
③〜小説『四国一周ひとり旅』〜中編
中編1 「四国上陸!」
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淡路島で迎えた二日目の朝、この日もやはり雨だった


今日こそ四国へ上陸だと意気込んでも天気ばかりはどうしようもない
バカ高かったホテルからカッパを着込み、早々に出発する
昨日の名古屋ほどの豪雨ではないだけでも救いではあるが、淡路島から四国へ上陸するのが徳島県で、ここからは動画を撮りながら海岸線沿いを走るつもりでいた
残念でならないが雨の降る海岸線を走っても仕方がないわけで、それならば最短コースで高知まで行ってしまおうと、徳島からは山を通る高速を選んで香川県を目指し、香川から高知入りするルートを選ぶ
昨日渡って感動した明石大橋に続き、鳴門海峡の上を通る鳴門大橋を渡り、バイクに乗りながらでも見える巨大なうず潮に再び感動したが、やはり雨だった事が悔やまれる

ついに四国上陸を果たしたて徳島県入りできたものの、そのまま徳島自動車道に入った
ここは片側一車線ずつの、とても広いとは言えない高速ではあるが、渋滞もなくスムーズに走れた
高知を目指して進めば、時折右手には瀬戸内海が、左手には吉野川であろう大きな川が見えるが、基本的には山ばかりの景色である
そして今日は、何より寒い
小降りとはいえ降り続く雨は、明らかに昨日ほどの雨量ではない
それでも昨日は感じなかった『寒さ』を感じるのは、気温自体が低いからである
まさかここまで雨の中を走り続ける事になるとは思わなかったし、ここまで寒いとも思わなかった
想定外が重なったが、夏休みである8月に、東京から南下して四国へ向かう道中で『寒い』という予想などこれっぽちも考えなかったのだ
半ソデの上から着ているカッパは、ゴアテックスとはいえむき出しの身体に貼り付き、体温を奪っていく
昨日はこれでも一日中走れたのに、今日は耐えられないほどの寒さの違いは、やはり雨よりも気温だった
「長袖を持ってくればよかったな……」
どこかに停まって着替えを出した所で、長袖自体が1着もない
ハーレーの後ろに積んだカバンの中には、夏のひとり旅を満喫しようと、色とりどりのアロハシャツばかりが入っていた
徳島から香川へ、そして香川県から高知自動車度に入る
この先が今日の目的地である高知という事になるが、両側を山に挟まれて寒さもいよいよピークに達していた
短いトンネルが20連発以上も続き、素人ながらにこの道路を作った大変さを感じながら走る

しかし周りの景色よりもとにかく寒さが先に立ってしまい、もはやガタガタと震えながら走っていた
バイクから降りて温まりたいが、降りるなら目的地の高知に到着してからにしたい
この先をあと1時間ぐらいだろうか、今日は途中で給油に立ち寄ったサービスエリアから、泊まる宿も確保していた
時刻もまだ昼過ぎで、昨日と違って時間的にはだいぶ余裕があるのだが、とにかく寒い……
時間があるとはいえイッキに行ってしまいたい気持ちとは裏腹に、奥歯がガチガチと震え続ける
身体に貼り付いた冷えきったカッパと、停まった所で半ソデしか持っていない現実に「進むしかない」と思うのだが、コンディションも悪いと体感的に進みも遅く感じるようで、出てくる標識はまだ先を示したままである
そんな中、南国サービスエリアの標識が見えた
どうしよう、寄ろうか……
寄って一度着替えたいところだが、南国サービスエリアから目的の高知ICまでは10キロもない、わずか数キロ程度のはずである
震えが止まらない身体に、無意味だと知りつつも『半ソデから半ソデに着替えるか』、『決死の覚悟でラストスパートするか』の判断に迷う
いよいよ南国サービスエリアが近づいてきた
通り過ぎてしまえば、そこからはもう先を目指すしかない……
……そして結局、南国サービスエリアに入った

ここからわずか、数キロ先なのに、である
助かったが、どこか悔しくもあった……
中編2 「念願の高知へ」
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