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扉は開けたままで~ふたりの部屋 ふたりの暮らし

徒然に 434

しっとりとした大人たちの映画がヨーロッパからやってきました。

『ふたつの部屋、ふたりの暮らし』は
南仏モンペリエを見渡すアパルトマンの最上階を舞台に、
向かい合う部屋を行き来しながら暮らすニナとマドレーヌ、
二人の物語です。

世間的には二人は仲の良い隣人さん、
でもずっと二人はお互いを大切な人として、
開け放された扉を自由に行き来しながら暮らしていました。

そして若くはない二人は夢にまで見た二人だけの暮らしを手に入れようとローマへの移住計画を。

マドレーヌは子供たちに告白しようと思うのですが
それがなかなかできません。
今まで培ってきたものが全て崩れ去ってしまいそうで
怖いのです。

彼女の夫婦生活はとても不幸なものでした。
夫は亡くなり子供たちも独立して
マドレーヌにとって、ようやくニナとの人生を、
あとわずかな時間を大切にしたいと
思うのです。
でもどう子供たちに話したらいいだろう、そんな矢先に突然倒れてしまいます。

その瞬間いままで開け放されていた扉は閉じてしまった。

ニナはマドレーヌの看病をしたくても、ふたりのことを知らない子供たちに阻まれてしまいます。
二人にはこんなことが起こるなんて、考えても見ませんでした。

でも、あきらめません、二人で生きてゆく。
強い想いと情熱をもって果敢に闘う女性たちの物語です。


そしてもう一人、マドレーヌの娘は、母のことが大好きで
「父は暴力的なところがあったけれど、でも母は父を本当に愛していた」
と思っています。

だからニナから真実を聞かされた時、どうしても受け入れられなかった。
母は私にうそをついていた・・・、そのことに深く傷ついてしまったのです。

家族だからこそのむつかしさ、
それでも自分にとっていちばん大切なこと、
大切な人にとっていちばん大切なこと、
がしだいに見えてくるのですね。

まなざしのやさしさは、強さの証でもあるのかもしれません、
もう若くはない彼女たちは速く走れないけれど
愛のために立ち向かってゆく姿は
見ていて手に汗握るサスペンスです。
素敵なラストシーンが待っていますよ。

この作品が監督デビュー作、脚本も手掛けています、
フィリッポ・メネゲッティ。セザール賞新人監督賞受賞。

★土曜日から始まった「ふたつの部屋 二人の暮らし」「金の糸」「親愛なる同志たちへ」、様々なところでつながっている女性たちの物語でもあるようです。続けてごらんになる方が多く、嬉しいです。

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