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42年ぶり全米トップ10返り咲き! フリートウッド・マック「噂」が今日も強いリスペクトを集め続ける8つの理由

どうも。

今日は、しようしようとしてし損ねていた話をしましょう。

最近、tik tokの動画でこういうものがウケてました。

この真ん中のいかつい坊主頭の、あまりtik tok使いそうにないタイプのおじさんが、すごくチルな雰囲気で飲み物をグイッと気持ちよさそうに飲みながらスケボーをする、と言う動画がバカうけしました。

このバックに使われていたのが

フリートウッド・マック、1977年の全米ナンバーワン・ヒット曲「Dreams」。僕も高校生の時から大好きな曲なんですけど、これがこの動画効果で再ヒットして、ビルボードのシングルで12位まで上がってきてるんですね。

それに伴い

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この曲の入っているフリートウッド・マック、1977年の、当時としては破格とも言える、31週全米チャートの1位を獲得したアルバム「Rumours/噂」がですね、

42年ぶりに全米アルバム・チャートのトップ10に返り咲いたんですよ!

これすごいことですよ。だって、先日、エドワード・ヴァン・ヘイレンが亡くなった際、その衝撃や社会的影響、大きかったんですけど、それでもその直後に全米アルバム・チャートで一番上がったヴァン・ヘイレンのデビュー・アルバム、あれでさえ、追悼タイミングだったのに30位が最高位だったんですよね。この「噂」はその週でヴァン・ヘイレンのはるか上をいく13位。そして今週は7位まで上がる特大再ヒットですよ!

これ、日本だと考えにくいことだと思うんですけど、アメリカでフリートウッド・マックと言ったら、こういう”格”のバンドです。そして、そうなってしかるべき存在だと思います。では、今回は「なぜ、このアルバムがここまで愛され続けるアルバムなのか」。その理由を語っていこうと思います。

①ビートルズと同じ「3人のシンガーソングライター制」を女2、男1の前代未聞のスタイルでやる

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 まずは、このあまりにも稀有なバンド・スタイルです。自分で曲の書ける3人が持ち曲でヴォーカルをとれること。これができる他のバンドに「ジョン、ポール、ジョージ」のビートルズ(リンゴのは無理やりなんだからカウントしません、笑)のスタイルを、女2、男1と言う、極めて珍しいスタイルでやれることです。クリスティン・マクヴィー、スティーヴィー・ニックス、そして女の子みたいな名前で男のリンジー・バッキンガム。この3人の異なるヴォーカリストがそれぞれにヒットを持てるくらいに存在が大きい。これがもう、前代未聞のすごさですね。だって、今に至っても他にないでしょ、そんなの?

しかも、この当時、売れてるバンドにメンバーが女性いて、2人とも歌うなんてことはましてやなかった。だから、やっぱり必然的に目立つわけです。今、若い人でそんなバンドがあったら真っ先に注目されているはずです。

②史上初の「女性アリーナ・ロックスター」としてのスティーヴィー・ニックス

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そして、その中でも「Dreams」も歌ってるスティーヴィー・ニックスの存在がひときわデカイんです。「えっ、でも、3人の中で一番曲、書いてないじゃないか」と思われる人もいると思いますが、実際に3人の中で圧倒的に人気あるものは仕方ありません。ソロ・アルバムが一人だけ、毎回全米トップ10に入り続けているの、彼女だけですからね。

 で、なぜ、そういう評価になるのか。それは、彼女こそが最初の女性アリーナ・ロックスターだから。「ジャニス・ジョプリンやジェファーソン・エエアプレインのグレース・スリックは?」と思われるかもしれませんが、彼女たちの時代は、「ロックがこれから大きくなる」地点での話であって、本格的なアリーナ・ロックの時代の前の話です。ジャニスが最初になるはずだった気がしますが、その前にドラッグ中毒になって亡くなってしまいました。あと、日本に影響を与えたキャロル・キングをはじめとした西海岸の女性シンガーソングーなんですが、ことごとくステージ恐怖症でライブ数、少なかったんです。キャロル、カーリー・サイモン、そしてシンガーですけどリンダ・ロンシュタットもそうですね。彼女たちがロックの殿堂に入るのにかなり時間を要した、あるいは入っていないのもそれが理由だと考えられています。せいぜいジョニ・ミッチェルなんですけど、彼女にしても「フォーク」のイメージが強い。そうなると、必然的にスティーヴィーになってしまうんです。

 そして、キーボード担当のクリスティンよりもどうしてもスティーヴィーになってしまうのは、彼女のステージでのイメージです。とにかく派手でしょ。ケープのドレス着て、ロックバンドで歌い踊るスタイル。あれがアメリカ人にはすごくウケるんです。あのケープのロングドレスは、発祥は昔のカントリー・シンガーなんですけどね。ロレッタ・リンとかドリー・パートントか。すごく、髪型なんかも盛るだけ盛った、ロングドレス以外にありえないといったスタイルなんですけど、この辺りは、スティーヴィーのおばあちゃんがカントリー・シンガーだったことに由来するものではないかと思います。

 実際、「ロックのフェミニズム」の視点では、スティーヴィーの知名度が上がり始めた1976年くらいがすごく「アリーナの女性たち」の観点ですごく大事にされます。ハートのアンとナンシーの姉妹もそうだし、ディスコのドナ・サマーとABBAのアグネッタとフリーダ、パンクのパティ・スミス、ブロンディのデボラ・ハリー。ランナウェイズもそうですね。日本だと前述したように「ウエストコースト女性シンガーソングライター」が好まれがちなんですけど、ここの感覚が日本と欧米、全く違います。今、名前あげた「アリーナの女性ロックスター」、みんなロックの殿堂、入ってますからね。

僕自身も2009年にマックのライブ、ニューヨークで見てますけど、会場がフェイク・ブロンドのロングヘアの女性で溢れかえっていたんですよね。あんな光景、一生で見たの、あれだけです。いかに影響が強いかは、それを見てもわかります。あと、ロングドレスも、最近のふローレンス・ウェルチとか、ラナ・デル・レイ見てたら影響力強いのわかるんですけど、日本での彼女たちの人気を考えると、そこが日本人にはわかりづらいのかもしれません。

③ドラマーとしての評価がかなり高いミック・フリートウッド

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あと、バンドリーダーのミック・フリートウッド、この人もかなりの名ドラマーです。この人のドラム、すごいんですよ。手数が多くないので気付かれにくいと思うんですけど、かなり腕の力が強いせいなのか、スネアが浮き立って聞こえるんですよね。マックそのものはイギリスのブルース・バンドで、そのあとにアメリカ西海岸に渡って「噂」の頃にはウエストコースト・ロックみたいな認知のされ方にもなっていたんですけど、リズムがあんなに立体的でカクカクしたサウンド、他のウェストコースト・ロックにないんですよ。このあたりも、マック、「噂」のサウンドが古びれない理由なような気がしてます。そして、そのすごさは2009年に見たライブでも確認しています。レコードで聞くよりもかなりドラム、目立ってるので。音、すごいですよ。

実際

「Dreams」は欧米だと「ドラムのかっこいい曲」として有名で、YouTube上に無数のドラムカバー動画が上がっています。「Dreams Drum」で検索してみてください。本当なのがわかるから。

あとベースのジョン・マクヴィーも名手ですが、フリートウッドとマクヴィーのリズム・コンビネーションも完璧です。

④有能なギタリストとしてのリンジー・バッキンガム

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それから「ギタリストとしてのリンジー・バッキンガム」。これも忘れてはいけません。この人、ロックの中で珍しい「スパニッシュ・ギターの名手」です。あと、マンドリン、バンジョーもですね。とりわけ高いキーの細い弦のギター弾かせたら抜群にうまいです。その一旦は「噂」でも随所で垣間見られて、彼のプレイがサウンドに神秘的な色合いを絶妙に添えてくれます。

リンジーは、これ以降のアルバムではプロデューサー的な役割も担いますがサウンド面では本当に欠かせない存在です。

⑤稀代のシングル・ヒットメイカー

あと、フリートウッド・マックといえば、とにかくヒットシングルが多い。とりわけ75年発表の「ファンタスティック・マック」から87年の「タンゴ・イン・ザ・ナイト」まではいずれもシングル・ヒットが3、4枚は必ずアルバムから出ていましたからね。ロックのヒット・シングルがなくなてしまっている今のような時代からすれば夢のような話です。

とりわけ「噂」は史上初のアルバムから4枚のトップ10シングルが生まれたことで誉れ高いです。

 それはセカンド・シングルとなった「Dreams」もそうですし

第3弾シングルになった3位まで上がった「You Make Loving Fun」。これはクリスティン・マクヴィーの曲ですが、彼女の曲というのは、ちょっとスモーキーな声に導かれたアダルトにソフィスティケイトされた曲というのは、その後のエヴリシング・バット・ザ・ガールやThe XXにも通じるものがあります。

そして第4弾シングルで全米10位の「Dont Stop」は、1992年の大統領選にビル・クリントンがキャンペーン・ソングに使ったことで再注目されました。一度分裂した、この黄金の5人が復活するきっかけになったのも、この時のパフォーマンス故でした。

⑥メンバー間の私生活がボロボロの時期のアルバム

 こんな、ロック史上でも稀なケミストリーを生むバンドなんですけど、メンバー間、いつもゴタゴタしてます(笑)。とりわけ「噂」の時期は最悪で

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ジョンとクリスティンのマクヴィー夫婦が破局を迎え、リンジーとスティーヴィーが別れるという事態になります。リンジーとスティーヴィーはマック加入前は「バッキンガム&ニックス」と言うデュオでもありました。

とりわけ「噂」のファースト・シングル「Go Your Own Way」と言う、リンジーが書いた曲ですけど、「お前の道を行け」ですよ。それをスティーヴィーにハモらせていた、と言う。スティーヴィー、後年、この経験を「最悪」と言ってますが、その後のライブでもずっと歌い続けてます。

さらに時期が定かではないんですけど、スティーヴィーとミック・フリートウッド、一時、恋仲です。こういうこともあり、彼ら「ロック界のソープ・オペラ(昼メロ)」とも呼ばれていました。

そんな人たちでありながら

「解き放たれることのない鎖」として「The Chain」を平然と歌ってしまうのがまた面白い。これ、シングルにはなっていないんですが、「噂」のハイライトで、3人のシンガーが全員でハモります。ライブでも、この曲をやらないということはまずないくらいの代表曲です。この曲は「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー2」でも印象的に使われていましたね。

⑦「アメリカが大好きな時代の現象的ヒット作」だから

そして、「噂」がヒットしたのが1977年、というのも非常に大きなミソです。なぜなら、その年って、アメリカ人、大好きなんですよ。

 アメリカ人にとって70年代って、イコール「76年から78年」の意味なんですよ。ましてや前半が70sを意味するがほとんどありません。なぜか。それはアメリカ人にとってベトナム戦争は重くて振り返りたくない時期だから。それが終わって、少し楽天的な気分になったところで、アメリカ建国200年のお祭り騒ぎがあった1976年からの数年が結果的に愛されています。実際、この時の開放感でアメリカの消費がものすごく上がった時期で、その時に現象的な映画や音楽のヒットが生まれています。

音楽だと、まさにこのマックの「噂」、イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」、ボストンのファースト・アルバム、ビリー・ジョエルの「ストレンジャー」あたりがそうです。アリーナではキッスとかELOがやたら人気でした。映画だと「スター・ウォーズ」「ロッキー」「サタディ・ナイト・フィーヴァー」。テレビだと「チャーリーズ・エンジェル」「サタディ・ナイト・ライヴ」ですよ。どれも、華やかでしょ?

実際、

90年代の半ばから後半にかけて、まさにこの頃のリバイバル・ブームで、映画、ドラマがこの時代に焦点を当てましたからね。「バッド・チューニング」「ブギーナイツ」「ザット70sショウ」。

 この強さがあるので、僕みたいなエイティーズが青春期に当たる立場からすれば「絶対勝てねえや」と思い続けている時代でもあるんですよね。僕の時代もジョン・ヒューズ映画がリバイバルだいぶ前からきてるし、「ストレンジャー・シングス」なんてまさに僕の中学時代そのまんまなんですけどね。

 だから、「あの時期の一番人気の作品だからなあ」というのが「噂」にとって僕が抱く強い印象でもあります。


⑧絶えず、評判の良いアーティストに思い出される

「じゃあ、その頃に売れた他のアーティストでもいいじゃないか」って思うでしょ?それが、そうにも行かなくてですね。それは、「どんなに当時評判がよくても後年振り返られないと意味がない」わけですけど、マック、めちゃくちゃ振り返られるんですよ、これが。

まず、それを最初に感じたのが、 1996年にホールが出した「Gold Dust Woman」のカバーですね。これは「噂」の最後に入ってる曲ですけど、「ああ、やっぱりコートニー・ラブも子供の時は夢中だったか」と思いましたね。実際、コートニー、熱烈なスティーヴィー・ニックス・ファンです。

それから

正式には「噂」の一つ前のアルバムですけど、これもスティーヴィーの曲の「Landslide」。これがスマッシング・パンプキンズとディキシー・チックスにもカバーされました。

さらに

2010年代に入った頃には、ヴァンパイア・ウィークエンドが、これも時期は違いますけど、「Everywhere」をカバー。

2012年には、インディ・ロック系のアーティストによるフリートウッド・マックのトリビュート・アルバムも出ています。MGMT、テイム・インパーラ、ハイム、アニョーニなどが参加していますが、どうやら20、30代のリスナーの人には、これでマックの印象がかなりよくなってるようなんですよね。

こういう現象はイーグルスやビリー・ジョエルでは、申し訳ないけど起きてません。KISSは一時リバイバルあったし、ELOは映画での楽曲使用率の高さが半端ないですけど、マックの比ではないです。それはやはり、華もある音楽的才人の集団であると同時に、女性をロックに参入させたことが大きかったのかなと今にして思います。

このアルバムはローリング・ストーンのこないだのオールタイムでも7位に入ってたし、あと、これはそのうちネタで考えているんですけど、僕がつい先日、あるところに提出した洋楽オールタイム・アルバムでもトップ10に入れています。多分、そのことも話すと思うので、その時にまた。















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