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【就活】#5 「連続的成長」と「非連続的成長」で「成長カーブ」を極大化せよ!!!

ここでは、「成長カーブ」を加速させるために必要なことを説明していきます。

↓↓↓ 前回note ↓↓↓


「非連続的な成長」と「連続的な成長」

新しいスポーツを始めたとします。始めた直後は、意外とうまくいって、短期間で急激に成長することがあります。ついつい「自分って天才かも」と思ったこともあるかもしれません。しばらくすると、あれこれ考え始めてしまい、うまくいかなくなります。壁にぶつかり成長が鈍化していきます。「つまらない」と感じてしまい、この段階で諦めてしまう人も多いと思います。でも、諦めずに努力を続けていくと、ある日突然、目の前の霧が晴れたかのように、すべてがうまくいくようになります。

このような経験をしたことはありませんか? 私は人事の仕事において、それまでは部分部分で仕事をしていたものが、ある日突然すべてがつながって全体が把握できるようになり、大局的なものの見方ができるようになったという経験があります。

【考えてみよう】
このような経験をしたことがありますか?


ここでは、人はどのような「成長カーブ」を描いて成長していくかについて、「非連続的な成長」「連続的な成長」の二つの観点から説明していきます。まずは「非連続的な成長」についてです。



非連続的な成長

2019年3月21日、メジャーリーグベースボール(MLB)のイチロー選手が惜しまれつつ現役を引退しました。その夜に引退会見がありましたが、リアルタイムで見た人も多いと思います。数々の大記録を残したイチロー選手の言葉には学ぶ点が多いですが、特に印象に残ったのは次のコメントでした。

アメリカに来て、メジャーリーグに来て、外国人になったこと、アメリカでは僕は外国人ですから。このことは、外国人になったことで人の心を慮ったり、人の痛みを想像したり、今までなかった自分が現れたんですよね。この体験というのは、本を読んだり、情報を取ることができたとしても、体験しないと自分の中からは生まれないので。
孤独を感じて苦しんだこと、多々ありました。ありましたけど、その体験は未来の自分にとって大きな支えになるんだろうと今は思います。だから、つらいこと、しんどいことから逃げたいというのは当然のことなんですけど、でもエネルギーのある元気のある時にそれに立ち向かっていく。そのことはすごく人として重要なことではないかと感じています。

このコメントは、イチロー選手が日本での地位を捨ててMLBに挑戦し、その挑戦を通じて成長したことの証しであると思います。イチロー選手は、日本のプロ野球(NPB)では9年連続首位打者という大記録を打ち立てました。これ自体とてつもない記録ですが、当時のイチロー選手にとってNPBは「Comfort Zone(後出)」になっていたと思います。当時MLBはパワー野球の全盛期であり、技術面でどう対応するかという新しいチャレンジもあったでしょうし、日本人初の野手という逆風をどうはねのけるかというプレッシャーもあったと思います。また、上記コメントのように、ある日突然マイノリティになったことから、精神的にも苦労が多かったと思います。でも、「Comfort Zone」から抜け出し新しいチャレンジをすることにより、技術的、肉体的な成長のみならず、相手の心を慮(おもんぱか)るといった精神的な成長も遂げられたものと思います。

神戸大学大学院経営学研究科の金井壽宏教授の著書『仕事で「一皮むける」 ー関経連「一皮むける経験」に学ぶー』を紹介します。この本では、数十人のエグゼクティブへのインタビューを通じて、「一皮むける経験」の種類を以下の11点に分類しました。

1. 入社初期配属段階の配置・異動
2. 初めての管理職
3. 新規事業・新市場のゼロからの立ち上げ
4. 海外勤務
5. 悲惨な部門・業務の改善と再構築
6. ラインからスタッフ部門・業務への配属
7. プロジェクトチームへの参画
8. 降格・左遷を含む困難な環境
9. 昇進・昇格による権限の拡大
10. ほかのひとからの影響
11. その他の配属・異動、あるいは業務

のちほど詳しく説明しますが、「非連続的な成長」は「一皮むける新しいチャレンジ」により実現します。「一皮むける新しいチャレンジ」は、それまでに培ってきた知識・スキルをゼロリセットし、新しい知識・スキルを獲得する機会を与えます。また、新しい環境への適応や新しい人間関係の構築などを通じて精神的成長をも促します。

【考えてみよう】
自身の非連続的な成長について、具体的に記載してください。


連続的な成長

「一皮むける新しいチャレンジ」を通じて「非連続的な成長」が実現される一方、「連続的な成長」は、小さな成功や失敗を繰り返し、そこから学び、知識・スキルを高め、漸進的に着実に成長していくことを表しています。

みなさん「GRIT」という言葉をご存知ですか?「GRIT」は日本語では「やり抜く力」となりますが、2013年にアメリカでは「天才賞」と称されるマッカーサー賞を受賞したペンシルベニア大学心理学教授のアンジェラ・ダックワースが提唱した理論です。ダックワースは、教育・ビジネス・スポーツなどのどの分野であれ、人が成功するには、「生まれつきの才能」よりも「やり抜く力」が重要であると主張しています。この「やり抜く力」は「情熱」と「粘り強さ」の二つの要素からもたらされるといいます。「継続は力なり」ということです。

アンジェラ・ダックワースの著書『やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』には、「やり抜く力」を簡便に測るグリット・スケールが掲載されています。 当てはまる箇所の数字の合計を10で割った数値が、あなたのグリット・スコアとなります。グリット・スコア3.8点が調査対象となったアメリカ人の平均で、3.0点が下位20%、4.5点が上位10%です。


「やり抜く力(GRIT)」をはかるグリット・スケール

グリットスケール


(出典)アンジェラ・ダックワース(2016年)『やり抜く力−人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』神崎朗子訳 ダイヤモンド社.

同様のことが、マルコム・グラッドウェル著の『天才! 成功する人々の法則』にも書かれています。その道のスペシャリストになるためには1万時間の正しい努力が必要であると書かれ、ビートルズやビル・ゲイツが例に挙げられています。


さて、私自身のGRITをみなさんと共有したいと思います。

私は商社に入社後、人事部に配属されましたが、正直戸惑いました。商社=営業 という先入観がありましたので、コーポレート部署である人事部への配属はある意味ショックでした。でも、そうはいってもまずは一人前の人事パーソンとなるべく努力をしてみようと思いました。先輩から人事パーソンの基本は、「人」と「組織」を覚えることだと教えてもらいました。入社後1年間、誰よりも朝早く出社し、毎朝1時間、自主的に社員名簿と組織図を覚える努力をしました。最初はチンプンカンプンでしたが、次第に社員の名前・入社年・所属部署・原籍(「背番号」とも言います。戸籍のようなものです)が少しずつ頭に入ってきました。社員名簿や組織図からさまざまなことに気づくようになりました。たとえば「A課は5人しかいないけど、B課には20人もいる。なぜ組織によって人数はこんなに違うのか?」「20人もいる課は、組織マネジメントが適切にできているのだろうか?」「中堅が少なくて若手が多い組織では、きちんと若手の指導・教育ができているのだろうか?」「年上の部下がいたら、上司はやりにくくないのだろうか?」といった疑問です。採用担当は、営業の人との接点が多いので、会う機会があった時に、質問をして理解を深めたりしていました。社員名簿をさらっと見ただけでは気づかなかったことが、1年間、じっくりと見ることにより、たくさんの学びがありました。この知識が後々の人事パーソンとしてのキャリアに大いに役に立ちました。GRITとはこういうことだと理解しています。
【考えてみよう】
自身の連続的な成長について、具体的に記載してください。

この章の真ん中あたりで、新しいスポーツにチャレンジする例をあげました。始めた直後に、短期間で急激に「成長」することがあると書きましたが、これが「一皮むける新しいチャレンジ」を通じて新たな知識・スキルを獲得したことによる「成長」です。その後、壁にぶつかっても努力を続けました。これが「GRIT」です。継続的な努力により知識・スキルが磨かれ、漸進的ですが着実に「成長」を続けます。この2種類の「成長」の組み合わせにより「成長カーブ」は加速していきます。


【まとめ】
・人は主に「経験」を通じて「成長」するが、「他者」「研修」からも補完的に学ぶ必要がある。
・「一皮むける新しいチャレンジ」と「GRIT(やり抜く力)」で「非連続的」かつ「連続的」に「成長カーブ」を加速させていく。
【参考文献】​
・松尾睦(2011年)『職場が生きる人が育つ「経験学習」入門』ダイヤモンド社.
・金井壽宏(2002年)『仕事で「一皮むける」−関経連「一皮むけた経験」に学ぶ』光文社.
・アンジェラ・ダックワース(2016年)『やり抜く力−人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』神崎朗子訳 ダイヤモンド社.
・アンジェラ・ダックワース(2013年)『GRIT: The power of passion and perseverance』 TED TALKS.
​・マルコム・グラッドウェル(2009年)『天才!−成功する人々の法則』勝間和代訳 講談社.


次回は、【就活】#6 あなたは「成長サイクル」を正しく回せますか?


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