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映画から音楽まで 時の経過が変えてしまう、「当時」と「現在」のアーティストの認知度と評価

どうも。

海外テレビドラマ・ネタで考えていたんですが、一つの訃報を経て、前から考えていたことがちょっと形になったので、こちらについて書かさせていただきます。

昨日、この訃報が入りました。

ドリス・デイが亡くなってしまいました。

この訃報に際して、ある世代から上の人たちはかなり反応し、それより下になると全く反応しない、というリアクションに興味を持ったし、実は彼女に関しては、97歳で亡くなってしまう前までに、僕はすでにこの人のことに関して興味を持っていました。

というのは

リアルタイムでの人気がすごかった女優さんなのに、僕らはなんて彼女の当時のものを知らなさすぎるんだろう

ということです。

ドリス・デイといえば日本のある程度年が上の人たちなら

このヒッチコックの「知りすぎていた男」のクライマックスで彼女自身が歌う「ケ・セラ・セラ」。この曲の大ヒットによって有名・・、という感じでしょう。日本の訃報ニュースでも「ケ・セラ・セラのドリス・デイ死去」というものを僕も見ました。

が!

欧米圏で彼女が一番有名なのはそれじゃない!

確かに彼女が「歌えるアクトレス」であったのは事実なんですが、彼女の人気のピークは、この映画が出た1955年頃ではありません。もっと厳密に言えば、1959年から60年代前半まで。なぜなら彼女はその時代、ハリウッドで最も稼ぐ女優だったのだから!

それは、この資料からも明らかです。ハリウッドの「出演作での売り上げ」によるボックス・オフィスの個人ランキングの記録が残されているんですが、彼女のその時期の成績、すごいんです。

1959年 4位   1960年 1位  1961年 3位 1962年 1位

1963年 1位 1964年 1位 1965年 3位  1966年 8位

すごい成績でしょ?こんなに売れまくってる時期があったんですよ。でも、これほどのヒットがあるのに、僕ら、よく彼女のこと、知らないじゃないですか?これは一体何なんだろう、と、僕はこの記録のことを10年近く前に知った時から疑問に思っていました。だって、これだけ売れてた人なのに、当時の作品が満足に知られていないって不思議じゃないですか。DVDでの再発でも欧米でさえあまり見かけないし、日本だとなおさらですよね。

そうなった理由を考えて見ました。

1.有名な監督の映画にあまり出ていない

一つは、ここが大きいのだと思います。前述の「ケ・セラ・セラ」だって懐メロ要素プラス「ヒッチコックの映画だからカタログとしてみてる」というのがあるのですが、往年の映画をのちの世代の人が見る場合、やっぱり、「歴史に残る監督のフィルモグラフィー」って接しやすいじゃないですか。僕もそれでかなり多くの役者を覚えたものですけど、そこにドリス・デイってほとんどないんですよね。

そういうとこで得なのって

  オードリーなんですよね。彼女は「世界では日本ほど人気はない」なんて言い方もされますけど、確かに日本での人気は行き過ぎた面もないではないですが、しっかり映画史に残る大女優ですよ。というのはやはり彼女のフィルモグラフィの場合、有名監督の代表作に引っ張りだこだから。なので、別にオードリー目当てに映画見ようと思わなくても、自然と引っかかってくるんですよね。ウィリアム・ワイラーでも、ビリー・ワイルダーでも、フレッド・ジンネマンでも、ジョージ・キューカーでも、ブレイク・エドワーズでも。そこのところが結局は大きいんですよね。

それにひきかえ、ドリスで出た有名監督の作品って、前述のヒッチコックのヤツとワイルダーの「恋人よ帰れ」くらい。でも、マリリン・モンローの「お熱いのがお好き」とかシャーリー・マクレーンの「アパートの鍵貸します」とかに比べると圧倒的に知名度落ちるでしょ、その映画。そういうところで差が出てしまうのかな。

2.アイコンとして「大衆性」はあるけど、「クール」ではなかった。

あと、その当時の人気が「大衆性」に支えられていたアーティストほど、この傾向に陥りやすいです。1950年代のハリウッドって「黄金期」なんて言われ方しますけど、当時の資料紐解くと案外そうではないですね。確かにヒッチコック、ワイルダー、ワイラー、ジョン・フォード、エリア・カザンみたいなそれ以前からいる監督が名作は出しているんですが、当時のアメリカの映画マニアがクールだと思っていたのはフランス映画やイタリア映画だった。これは事実です。50sの末期にフランスのヌーヴェルヴァーグ、イタリアだとフェリーニとかヴィスコンティ、アントニオーニ、スウェーデンだとイングマル・ベルイマンといったあたりが台頭します。一方でアメリカは、「十戒」とか「ベンハー」以外に記憶に残らない3時間ある史劇とか、ミュージカルばかりが売れてて、あんまり実りある作品、実はでてないんですよ。オスカーの受賞作とかも、この時期、「なんでこれが?」というのが非常に多いですしね。

この時期の「クールな女性アイコン」といえば

フランスだとブリジット・バルドーとかジャンヌ・モロー、もう少ししてアンナ・カリーナ、カトリーヌ・ドヌーヴ。イタリアだとソフィア・ローレンにクラウディア・カルディナーレ。当時のハリウッドの女優の「安心感」みたいなものに比べて、ちょっとセクシーさも、キャラクターのトンがり方も進んでるでしょ?彼女たちの場合は、やっぱりカルチャー・アイコンとしてタイムレスにオシャレで未だにレジェンダリーな存在として扱われるけど、ドリス・デイって全くそんな感じしませんからね。アメリカで、こういう感じに対抗できたのってマリリン・モンローか、強いて挙げればリズ・テイラーに「作品によっては」というのがあるくらいですからね。

あと追記するなら、ドリスが全盛時によく出ていたロマンティック・コメディも「古いタイプの笑い」で今日性が弱いんですよね。そこのところで、同じ時期に人気のあったコメディアン、ジェリー・ルイス同様、損してるなと思います。

で、思ったのですが

こういう人、ドリスだけじゃない!

と思い当たるフシがある人がいるので、幾つか紹介しましょう。

リチャード・バートンですね。この人もある世代から下の知名度低いですね。彼は今となっては「エリザベス・テイラーの一番愛した夫」として知られていますが、オスカーに7度ノミネートされている名優です。そんな人がなぜ後世の知名度が落ちるのかというと、歴史に残らないような史劇に出すぎたことですね。元は実力派の役者だっただけに残念ですけどね。

あと

バート・レイノルズですね。僕、この人、まだ洋画見始める前の70s後半に、テレビの洋画公開のCMでこの顔よく見てたの思い出しますが、その当時、ハリウッドで最も稼いでいたスターでした。「トランザム7000」っていう、アメリカのトラック野郎を描いた映画がすごく当たってそれでだったんですけど、あの当時、日本でも菅原文太の「トラック野郎」が大ヒットしてたんで、時代だったんですかね?ただ、そのあと、ネタとして振り返られることはあっても、彼が出てた映画が振り返られることはあまりなく、むしろ90s後半にポール・トーマス・アンダーソンの「ブギー・ナイツ」での演技で、それまでの出演作イメージと全く違う作風の映画で思い出されるという、こともありました。

やっぱり

歴史に残るような、タイムレスにいい作品に出ていないと、こういうことになる

ということなんでしょうね。

これが音楽だと

このパット・ブーンなんかがそうですね。50年代当時、アイドルとしてエルヴィスの次くらいに人気があったのに、その時にロックンロールをものすごく退屈なアレンジで歌ってしまい、「安心なもの」を好む人にとってのアイコンに成ってしまった。そのあとにロックが文化になった際に忘れ去られてしまった典型ですね。それから40年くらいして、この人がメタルのカバー・アルバム出したのは気の利いた自虐ギャグでしたけど(笑)。

ただ、音楽だと逆に

リアルタイムでほとんど売れてないのに、今の方が知名度がすごい!

そういう人、多いような気がします。

その最大の例がヴェルヴェット・アンダーグラウンドですよね。彼らの作品なんて、ビルボードのアルバム・チャートで100位に入った作品がないのに、今やロックのロール・モデルの一つですから。同じことはストウージズもしかりです。

ニック・ドレイクもそうですよね。この人なんて、チャート・ヒットどころか、動いている映像さえまともにないのに、今や内省シンガーソングライターの古典ですからね。

あと、この人たちよりは圧倒的に売れてはいますけど、今日のザ・スミス、キュアー、ニュー・オーダーあたりも、80s当時は今みたいな大物感は社会一般的にはなかったし、90sでもジェフ・バックリーのアルバムも全米トップ100に入ってないのに、今やヴォーカル・アルバムの古典だったりしますからね。

こういう風に、「記録に残る」のと「記憶に残る」というのは、全く別物なんだな、ということがわかります。

だから、

「今、売れてる」ということは、最終的には将来の保証は完全にはしてくれません!

僕の中で、今、最も、今回のドリス・デイに近い捉えられ方になりそうな人って

マライアかな。だって、この人、ものすごい数の全米ナンバーワン曲あるのに、一番思い出される曲って、クリスマス・ソングじゃないですか(笑)。しかも、リリース当時にアメリカでは全くヒットせず、20年くらいしてトップ10に入ったというオマケつきで(笑)。これもなんか、ドリスでいう「ケ・セラ・セラ」感をなんか感じます。

あと、僕が「この人も頑張らないと、この傾向が・・」と思ってるのが

ケイティ・ペリーですね。この人も、一番売れてる時、「なんでそこまで売れてるのかわからない」人だったし、「好感度」のみで引っ張ってた人でしょ?音楽的な評価が高いわけじゃないしね。

と、そんなことをいろいろ考えてしまったドリスの死でした。

ただ、とはいえ、ドリスの過去のヒット映画とかも、やはり歴史に埋もれさすのではなくて、後年に人が見やすい環境は作っておいて欲しいなとは思いますけどね。僕も夕べ、youtubeで彼女の最大のヒット映画の「Pillow Talk」をレンタルして見てるくらいなので。














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音楽ジャーナリスト。90年代にNHK-FMで番組を制作した後、99年よりフリー。2004年にインディ・ロック・マガジン「Hard To Explain」を立ち上げる。2010年よりサンパウロに移住。同年に洋楽・洋画・海外ドラマ専門ブログ「THE MAINSTREAM」をはじめる。

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コメント (2)
ボーイズⅡメンみたいな。グループだけど。当時めちゃ売れてたと思う。マライアと聴くと思い出す。失礼しました。
まさに!彼らも典型的な「記録しか残らないアーティスト」だと思います。
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