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【日本経済新聞要約・考察】第5回 米民主選挙、運命の初戦ブティジェッジ氏勝利

※本要約・考察は2020年2月5日の日経新聞の記事をもとに書いております。

〈要約〉

11月の米国大統領選挙に向けた初戦は中西部アイオワ州党員集会である。途中段階の集計で前インディアナ州サウスベンド市長、ピート・ブティジェッジ氏(38)が首位に立ち、僅差で左派のバーニー・サンダーズ(78)が追う構図となった。

「知名度も資金もなく選挙戦を始めたが、驚くべき勝利なのは否定しがたい」と話すブティジェッジ氏は世論調査の平均支持率では5位にとどまっているため、全米を驚かせた。

ブティジェッジ氏の勝因は初戦のアイオワに集中する選挙戦略だと考えられる。現時点での得票率上位4人の中でも、ブティジェッジ氏のアイオワでの滞在日数、イベントの開催数はともにトップ、広告費も僅差で2位となっている。

ブティジェッジ氏の政策姿勢は、左派候補の掲げる国民皆保険の導入に怪奇的であり、現実的な政策を志向する立場がバイデン氏と重なり、穏健派からの指示は(米紙ワシントンポストによる入口調査によると)ともに25%を分け合っている。ブティジェッジ氏は同性愛者でありながらも、保守的な有権者の多い郡部でも指示を集めた。

ブティジェッジ氏の対抗馬となりうる、バイデン氏にとって今回の候補者選び、そして大統領選は「ウクライナ疑惑」や高齢であることもあり、泥仕合になりうる。

2位のサンダーズ氏は大学の無償化や大企業への増税などリベラル色の強い政策を売り若年層からの指示を得ている。格差拡大が社会問題となっている米国にとって、社会のへなく求める声も多く、17~29歳の有権者の48%がサンダーズ氏を選んだ。

しかし、左派候補が大統領選でトランプ大統領に勝てるかは怪しい。中西部の白人労働者層はリベラルな政策を敬遠する傾向があることから、トランプ氏に勝利することは極めて難しいと考える声もある。来週11日のニューハンプシャー州予備選ではサンダース氏が優位に立つが、黒人票の多い南部ではバイデン氏が有利になると考えられる。穏健派と左派の構図が明らかとなってきた中、主導権争いが激化するだろう。本命不在のまま、候補者選びが長期化し、2016年同様に党の分断が再び起きかねない。

〈考察〉

今回の民主党候補者選びは「アイオワ州党員集会」「ブティジェッジ氏」に着目したい。

1. 「アイオワ州党員集会」

アイオワ州党員集会は非常に特殊な位置付けである。候補者選びの初戦ではあるとともに、アイオワ州の人口構成は米国全土と異なるものの、2000年以来アイオワ州党員集会で勝利した候補者はそのまま大統領候補となっている。

今後の候補者選びを占うアイオワ州党員集会でノーマークだったブティジェッジ氏が勝利することによって、彼の認知度は上がり平均支持率5位から増えていくかもしれない。2008年のオバマ氏も平均支持率3位以下でありながら、アイオワ州党員集会で勝利し、大統領選挙に向けて着実に支持率を上げていった。

混戦となっている今回の候補者選びは、2016年のように党を分断しかねない。穏健派と左派ともに有力候補が二人ずつ存在し、今回の党員集会でも左派(ウォーレン氏、サンダース氏)そして穏健派(バイデン氏、ブティジェッジ氏)は開票率71%の時点で左派が43%、穏健派が42%と接戦となっていることがわかる。

そんな中、米メディアのNBCが公開している出口調査の結果が非常に興味深い。最終学歴と投票相手の割合を示したものでは、最終学歴が低ければ低いほどサンダース氏を指示していることがわかる。年齢でも年次が下がるにつれて支持率が高まる。一方で、ブティジェッジ氏白人からの指示はサンダースに勝っており、学歴問わずの指示を得ている。(https://www.nbcnews.com/politics/2020-primary-elections/iowa-results)
しかし、白人以外の人種からの支持率はサンダースが43%の中、ブティジェッジ氏はバイデン氏やウォーレン氏と然程変わらない15%となってしまっている。

今後のブティジェッジ氏の鍵は白人層からの指示を維持する事とともに、白人以外の人種の指示を獲得する事だろう。

2. 「ブティジェッジ氏」

今回の党員集会で一般投票では負けたものの、党員票を最も集めたブティジェッジ氏は今後の大統領選でも目が離せない存在になるだろう。ハーバード大卒でコンサルティング大手マッキンゼーに勤務した同氏は2012年に故郷のサウスベンド市の市長に就任。市長時代の2014年に7ヶ月間アフガニスタンに駐留。輝かしい経歴を持ち、軍経験を有するため保守層を含む幅広い有権者層に支持されそうだが、同氏には懸念点が2点ある。同性愛者として公言している中で、世論は50%しか支持できないとしている。加えて、市長時代の黒人層への対応を不満に感じている有権者も多く、米紙ワシントンポストの1月の調査では黒人有権者の支持率は2%だった。同じ穏健派のバイデンしは48%と対照的だ。

ブティジェッジ氏の選挙公約で目立つものは世論(民主党、共和党問わず)から高い指示を得ている公約を選んでいる事だ。有権者の中ではブティジェッジ氏が強い意見を持っていないと批判する声もある。Politicoによると彼の選挙公約の中で差別化を計っているのは「温室効果ガス排出税」と「労働者と地方への投資」だ。(https://www.politico.com/2020-election/candidates-views-on-the-issues/pete-buttigieg/)

温室効果ガス排出税はバイデン氏も掲げる中で、経済活動を制限してしまう可能性から敬遠されることが多く候補者4人しか掲げていない。地方経済を創生プログラムやインフラ投資を通して活性化することを掲げており、民主党候補者では同意見を持つ人は二人しかいない。トランプ氏と類似するような政策を打ち出しているため地方の保守票獲得が狙いだと考えられる。

アイオワ州党員集会で勝利したブティジェッジ氏の現実的な政策とリベラル色の強いサンダーズ氏の政策は、経済活動の促進を目的としているトランプ氏の政策とは異なるため、経済の失速が懸念される。米国債券の価格も高騰する可能性がある。選挙に関して先行き不透明感がある中、民主党全国大会が終了し候補者が決まる7月なかばでは、ある程度不透明感は払拭されるだろう。その際には、サンダースが選ばれた場合、景気後退懸念から米国債の購入が増えるだろう。

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