ではかなり有名です。

思うんですけど、それこそミツキ、彼女今、フェスによってはヘッドライナーもやってたりしますけど、もしコーチェラのメインステージ、今、仮に呼ばれてもメインステージの後半の方だと思うんですけど、ゲストで林檎呼んで共演すればいいのにな、と思います。ライブ慣れもしてるし、宇多田より受けるんじゃないかな、とも思います。あっ、その際は、「日本の誇り」だとか「Jポップが世界に認められた日だ」とか、よろしくお願いします(嘘です、笑)。

でも、日本の女性のロックの国際的な知名度、これ、今に始まったことじゃないんですよね。それは90sの頃からあります。

それこそ1994年には少年ナイフが、その当時世界でも屈指のフェスだったロラパルーザのステージに立ってますよ。彼女たちに関しては

「ネヴァーマインド」を全米1位にした直後のニルヴァーナともこうやって会ってるんですよね。しかもカートがすごい彼女たちのファンでね。どうやらこういうことは「日本の誇り」にはしてもらえないようですが。

あと、The 5.4.3.2.1'sがタランティーノの「キル・ビル」の中で演奏したりしてますよね。

それから

https://www.youtube.com/watch?v=EN9auBn6Jys

その時代なら、ピチカート・ファイヴやチボ・マットも国際的にはかなり紹介されてます。

実際問題、僕の妻はブラジルでこういう日本の女性アーティストのこと聞いてて、「日本ってクールな国なんだな」と思って来日した、と言ってましたからね。

そのイメージって、さらにその後も続いてて

2006年の映画「リンダ リンダ リンダ」。これが国際的にカルト映画になってまして、その影響で

https://www.youtube.com/watch?v=Wm1Sew7lAG4

 アメリカでリンダ・リンダスというバンドまで出てくるくらいですからね。こういうこともあり、「日本はかっこいいロックの女の子がいる国なんだ」というポジティヴな印象、持たれてるんですよね。


というのはですね、欧米諸国って、「女子がロックをすること」に関して、その行為をフェミニズムと強く結びつけているからなんですね。それは70s後半のパンク・ムーヴメントもそうだし、90s初頭のライオット・ガールズの時もそう。そこまではっきりとはわからないんですけど、欧米だと、「女のくせにロックをやるなんて」の圧が強かったようなんですね。

 ただ、面白いというか、皮肉というか、日本では自分の国の女の子のロックが高い評価を受けていることをそもそも知らないし、「女性がロックをする」ということを、そんなにすごいことだとは思ってないんですよね。

 これ、いつも「なんでなんだろう」と思ってたことです。僕が推論するには、こうです。日本だと、「女のくせにロックを」という偏見は欧米ほどにはそんなに強くないから、女の子がロックバンドを組みやすい環境はあると思うんです。ただ、そこに「女性の主張」も特に求めないし、そこに敏感でもない。これが実際のとこなのかな、と思います。それどころか、どうやら他の国よりも男性のロリコン傾向の強さもあるようですから(笑)、欧米ではあまり起きない、「ガールズ・バンドをアイドルとして見る」傾向も同時に生んでしまって、それがことを複雑にもするようですね。

 でも、不思議なんですよね。そういう特殊な傾向が日本に最初からあったわけではないから。

 日本で女子ロックの初めというと

https://www.youtube.com/watch?v=duiP5XDiaoc

最初は欧米の翻案なんですよね。コニー・フランシスとかみたいなアメリカのアイドルとかフレンチ・ポップスを歌った弘田三枝子とか、イギリスで言うところのダスティ・スプリングフィールドとかルル、サンディ・ショーみたく、「ブリティッシュビートに乗った女の子」をGSでやった中村晃子とか、そのあたりだと思うんですよね。

70Sのユーミンとか大貫妙子とかにしたって、これもジョニ・ミッチェルとかキャロル・キングとか、あのあたりの70Sのシンガーソングライターを意識して登場したものでもあって。ユーミンに関しては本当はそういう趣味じゃなく、もっとロックっぽかったっていうから、もっと本人の好きにさせてたらより独自な感じになったんじゃないかなと邪推もするんですけど、国際基準に合わせた感じだったのかなと思います。

 ただ、ここからがちょっと不思議な展開で。

 キャンディーズが先駆かどうか、専門家じゃないからわからないんですが、この辺りから、世界でも類を見ない「男性ファンによるアイドル親衛隊」文化が日本で芽生えるんですよね。欧米では、女性のアイドル、セレブのファン層、基本的に女性です。そこからなんか、面倒臭いことになってきてですね

1977年に、当時世界でも極めて珍しかった「女のコのバンドの先駆」、ランナウェイズが日本で局地的にウケたんですよね。今やランナウェイズって、ジョーン・ジェットがロックの殿堂入るくらい、女性ロックのパイオニアとしてリスペクトされてて、そこを持って「日本は先見の明がある」とする声があります。

 確かにこの時期の日本の洋楽の先見性ってすごくて、クイーン、チープ・トリック、ジャパン、ランナウェイズを当ててて、僕もそこはものすごく尊敬するところではあるんですけど、ただ、残念なことに、日本人がランナウェイズのこと、あんまり覚えてないんです。それどころか、「アイドルとして消費してた」側面も強かったんですよね。「女の子がエレキギター持って立ち上がった」という、女性側が見て欲しかったところでないところを見出されて人気になってしまった要素が強かった。それが、日本での女性のロックをかなり独自にしてしまったかな、と思います。

 それがゆえなのかどうか、よくわからないのですが


アメリカやイギリスで、強い意志を持った女の子たちがパンクバンドを組んだ、もしくはメンバーになり始める、パンク・ムーヴメントが起きた際に、そこへの反応が日本は決して強くなかった。日本での例もあるにはあるんですけど、そこまで文化的には強いものにはならなかったというか。

戸川純みたいな人は出たし、それなりの影響力もあるし、ニュー・ウェイヴの側面は伝えてはいるとは思うんですけどね。あとゼルダとか。ただ、「パンク/ニュー・ウェイヴ」が欧米ほどには「女性」と結びつくことはなかったというか。日本の中で見てみても、例えば欧米って、「70sの女性シンガーソングライター」がロック史の中でそこまで大きく語られることがなく、「女性のロック」と言えば則ちパンク/ニュー・ウェイヴなんですけど、日本だと「はっぴいえんど史観」も手伝って、70sの女性シンガーソングライターの影響の方が大きいでしょ?そこも日本のロック史における「女性アーティスト」のよき例のイメージを制限する理由にさえなってしまったというか。

それもあるのかなあ。

海外ロック史観だと評価高くてもおかしくないレベッカの評価がやたら低いでしょ?だって、「ニュー・ウェイヴ経由」で、音がリアルタイムの洋楽ぽくて、女性で初めて日本でミリオンセラー記録して、フロントウーマンが自ら歌詞書いてエンパワメントなこと歌ってるわけでしょ?そこ不思議なんですよね。確かに「どエイティーズ」なサウンドで音が古くなった時期があるのは確かなんですけどね。

 この後、日本でもバンドブームの時期に渡辺美里とかプリンセス・プリンセスとかSHOW-YAとか出てきてウケてましたけど、この辺りがよくファン実態がつかめないところというか。同時代体験してる分には、女性ファン多かった気もするんですけど、そこから先に何か続くような何かを感じなかった。これは何なんだろうとは、思いますけどね。ここはそこまで探り入れてないからよくわからないのですが、ただ、「ナオンの野音」みたいな、ヘアメタルの野郎がやってた過度にイキがった悪ノリを真似した感じみたいのは、あれはセンス的に寒かったなとはおもいます(苦笑)。あれは同性でもかえって反感あったんじゃないかとも思っててですね。

 あと、あのバンドブームの頃の女性アーティストって、女性共感が強いようでいて、実はアイドル下火時代による「アイドル難民」だったアイドル・ナードがファンについた時代でもあったんですよ。いわゆる「ガールポップ」とも言われてた時代で、それがことをややこしくもしてましたね。


90年代になってChara、ジュディマリ、UA、Coccoあたりは欧米の90sのオルタナ以降の女性アーティストの感覚にフィットするアーティストで、邦楽だけじゃなく洋楽聴く人にもウケが良かったんですけどね。

そこに加えて、さっきも言ったような、海の外に出てった人たちが国際的にウケてもいてね。ここ面白い時代だったと思うんですけど、そこに

そこに99年に林檎出てきたのが大きかったかな。むしろ、この20年に10代を過ごした人にとっては、「ここからが女性ロックの歴史」くらいな感じなんじゃないかとも思います。そこでついたファンの中に、まだ10代だったミツキとかリナサワヤマがいたわけです。

 この時期、大きくて、例えばフロントじゃなくても、スーパーカーのミキちゃんとか、ナンバーガールのひさ子ちゃんみたいに、バンドの楽器演奏者に印象的な女性プレイヤーがいたこと、これも大きかったと思いますね。あと、オルタナっぽいのから、アイドルっぽいのまで含めて、とにかく女性バンドが増えた時期でもありましたね。


で、さらに下の世代、それこそ羊文学くらいの世代の人にとってはチャットモンチーが大きいと思うし、大きな影響元だと思います。現にそこからガールズバンド、日本ですごく目立つようにもなってますしね。

 例えば2000s見ても、欧米でガールズ・バンド、いないわけじゃないんだけど、シーンとして日本の方が多かったように思うし、昨今のチャート見ても、あいみょん、カネコアヤノ、リーガルリリーからいろいろいるわけですよね。

 ただ、それにもかかわらず、

昨今の欧米ですごくブームになりつつある、ガールズ・ロックでの、女の子が女の子を強く求める爆発力みたいなものは感じないんですよね。あれは見ていて、すごく不思議というか。

 ひとつ思うのは、日本の方が女の子のロックに対してよりカジュアルなんでしょうね。良くも悪くも、演者も客も肩の力が抜けているというか。ただ、その分、アーティストの側から強い主張が出にくくなったり、シーンとかムーヴメントの爆発に繋がりにくくはなってるのだとは思うんですけどね。

 ただ、今は幸いというか、欧米でロックの女性アーティスト、ブームになりつつあるから、日本のガールズ・ロック・アーティストも積極的に外に出ていけばいいなとは思います。幸いにして今は、ミツキ、リナサワヤマといった、媒介役になりうる、海外在住からビッグになった日本人女性アーティストもいるわけです。そういう追い風があるうちにチャンスをつかんでおくと、今後面白い展開があるかもしれません。











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