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【日本経済新聞要約・考察】第15回 ダウ上昇率33年ぶり、実体経済との乖離の要因は何か、ドルの動きと5月予測

※本要約・考察は2020年5月1日の日経新聞の記事をもとに書いております。

〈要約〉

新型コロナウィルスの感染拡大を受け、2020年3月は株式市場からマネーが流出した。急落したダウ平均は16年11月以来の安値をつけた。4月に入ってから、米連邦準備理事会(FRB)をはじめとする、世界の中央銀行はより積極的に信用不安の封じ込めるために動き出し、投資家はリスクがとりやすくなったため、株式市場にマネーが戻ってきた。
 米国内総生産がマイナス成長でさらなる悪化が予想される中、金融市場と実体経済との乖離が目立つ。その乖離を引き起こしているのは、市場参加者が経済再開や治療薬・ワクチンの早期開発といった「ベストシナリオ」を織り込み始めたからだ。
 また、3月に急落したクルーズやカジノ株も4月に入り2ケタの上昇率となった。政府支援や、中銀の社債市場への流動性供給といった対策により経営破綻などの「最悪シナリオ」が回避できるという見方が強まったことから買い戻しが行われた。
 米国の実体経済の悪化は一方で進んでいる。失業率は10%を超える見通しで、4〜6月期では、4.8%減となった前期と比べ、40%減のマイナス成長が予想されている。そのため、米企業業績が今後さらに落ち込む見方もあるなかで、株価指数は今の位置を維持できないと警鐘を鳴らす人もいる。

〈考察〉

今回の日銀の発表見込みに関する記事を踏まえて「中銀発表とダウ」「中銀発表とドル指数」について考察をする。

考察に入る前にこの4月中の主要国の中銀や政府の動きをまとめてみる。
(今回は米欧日の三つのみ)

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3月ほどではないが、4月も米欧日の中銀や政府にとってはかなり忙しい一ヶ月だったことがわかる。では早速考察をしていこう。

1. 「中央銀行と株価指数」

ダウ平均株価:

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月末の議会による発表は多かったものの、今月の米中銀・政府の発表が株式市場(ダウ平均株価)に与えた影響は4月9日のみであり、その他の影響は薄かったと考えられる。今月のダウ平均株価は4月21日の原油の急落や、4月11日のIMFによる経済悪化の発表などが下げの要因になった。他にも、4月頭のNYなどでのコロナウィルスがピークアウトしたとの観測や、4月17日のギリアドの治療薬開発への期待からの買いもあった。
ダウ平均株価を見る限り、中央銀行の緩和策により、下値が堅く9日の発表時に超えた22500のラインを維持できるかが注視するべきポイントではないか。

日経平均株価:

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日経平均株価も同様、日銀・日本政府発表が買い要因になったのは緊急事態宣言時だと考えられる。17日のドル資金供給オペ延長発表時も上がったがこれはギリアドへの期待による買いが多かったと考えられる。
基本的に日本の株式市場も日銀や政府によって下値は固く、「最悪シナリオ」を回避できている。同時に、米国のダウ平均株価を追っているようにも見える。上記同様で、原油の影響やコロナウィルスに関する発表に敏感であるものの、中銀による資金供給策が経済の下支えをしていることがうかがえる。

しかし、第二波が懸念されている新型コロナの再度感染拡大。歴史的な緩和策や資金供給策、財政出動をしてきた中央銀行や各国政府はさらなる策があるのだろうか。ワクチン開発そして実用化に少なくとも1年は必要となる中で、再度欧米諸国で感染拡大する可能性はある。経済打撃を最小限にするために経済を再開すると、第二波、第三波の可能性が残りロックダウンの繰り返しが行われる可能性があるという意見がある(Holtemöller 2020 )。興味ある人は是非、英文ではあるが下記の論文を読んでみて欲しい。

中央銀行や政府も金融市場の安定を目指しながらも、さらなる財政悪化を回避するために早とちりでの経済再開は避けたい。


2. 「中央銀行とドル指数」

ブルームバーグドルスポット指数(BBDXY)とは

ブルームバーグ・ドル・スポット指数とは為替市場における最も高い流動性米国との最大の貿易フローを持つ先進国および新興国の通貨を代表している指数だ。ドル指数は多様な通貨によって構成されておらず、総括性に欠ける。なお、BBDXYは2004年の数値を1000としている。

ブルームバーグ・ドル・スポット:

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ドルインデックス:

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ドルインデックス(青)、ブルームバーグ・ドル・スポット(橙):

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重ねてみると、似通う動きをしている。そして、日本の緊急事態宣言やFRBの資金供給策に反応していることがわかる。加え、米国の経済活動再開観測が増えた4月14日あたりから、米株や米債を買うためにドル需要が上がっていることがわかる。

資金供給策を打ち出すと、需給の関係でその通貨の価値は落ちる。BBDXYを見てもわかるように、米国が追加緩和を行うとBBDXYは下がる。また、日本や欧州などの国が緊急事態宣言や活動再開などで、他国の株価が上がる可能性がある際はドルが売られる。

まとめ

今週話題となった日銀の「国債買入額を無制限化」はFRBと足並みをそろえる意味合いがあった。5月は各国政府・中銀がお互いの動きを睨みながら、金融市場面での国際協調がより意識される局面になりそうだ

緊縮財政政策の必要性があるとの声が出始めている中で、どの中銀もコロナ終息後の資金吸収オペのシナリオを描いている時期だろう。為替操作国として非難を浴びないためにも、ポストコロナは財政面や政治面での国際協力が一段と重要視されるだろう。

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