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人間関係は経営に優先しない

From 安永周平

ある会社の社長が管理職を集めて「仕事を上手く進めるために障害となってるものは何か?」と聞いたところ、1人の課長が「人間関係がうまくいっていない」と答えた。そして、他の管理職の意見も全く同じだった。それに対する社長の答えが実にシンプルで核心を突いていた。

そんなもの当たり前だ!


「君たちはなんとバカげた考えを持っているのだ。考えてもみなさい。親子、兄弟、夫婦でさえも意見の違いがあり相手の立場を理解できないこともある。それなのに、生まれた場所も育った環境も違う、年齢も違えば性格や好みも違う人々が集まった”会社”の中で、イサカイが起こり人間関係が上手くいかないのが普通だろう。」

「少しくらいのことはお互いに我慢しなければならないのだ。人間関係がよくないから仕事が上手く進まない、なんて考えていても始まらない。それよりも”どのようにすれば仕事が上手く進むか?”を考えるのだ」

ひと言頼め! (Just Ask)


「その方法として、ひと言頼め。部下に頼みもせずに、頼む前から『協力してくれない』と言うのは間違っている。今後はひと言頼みなさい」

社長はそう申し渡した。その社長の言葉によって、管理職一同は「社長の言うことはもっともだ」という話になってキリがついてしまったそうだ。なんとシンプルな指導だろうか。そういえば、ダイレクト・レスポンス・マーケティングの権威、テッド・ニコラスも成功の究極の秘訣は「Just Ask(まず聞いてみろ)」だと言ってたな。

人間関係を優先する組織の愚


昨今、人間関係について色々と語る言説が溢れているし、このメルマガでも個人としてコミュニケーションの技術を磨くのは人間関係をよくするうえで重要だと配信してきた。それはその通りなのだが、大前提としてこのシンプルな方法を私は忘れていたような気もする。悩む前に頼んだか?と。

それに個人ではなく「組織」で人間関係を優先することは、経営の目的を見失うリスクがある。組織論を語る人たちは「会社の業績が上がらないのは人間関係が悪いからだ。その人間関係をよくしようとしない社長は無責任社長である」と言わんばかりの論調だ。でも、そう語る人達が経営者として会社組織を伸ばした経験があるとは限らない。

チームワークは成果を上げるため


よく「仕事はチームワークだ」とも言われる。確かに社員同士が仲良ければ、情報共有や連携が上手くいって仕事が上手く進むことはあるだろう。ただし、仲良くなるのを「目的」にするのは違う。規律もなく馴れ合いになって成果が上がらないチームは論外だ。会社は”仲良しクラブ”ではいけない。お客様に価値を提供することで対価を受け取る必要がある。

組織における人間関係、あるいはチームワークというものは、それが「共通の目的」を達成するためのものでなければならない。成果のためのチームワークだ。結果として仲が良くなるなら、それは素晴らしいことだ。ただ、人間関係を優先して仲良しクラブとなった会社は、社外に目を向けることを忘れ、お客様の要望より自社の都合を優先し始める…そうなると市場から見放されるのは時間の問題だ。

人間関係は事業活動に優先しない


もしあなたが会社を経営している、あるいはフリーランス同士でチームを組んで事業活動を行っているのなら…人間関係をよくすることを盲信してはいけない。自分たちの都合を優先するあまり、お客様のことを忘れてはいけないのだ。当たり前のことではあるが、チームや組織が大きくなってくるとつい「もっと効率的にオペレーションを行わなければ」という思考になりがちだ。

それに、市場は絶えず変化している。私たちが生きているこの時代はそのスピードがひと昔前よりずっと速い。人間関係の問題をなんとか乗り越えながら現状に最適な組織を作ったとしても、その組織ができあがる頃には市場は変わっているかもしれない。ガチガチに仕組み化してしまった組織は変化に弱い。変化に対応できない組織は時代に取り残される。そう考えると、組織論を盲信するのも考えものだ。

事業とは顧客を創造し、維持すること


事業とは顧客を創造し、それを維持することだ。変化に対応する機動力と弾力性を持った組織でなければいけない。そして社長をはじめとするリーダーは「いかに組織をマネジメントするか?」という命題に答えられるものでなくてはならない。

人間関係をよくして、社員の自由意志を尊重し、不平不満を解決してあげること…どれももっともらしく聞こえるかもしれない。しかし、それを優先した結果、事業経営の大きな障害となるケースは普通にある。繰り返しになるが、事業とは顧客を創造し、それを維持することだ。人間関係を優先した結果、最終的に事業が上手くいく…そんな甘い話ではないことをリーダーは忘れてはいけないと思う。

追伸:
昨年末、新卒時代の同期と飲んだ時に「ビジョナリー・カンパニー ZEROがよかった」という話になった。あのシリーズは名著なのだが。骨太で重厚で全5巻もあるので読めてない方もいるかもしれない。そんな人こそ「ZERO」を読んでほしい。全5巻のエッセンスが凝縮されており、分量的にも読みやすく構成されている

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