読書感想文『ビジネスマンのための「行動観察入門」』
きっかけ
UXリサーチャーを志す上で、情報を集めることが重要なタスクになってくるわけだが、最も生々しい情報こそ、最も受け手に響くと考えると、現場を見る行動観察のスキルがあったほうが良いと感じた。
そこで本を探していたところ、この本に辿り着いた。
”ビジネスマンのための” という表現に対して、正直第一印象はややネガティブだったのだが、中身は大変良書で、筆者の自叙伝的な表現もあるので、読み物としても面白かったのである。
ネガティブに思った理由は、本来的には人間への興味が起点になっていてほしい、という私自身の理想主義的な思想に比べて、少し打算的な響きがしたからだが、いまは特に気になっていない。
気づき
行動観察において、最も基本的で重要なことは観察対象者と信頼関係を築くことである。
信頼関係を築けない場合、相手は本来している振る舞いをしてくれなかったり、本来の振る舞いを隠そうとするかもしれない。
服装というのは、最もわかりやすい自己表現の一つ、つまり分かりやすい相手へのメッセージとも言える。
相手が緊張感のある状況にいる際、ゆるい格好をしていたら軽蔑されるかもしれないし、ゆるい状況にいる際、緊張感のある格好をしていたら、必要以上に警戒されてしまうかもしれない。
なにより考えることは、一貫して ”相手のために” 何ができるかであり、自分の主張や主義のために、相手を置き去りにしてはいけないということだと感じる。
ワーキングマザーは時間に追われているので、毎日広告を見るよりも、何曜日に何が安い、というパターンで買い物をマネジメントしている、という話の文脈で出てきた話。
時間と家計、両方を背負って働いているワーキングマザー。
究極的には、多少高くてもお金ならなんとか調整できるが、時間ばかりは失ったものは戻らない、という感覚があり、この選択をしているのだろうと思う。
抽象的に考えてみると、使い手の合理性を感じ、理解することが重要なのではないかと。
で、その合理性は提供者の合理性とは異なる可能性がある、というマインドセットが必要なのではないかと思う。
そういう意味では、自分がどう感じるかは一度置いておいて、使い手の人生を追体験するスキルが必要だと思う。
は前述した通りのこと。
これができるようになるには、おそらく時間も必要だとは思うが、まずは、自分と相手の価値観は違うかもしれない、というベースを持つことが重要なのではないか。
つまり、自分がされて嬉しいことは相手もされて嬉しい、とは限らない、ということだ。
幼児教育では、自分がされて嫌なことは相手にもしない、という論理が展開されるが、これはあくまで倫理観のベースを作ることに貢献しているのだ、と考えるのが良いと思う。
社会性を手に入れるための第一歩とも言えるかもしれない。
新生児からは自分と相手を別の存在として捉えてきたが、実は社会という単位では、一緒の存在であるということを認識してもらう。
大人になるにつれ、社会はそんなに単純じゃないと知る。それぞれ育つ環境も違うし、置かれている状況も異なってくる。
そうなると、一人一人と向き合って、ある特定の人たちにとって ”いいこと” を定義し直す必要が出てくるのではないか。
やること
調査の際は、礼儀を抑えつつも相手の文脈に沿った服装を考える。
情報そのものと同時に、情報の受け取りやすさまで考えて設計を行う。
環境心理学を学び始める。
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