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[雑記]20200202 目に見えるものをつくる

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子どもの頃からつくることが好きだった。買ってもらうおもちゃもクッキーが実際に焼ける子ども用レンジだったり、大人も使える機織り機やナイロンコードで編むかごキットやビーズ通し機だったり、料理や手芸に関係したものが多かった。

小学校に入るとフェルトマスコットにポプリやビーズ、かないもとこ先生の壁掛け人形と大久保奈稚子先生のロマンドールが有名だった紙粘土人形、クレープ紙でつくるフラワーアート、ソープカービング、洋裁に編み物、造本といろんなことをやった。もう思い出せないものも多分まだある。ただこの頃は最寄りのショッピングセンターまで車で30分かかる田舎に暮らしていたので、どれだけ憧れても特殊なものはできなかった。地域で唯一の手芸屋で買える材料に置き換え、基本ができない中で応用しなければならないのでどうしてもうまくできず、何かをやってみては諦めることを繰り返していた(そんな田舎でもフラワーアートのキットは売っていたので、そういう時代だったのかもしれない)。材料も売っていなければ最後まで完成できたものも少なかったけど、本は手に入ったので楽しさを想像することはいくらでもできた。眺めているとつくりたい気持ちの半分くらいはなんとかなった。

中学生以降、大人になってからは編み物が多くなった。最初に編んだのは小学4年の冬休みで、母に教えてもらったかぎ針のショッキングピンクのマフラー。高校や大学時代は往復3時間の通学にかぎ針の小物をよく編んだし、卒業後も棒針で自分のためにトップスを編んだりした。キャミソールとか、赤黒ボーダーのパンク風モヘアニットとか。

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でも上京して仕事を始めるとつくる時間が取りづらくなった。10年弱趣味で通った編み物の学校も、忙しいと課題に手がつけられず卒業制作のツーピースも本当に締切ギリギリだった。もっとしっかり時間をかけて習いたかったと今でも時々思う(カリキュラムが大幅に変わったので叶わなくなった)。

今の仕事は形があるといえばある、ないといえばないようなものなので見た目の手応えが少ない。そういう日々が何年も続いてとても疲れてしまったので、少しの時間で完結できて没頭できる好きなことがしたくなった。それで、興味のあった籐かご編みをやってみることにした。最初は籐を手に入れる術や方法がわからなかったので、材料を買える目星があったクラフトテープのかごから始めて、少し編むことに慣れて籐編みの情報が集まったら籐かごを始めることにした。

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クラフトテープのかごなら材料を買える店を知っていたし、素材も紙とボンドなので値段も高くないし、とにかくちょうどよかった。編み方の練習で始めたにしては見栄えのいいものができたし、2つ目でも3日ほどでできる。完成品を目の前にして、昨今感じられなかった自己肯定感が少し戻ってくるように思えた。
材料が揃ったので籐を編むことにした。編み方が詳しく載った本を買い、基礎を積み重ねていく構成だったので最初から順番に一つずつ試した。一つ目の小皿は1時間もかからずにできて、もう一つくらい作ろうかと思えるくらいのテンポ感で欲求が満たされる。すごく好きでも時間が必要な編み物と較べると、籐編みは手っ取り早くて今の自分には合っていると思う。かごやいろいろなもの、今で大小合わせて10個ほどになった。初めて編んだかごバッグもあと少しでできる。

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つくったものはだいたいInstagramに記録している。気にし始めると、サジェスト機能もあってか自然にいろんな素材やショップの情報が集まるようになった。自然素材なら白樺の皮とか丸籐や紅籐、クラフトテープならハマナカを中心に専門店の独自カラーとか(エコクラフトはハマナカの登録商標で蛙屋のものだと紙バンド、それ以外はクラフトテープと呼ぶらしい)。写真を見るだけでも想像できて楽しめることは昔と変わらない。あけびや山葡萄は下準備がとても大変らしいけど、籐かごがうまく編めるようになったら一度くらい挑戦してみたいと思う。白樺を使った網代編みのかごにも。

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かごを編み始めて少しした頃、1985年のクリスマスに買ってもらった「手織りとんとん」の写真が送られてきた。懐かしくてうれしくなったので、さっそく正月に帰省した時に織った。母が時々虫干しをしてくれているのと、保管してあるはなれが湿気を吸う漆喰壁であるのが幸いしてか、35年ぶりなのに特に痛みもなく平織りからパンチシートを使った柄織りまでがうまくできた。おもちゃとは言え、対象年齢が“大人まで”なだけある。「今の私ならたぶんうまく織れる」と思った今の私でさえ、織幅の揃えや柄端の調整にはかなりの手加減が必要だったので改めて驚いた。確かに当時は失敗ばかりだった。その思い出を裏付けるように、途中で諦めた80年代ならではのアクリル毛糸がちゃんと残っていた。今も形を変えて似たようなおもちゃが出ているけれど、もう少し簡易的になりできることも限定されているらしい。昔の手芸おもちゃは子どもにも容赦ないスパルタ方式だった。

戯れに検索してみたら、同じく子どもの時に買っていたあのフラワーアートキットが今でも買えると知った。パッケージも種類もそのままだったのでうれしくて、(これは当時もわりとうまくできたけど)「今の私ならたぶんもっとうまくできる」とまた思った。

お菓子づくりのためのスパイスもそうだけど、本当に今はどんな材料でも簡単に手に入る。欲しい材料がどこにもなくて我慢するしかなかった頃とは違う。何かをつくりたいと思えばすぐつくることができる、すてきな時代。

数日で形になる手芸は性に合う。目に見えるものを一つずつ形にしていくのが精神衛生上とてもいいと知ったので、それからはいろんなものを少しずつつくっている。

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