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負け戦をしにいこう

分かっていて敢えて負けにいこう。

実に半年もの間、同じ漫画を何度も描きなおしてきた。課題がどんどん表れて、それをクリアすればが完璧になると信じていた。

しかしそれは幻想だとわかった。先に限界がきた。8回目のネーム(漫画の設計図のようなもの)に差し掛かる時、体調が悪くなった。どれをとれば面白くなるかわからなくなった。無理だと思った。でもここまで直してきてこの作品の完成を見ずに放棄するわけにはいかない。5稿めが一番マシだったので、それを完成にもっていくことに決めた。決めたとたん、世界が輝きだした。体が軽い。終わらない仕事が一番体力と精神力を消耗するのだと身をもって理解した。

とはいえ5稿には粗がある。けど面白いから、粗をなくせばもっと面白くなると、何度も修正を考えてきた。そんな欠陥のある作品を、あともう少しで完璧になると思えた作品をそのままに完成させるのは苦痛だと思った。「もう無理だ」と身に染みたから「これにする」と決めたのに、まだ直そうとしては、心身がしんどくなってダウンするということを繰り返した。

そんな私に担当は「読み切りは負け戦だからさ」と言った。

連載はあとから取り返すこともできるかもしれないけど、読み切りは一発勝負だし、その一発勝負で勝てるほどの瞬発力は私にはまだない。そう割り切って、もうさっさと負けに行こう。

だから私はあきらめて負けに行くためにこのnoteをしたためた。

夢を見てきたなと思った。完成させずに負けて痛い目を見ることもなく、いつか完璧を手に入れられるという夢の中で心地よく描いてきた。でもその夢を終わらせないといけない。

できないことはいっぱいある。でもすぐできるようにはならない。ネームまでではく、マンガ一本を完成させるまでとなるとできないことの種類がもっと増えるだろう。何度も負けるだろう。どんどん負けにいかないといけない。

でも負けるとわかっていても、漫画は楽しい。演出、キャラの表情、筋肉、構図、ミニマムな目線で見て夢中になれるのがマンガである。

その楽しさを追って漫画家になろうと決めたことを思い出しながら、ご機嫌に負けに行こうと思う。

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漫画家です
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