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「クロマティカ/レディ・ガガ」 ようやくトンネルの先、見えたかな?

どうも。

ジョージ・フロイドの話の続編も考えたのですが、今日語らないと古くなりそうな話もあるので、こちらを優先します。

今日はこの人の新作のことを、ちょっと手短に。

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レディ・ガガの新作「クロマティカ」ですけどね。僕、そこまで熱烈にファンというわけでもないんですけど、この人のことはデビューのことから好意的には見続けてまして。嫌に感じたことはないんですけど、今回のこのアルバム

いいと思います!

なんか、ある時期から感じられた「方向性の迷い」みたいなのが、ここでは消えて感じられてね。

ガガが苦しんでるなと思ったのは

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2013年のこの「Artpop」というアルバムですね。このアルバム、なんか「ガガのパロディみたいだな」と思ったんですけど、これ、本人自身も後に「記憶がないアルバム」と言っちゃってるんですよね。「ということはこの時期に・・・」というか、なんらかのアディクションはあったんでしょう。アーティストにはよくあることです。

で、この人、ここから、いったんエレクトロから離れてトニー・ベネットとの共作出したり、アワードでデヴィッド・ボウイのトリビュートとか、「サウンド・オブ・ミュージック」をオリジナルのヴァージョンでカバーを披露とか、生なサウンドの方に行ってましたよね。

で、

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2016年に「Joanne」という、亡くなった彼女のおばさんについてのアルバムを出しました。そしてここではフローレンス・ウェルチ、テイム・インパーラのケヴィン・パーカー、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのジョッシュ・ホーミと共演と、かなりインディな方向に接近したアルバムを作りました。

その間、彼女自身の体調も良くなかったんですが、そのあとに皆さんもご存知のように「スター誕生」の映画出演があって、彼女もオスカーの主演女優賞にノミネートもされた。この流れで「これから本格的なアーティスティックな方に行くのかな」と思いきや

こう来たので、「あれ?」と思ったのですが、アルバム全編聞いて「なるほど」となりました。

これ

原点回帰

ということなんだと思います。「彼女自身がどういう音楽が好きでここまで来たのか」。それがハッキリ出た感じですね。

その結果に全編にわたって聞こえてくるのが、80s後半から90s初頭にかけてのハウス・ミュージックなんですが、このアプローチも結果的に良かったと思います。いみじくもウィーケンドの新作が86〜88年的なアーバン・ポップで、ガガが89〜91年くらいのハウスなら、ちょうどレトロな時代再評価の流れ的にもうまい具合に合致するんですよね。彼女自身にそういう計算、あんまりあったようにも思わないんですけど、自分自身の回帰がときの流れと上手くマッチしたのはラッキーだった気がしますね。

ただ、「王道ハウス」と言っても、やっぱり今の音と、かなり曲をかっちりと作り込んで熱唱する彼女らしいソングライティングが後ろ盾になってるからか、決してマドンナで言うところの「エロティカ」、あれみたいに後に聞いたときの「古いな」という風化した感じもなく、コンテンポラリーなものとしてしっかり聞けます。

ゲストも前作みたいなインディのビッグネームでなく、「ポップなんだけどしっかり旬でよくわかる」名前が多いのもいいと思います。アリアナにブラックピンクに、そして方方で駆り出されるサー・エルトン。エルトンってゲイ・アイコンだし、ディスコ通いの歴史もかなり古い人なので、こういうハウスっぽいダンス・アルバムでのコラボ、本来ものすごく自然なんですけど、そうした彼のキャラクターも引き出せててね。あと、ブラックピンクも本人たちの曲が勢いノリ重視でいささか単調になりがちなところを、ガガらしいしっかりと構成された曲調にしてあるので、彼女たちの聞こえ方もよくなってます。秋のアルバムが楽しみになってきました。

「Joanne」みたいな方向性でなく、今回のような方向性選んだの、なんとなくの邪推なんですけど、近い時期にビヨンセが「レモネード」出してるじゃないですか。あれも、各世界の精鋭と組んだ、ビヨンセなりの「スリラー」みたいなアルバムなんですけど、そっちの方向性でのアルバムだと、やっぱり「レモネード」にはかなわなかったというか。ガガにはガガの良さがあって、むしろそっち活かしたほうがいいというか。いい意味で「悪辣さ」とか「俗悪さ」「チープさ」で売ってもいたわけだから、その良さも損なわない方が良いというか。そういうことなのかな、と想像してます。

ただ、

「回帰した先のインパクト」が初期の代表作にかなうものかどうかが、まだよくわかりません。

そのへんで、「2020年を代表するアルバム」になっているかどうかはわかりません。ただ、「ヒット作」にはなると思うし、僕個人の趣味で言っても、「いいけど外部頼みじゃないか」とどうしても思ってしまうデュア・リパのアルバムよりも彼女自身の主体性を感じられるだけ、こっちのほうが好きです。

ただ、いずれにせよ

迷いが吹っ切れて、トンネルの先が見えたかな

そんな感じのアルバムにはなっているとは思います。ヒット・アーティストとしての寿命は確実に伸ばすアルバムだと思いますね。










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