「洋楽ロックの価値見直し」につながってほしい、今年の日本の二大フェス
どうも。
サマーソニックも終了。日本の今年の夏フェスも終わりましたけど
TLの皆さんのリアクションを見るに、今年はいつも以上にヘッドライナーへの熱いリアクションが目立ちます。
フジロックのキラーズ、サマーソニックのマネスキンとBMTH。現行の40代以下の年齢の、今のロック界の中では若い部類のバンドでそれが起こったというのは、かなり収穫のあることだと思います。
近年の音楽というのは女性や人種的マイノリティの人気の強いものです。それ自体は僕も大賛成で、それを普段、ここで推してる音楽やアーティストにも反映していることだと思っています。
ただ、それでも、コーチェラ・フェスティバルが推し進めて、早くも飽きられの傾向がはじまっている、俗に「トップ40の人気アーティスト集めただけじゃねえか」みたいなやり方は僕もかねてから反対でした。それは、どんなにこれまでにないアーティストが出たとしても、ライブの部分において、「生楽器を使った生演奏の醍醐味の価値観」、これが低下していることが否めなかったから。
これって、とりわけコンサート業界に従事している人からしたら、やはりジレンマなんですよね。「自分はライブの何に惹かれてこの世界に入ったのか」。それが、極論すれば、ボタンひとおしすれば成立するようなライブではなかったはずなんですよね。
あと、生バンドの演奏によるグルーヴと臨場感、やはりあれは何物にも代えがたいし、あれこそが世界中の多くの人々を魅了し続けたものです。
だって、これから何年も音楽は続いていくわけですけど、電子音だけがひたすら進化し続けて人々がそういう音楽しか聴かなくなるなんてこと、起こると思います?僕はそうは思いません。そんなことは80年代の末には少なくとも言われてましたけど実際はそうはならなかったし、10年代にそれに近い感覚戻ってきたなとは思いましたけど、これも限界来てるなと思っているところです。
それはそうです。「新しい」と思われてたエレクトロとかヒップホップだって歴史をもって古くなる運命にあるんだから。ロックと同じように、それらだって古くなる。そして、それらの進化のスピードが落ちると、そっちだって進まなくなる。結局、どっこいどっこいでしかないんですよね。
コーチェラみたいなフェスがやった最大の過ちは、そうした生演奏の価値観を蔑ろにしたことです。それっていうのは、「古い・新しい」に関係なく普遍的なものです。楽器演奏がなくなるなんてことはありえない。なのに、そうした価値観を軽視したようなラインナップを組んでいる。僕があのフェスを徹底して批判するのはそれが理由だし、ロックの擁護を主張しているように映っているのも、「ロックという音楽ジャンル」が好きなこと以上に、「生楽器による演奏の価値観」をもっともダイレクトに伝えるのがたまたまそのジャンルだからです。そのことさえ伝えられるのであれば、別にロックじゃなくたって、他の音楽でも別に良いんですよ。
欧米の音楽、大好きですけど、あまりにもアーティストへのキャラ共感になりすぎている最近の若い人の傾向はウィーク・ポイントだと思っていて、良い方向にシフトしていかないものかなとは思っています。(というか、それはもう世界でも限界は来つつあると思ってるのでこれを主張してもいるんですけど、それはまた別の記事でも書こうと思ってます)。
そこいくと、フジロックとかサマーソニックって、ギリギリのところで譲らないものとして、僕が今言っているところの価値観を絶対譲らない感じがして好感持てるんですよね。サマソニなんて「Kpopやアイドルに心売った」と批判もされてますけど、今のコーチェラがマネスキンとかBMTH、ヘッドライナーにすると思いますか?やはり芯の部分では「ライブ・ミュージックの醍醐味を伝えたい」という気持ちに萎えはないし、「譲らないものは譲らない」気概を感じるんですよね。
そここそが、今、洋楽離れをどんなに叫ばれようが、国際世界ですら良くない傾向に行きつつあった中での日本の数少ない良いところだと僕は思っていました。洋楽離れの連載のシメ、それにしておけば良かったな、今からでも書き換えようかと思っているところです(笑)。
時代に合わせていろんな音楽を伝える必要は絶対にあります。しかし、そうだからといって、長年ロックを伝えてきたイメージを持たれていたような立場にあった人が生のライブの醍醐味伝えなくなったら、そんなの自己否定で終わりだとさえ僕は思っています。その意味で今回の日本の夏フェス、僕はすごく意義深いものだと思っていますよ。
それに先鞭つけたの、奇しくもSZAの代役(彼女の名誉のために言いますが、彼女のライブは3月に見てこのnoteで大絶賛してます)でやってきたキラーズで、彼らがこれまでうまく伝えられてなかった、今日世界屈指のプロフェッショナルなライブバンドの盛り上げっぷりを見せてくれたことにあると思うんですけど、それに火をつけた飛び入りドラマー、ワタル君のたぐいまれな自信とそれを裏付ける実力にも改めてここで感謝したいとも思っています。
フジロック、サマーソニックを見に行かれた方に素敵な思い出が残ったことを願うところです。