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重力、逆らう、情熱 〜Juice=Juiceの引力について〜


前段

コロナ禍も収束の兆しが見えつつあった2022年の秋、私はどっぷりとJuice=Juiceというアイドルグループに陶酔するようになりました。
齢30にして今までアイドル文化に触れる機会はほとんどなく、バンド含めLIVE自体数える程度しか行ったことがなかった私が、2022年8月にハロプロのファンクラブに加入後半年で5回ものイベントに参加しました。
その時点で多いなと思ってたのに、2023年に入ってからの参加数を数えてみると10月の時点で40公演を超えています。

……おや?

このペースだと年末までに60公演近くのイベントに参加することになる予定です。1日2回の公演などもありますが、単純計算で土日のどちらかはアイドルを見ていることになります。

……ちょっと何言ってるかわかんないです。

と、ここまで時間もお金も費やしてハマる経験をしてこなかったので、自分でもずっとおっかなびっくりでここまで来てしまいました。
自分なりの折り合いはついているにしても、ここまで急速にのめり込む人間もあまり類を見ないのではないかと思い、Juice=Juiceというグループが持つ魅力、その普遍性と特異性について、私なりの言葉でまとめてみようかなと。

一人ひとりの魅力を挙げ連ねることはできるのですが、グループとしてどこが良いのかという話になると一気に抽象度が上がって説明が難しい。感情型で近視眼的なものの見方しかできない自分が恨めしい。
かといって言語化から逃げるのも情けなく思い始めてきたので、せっかくなら私が1番魅力に感じているJuice=Juiceのコンサートについて、その空間を構成する要素に分解して考えてみようと思います。


Juice=Juiceのコンサートを構成する要素

歌唱力

Juice=Juiceを語る上で、これは絶対に欠かせません。
彼女たちの持っている武器のなかでも一番注目されやすく、名実ともに備わっている代名詞とも言うべきポイントです。
MVやライブ映像でも歌の安定度は味わえるとは思いますが、現地で味わう生の音の圧力・迫力はえげつない。人類が現時点で到達可能な最高度の出力で、精神に作用する何かが働いているんじゃないかと勘ぐるほどに1音目のインパクトがでかい。
1度でいいからぜひ生で聞いてみてほしい。音の波に流されそうになる経験ってなかなかできるもんじゃないと思います。

更に付け加えて言うのならば”歌唱の成長率”とでも言うべきでしょうか。Juice=Juiceに入ると歌がうまくなる、というのは冗談のような本当の話。現に3代目リーダーの植村あかりさんは、今でこそ重要な歌割や決めパートも多く技術的にも精神的にも支柱となる存在ですが、デビュー当初の音楽的な評価は低く見積もられてしまう方でした。
なんなら劣等生扱いされ、歌割りも発言の機会も制限された中で彼女は数年の時を過ごします。それは人によって耐え難い苦痛にもなり得る状況だったと思います。
でも彼女は自分の可能性を諦めることなく、ただ純粋に自分の成長と少しずつ高まる周りからの評価を信じて、努力の日々を駆け抜けてくれた。

そんな成長過程を体現してきた植村さんがリーダーとして率いるグループです。今の自分に自信を持てない子だったしても、未来への希望を抱き進み続けることができるのも頷けます。

歌唱力って最終的には聞く人の好みによるわけで、高いとか低いとか言うこと自体ナンセンスなのかもしれないですが、個人的には原曲が好きで聴き込んでいる人ほど、実際に生の歌を聞く上での音程やリズムの正確性ってものすごく重要に感じると思います。
センス良くアレンジする場合か、明確にチャレンジの意思を感じる場合は別として、舞台上でのミスが悪目立ちしていると感じてしまった瞬間にふっと我に帰ってしまう。

ここまで生活と音楽が近くなった時代だからこそ、LIVEでは没入感を大事にしたい。
この気持ちに応えてくれる、応えようとしてくれる向上心が見える瞬間に、Juice=Juiceを応援していてよかったと心底思わされます。


表現力

ダンスに関しては本当にセンスがなくて感覚値でしか語れないので、表情や仕草含めた「見た目」のパフォーマンスについて。

姿勢がよくて立ち姿が綺麗な子が多いので、並んで立つだけで華があるまさに「選ばれし女の子たち」ですが、ダンスに「激しさ」を求める方には他のハロプログループの方が満足感は高いかもしれません。
実際ハロー!プロジェクト全体のコンサートでモーニング娘。やアンジュルムのダンスを間近で見ていると、そのダイナミックな力強さに圧倒されることがあります。
一方でJuice=Juiceはと言えば、ポイントで発揮される”点”としての爆発力というよりも、曲のイメージに沿って流れるように”線”を描いていくようなダンスパフォーマンスが多い。

直線ではなく曲線。力強さよりも流麗さ。
昨今の情勢的にワードチョイスが難しいところですが、男性的な力強さ・かっこよさを表現するのが娘やアンジュだとしたら、女性が女性らしくあることに誇りを持ちつつ、最大限にクールな色香を漂わせるかっこよさがJuice=Juiceの持ち味と言えます。

そして表情の使い分け。これは見られていることを常に意識しているアイドルならではの表現方法だと思います。Juice=Juiceの特徴をあげるとすれば「笑顔を有効的に差し込んでくるところ」かなと。
クールな曲の決めパートの終わりの一瞬にだけ、にこやかな微笑みを見せつけて余裕のある上品な色っぽさを感じさせます。
また、明るい曲ではパッと花が開くように印象的な笑顔を効果的なタイミングで放り込んできたりします。
それが年上組から最年少の中3まで、それぞれの解釈で表現されているのでいくつ目があっても足りません。


MC

これは偏見かもしれませんが、アイドルのMCに純粋な「笑い」を求める人は多くないんじゃないかと思ってます。
特にコンサート会場はアイドルたちの人間性を好きになった人しかいない空間ですから、ゆるゆるほっこり話だったり、初出の情報やメンバー同士の関係性がわかるようなエピソードが重宝されるイメージがあります。

そういう意味で、JuiceのMCは結構特殊な部類です。
なんにも考えず、普通に腹の底から笑ってる時があります。
超絶シュールな空気に耐えられなくなったり、言い回しが独特すぎてついていけなかったり、繰り広げられるエピソードの強烈さに笑うしかなかったり。

この点、Juice=Juiceには特異点となるメンバーが複数名いるのが強い。
もう名指しします、タコと一華です。
タコに対する圧倒的な知識と熱量と息継ぎ知らずのノンストップトークスキルを有する工藤由愛ちゃんと、音楽的バックボーンとヲタク的な視点の話を独自の言語感覚で繰り広げる有澤一華ちゃん。

他の追随を許さないレベルの爆弾2つも抱えて、いつ破裂するのかわからないドキドキ感を味わえます。いやはや、MCでこの2人に挟まれてる松永里愛ちゃんのバランス感覚にもあらためて感謝申し上げたいぐらい。

大型犬の系譜を受け継ぐ後輩たちも多いので、大概は楽屋の裏話やほっこりかわいいエピソードで和む時間が多いのですが、この2人のスパイスが効きすぎているせいでどこかしらで色んな脱線事故が起きます。それを特に回収しないまま曲に移ることもしばしばです。彼女たちの鬼の切り替えにこっちが置いていかれることもしばしばです。

そんなふうに感情のまま、感覚のままに突き進む彼女たちに振り回されることが楽しいと思えてくると、もうJuice=Juiceの虜です。


観客の”自由”度

特にコールが解禁されて以降、LIVEを作り上げているのは舞台に立つ演者だけではないということを肌で感じるようになりました。

10年という歴史の積み重ねの結果、歴戦の猛者たちが客席に点在してコールを率いてくれている部分と、特にコロナ禍で急増した新規の”活きの良い”ヲタクたちとが、互いにリスペクトしながら同じ空間を作り上げているように感じます。

特に象徴的なのが、『あばれてっか?! ハヴアグッタイ』のコールです。
コロナ以前はコールの少ない、ヲタクにとっての休憩曲のような位置づけだったそうです。しかし好奇心旺盛な新規ヲタクたちが多かったのか、声出し解禁1発目の披露時にとにかくコールを入れまくって超絶な盛り上がりを見せました。その日のMCでは植村さんの笑いが止まらなかったほど。
そしてそれが今やデフォルトとなり、コールで酸欠になりそうなほど盛り上がる1曲へと変貌を遂げました。
この変化を柔軟にうけいれるヲタクたちがJuice=Juiceを支えてきたからこそ、今の自由な空気感が醸成されてきたのだろうと思います。

そもそも、Juice=Juiceのメンバーたちがヲタクに何かを求める、ということ自体が極端に少なく感じます。
「こんなコールして」「公演ではこれをお願い」と、ある程度ルール化してもらった方が慣れない人たちは乗っかりやすい。それでも彼女たちはそういう表現をあまりしません。
彼女たちはいつでも全身全霊のパフォーマンスを見せてくれる。それを受け取ってどう”表現”するのか、それを私たちに委ねてくれている気がする。
だからこそ、やらされ感のない自分なりの応援・声援を届けている、と自分自身が納得してLIVEに通うことができるのです。

自由とは単に統制が取れない状態にあることではありません。既存の枠組みを時に無視して新たな地を開拓しようとする勇気と、それを実現させる堅実な行動力があってこそ、本当の意味での”自由”が生まれるのだと思います。

そして何より、自分たちのパフォーマンスを見ていれば勝手に盛り上がるだろう、という圧倒的な自信がチラついて見えることで、「なんて頼もしくて格好の良い女たちなんだ」と胸が熱くなるのです。


後段

Juice=Juiceの魅力は他にももっとあるだろ!と思いますよね?私も思います。でも、言葉で全部伝えられるような魅力なら足繁く通う必要なんてないんですよね。全部伝えきれないからこそ、どうにか少しでもあがいてみて現地に足を運ぶ人が増えたら良いなと思うわけです。

Juicetory大阪公演のMCで一華ちゃんが言っていました、みんながハロプロを広めてくれたから、私はハロプロを知って憧れるようになったのだと。
自分が好きになるものがどこに転がっているかなんて、自分でもわからないものです。

自分の言葉を尽くして語る人が少しずつ増えて、それが連鎖して多くの人に伝わって、Juice=Juiceが大好き!って胸を張って言える人が、1人でも増えたら良いなと思っとります!


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