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【日本経済新聞要約・考察】第18回 デモ活動に軍動員、揺らぐ米国での軍の政治利用、コロナ第2波とトランプ再選

※本要約・考察は2020年5月15日の日経新聞の記事をもとに書いております。

〈要約〉

 警察官による黒人暴行死事件を火種に全米で行われているデモ活動に対して、トランプ大統領はデモ隊に対する軍の威圧に固執している。大統領が軍を政治利用している懸念が増える中で、エスパー国防長官やマティス前国防長官が反対するなどで連邦軍の動員をめぐって政権内の混乱が表面化している。

 エスパー国防長官は国防総省が政治から距離を置くことが難しいと発言し、軍動員に反対する意向を示した。その背景にはトランプ氏の大統領再選を支援しているとみなされることを避ける意図がある。

 エスパー氏はワシントン近郊に集めた連邦軍のうち200人を拠点基地に戻るように命令したが、叱責したトランプ氏の要求により直後に撤回した。米兵配置に関する決定を数時間で撤回することは極めて異例であり、エスパー氏の反対意向は疑問が残る。

 連邦軍は従来、国外の敵の兵士や戦闘員との戦闘を前提とされている中で、実際でも活動の威圧には適任ではない。マティス前国防長官は3日の声明で「(政府の)対応に軍事を持ち込むほど米軍と市民社会に誤った紛争を生む」とし、連邦軍動員への慎重姿勢を強調した。

 トランプ氏は就任以来、連邦軍の政治利用を疑わせる言動を繰り返してきている。政治利用のリスクとしては軍が客観的な情報を大統領にあげなくなり、独断リスクが高まりかねないことが懸念されている。

〈考察〉

 今回の米国で行われているデモ活動に関する記事を踏まえて「デモとコロナ第2波」、「トランプ再選の可能性」について考察をする。

「デモとコロナ第2波」

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 今回のデモ活動が始まった発端は米国ミネソタ州のミネアポリスだ。5月30日から本格的に始まったデモ活動からまだ1週間も経っていない。新型コロナの症状が現れる期間、そして新規感染者の発見にはまだ1週間必要となる。

 実際、NY州のクオモ知事はデモ参加者にマスクの利用とソーシャルディスタンスを推奨し、デモ参加者に新型コロナの検査を提供することを発表した。

 全米で開催されているデモ活動で、6月3日で少なくとも`11,000人が逮捕され、三密の空間で1日間閉じ込められたとの報告もある。デモ活動の長期化に備えて、連邦軍の動員が想定される中で、コロナの感染拡大リスクは拭えない。

 一方で、現在のアメリカ人(特に若年層)の新型コロナウィルスの捉え方は「未知の病」から「治療薬のないインフル」へと移動している。自粛疲れにより新型コロナに対する危機感が薄れ始めている現状がある。トランプ大統領が4月17日に発表した経済再開に向けての指針に各州が従うかわからないものの、再度ロックダウンが行われる可能性は否めない。加え、ロックダウンがなくても医療崩壊により、国民の多くが外出を自粛した場合、再度人の流れは泊まり再度コロナショックが生じる可能性が残る。

 デモ活動者はコロナに恐れていない現状を見ると、感染者拡大によって抗議者数は減ってもデモの長期化の可能性は高い。そして、トランプ政権は現在威圧による解決を継続している。今週中にトランプ政権が国を団結させる姿勢を見せない限り、新型コロナ第二波は起きかねない。そして、長期化により感染者数が爆発的に増えた場合は医療崩壊や外出自粛が伴うため、3月のコロナショックが再度起きるだろう。

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 3月から5月にかけてFRBは量的緩和を続け、現金通貨と預金通貨を合算したM1Money Stockは過去最高の増加を見せた。これ以上の量的緩和はインフレ懸念を引き寄せる可能性が高い。厳しい状況下でFRBが取れる策は利下げのみとなり、マイナス金利導入の可能性を示唆するかもしれない。

 世界でも最も感染者の多い米国で大型のデモ活動が行われている現状を見ると、第2波を懸念してもおかしくない。


 直近ではNSADAQやS&P500は6月3日時点では4日続伸し過去最高値に迫っている。ロックダウン後の経済再開の速さへの期待から買いが先行している。4日ではハイテク株などの利益確定の売りもあり、S&Pは反落した。同時に、米国債10年の売りも増えており、利回りが6月1日に0.636を記録してから直近では0.839まで高騰している。

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 デモ活動そして第2波に対する警戒感はあるものの、金融市場にまだ大きな影響を与えていない。来週から6月下旬の間での第2波が生じたときに備えて、キャピタルゲイン目的のHFなどが債券を買い、米株をショートしている(しはじめている)のではないだろうか。

「トランプ再選の可能性」

 トランプは再選に向けて必死だ。しかし、前国防長官のマティス氏が「ドナルド・トランプは私の人生で初めて、米国民を団結させようとせず、その素振りさえ見せない大統領だ。その代わりに、彼は米国を分断しようとしている」と批判するほどトランプ氏の行動は伴っていない。現状のトランプ氏の行動は自らの再選の可能性を遠退けてしまっている。様々な企業や団体がデモ活動を支援する中で、国のトップのトランプ氏が逆流を自ら進んでいる構図だ。

 現状、CNBCによる調査ではトランプ氏の支持率は41%と低迷している。対抗馬となるバイデン氏の支持率は52%と差は明白だ。

 国を団結するよりも、分断しようとするトランプ氏の発言は2017年のトランプ就任式でのスピーチを思い出させる。度々トランプが発した「We」という言葉全国民よりも支持者に向けての言葉だった。「来る者拒まず去るもの追わず」の考えが強いトランプにとっては、今回のデモ抗議も主要支持者の維持のためにも威圧的な対応が続くかもしれない。

 今後さらにトランプ氏の支持率が低迷した場合は、「出口戦略」を模索する可能性が高い。例えば、譲渡所得課税(Capital Gains Tax)の引き下げだ。トランプ・オーガナイゼーションが所有する資産を売却する際に実質利益が出ることになる。(https://www.foxbusiness.com/money/trump-coronavirus-tax-cuts-stimulate-economy)株や不動産の金融商品の長期保有をしている個人投資家がそのタイミングで売り、金融市場が大きくマイナスに動く可能性がある。

 今回のデモ抗議で国の分断を示唆させているトランプ氏は着々と出口戦略に動き出しているのかもしれない。

【ウィークリーレビュー&プレビュー】

〈今週のちょっとした出来事〉
・新型肺炎感染拡大(6,800,000人超える)
・ECBパンデミック緊急購入で6000億ユーロ拡大 (GOOD)
・米国新規失業保険申請件数で200万件超え(減少傾向なためOK)
・中国Caixin製造業購買担当者指数 予想49.6 結果50.7(改善傾向を示すGOOD)
・米国ISM製造業景況指数 予想43.5 結果43.1 (改善のためOK)
・米国製造業購買担当者指数 予想40 結果39.8 (前月比のためかなりBAD)
・本田選手 筋トレを再開する

〈来週のちょっとするかもな出来事〉
・コロナ新規感染者数750万人に
・デモ抗議継続もコロナ感染者激増
・FRB,ECB議長発言
・米中関係さらに悪化か
・インドにバッタ大量発生で30年ぶりの規模



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