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Meat Alternative(代替肉/培養肉) Marketの展望🍖

Kearneyの発表したレポート"When consumers go vegan, how much meat will be left on the table for agribusiness?"によると今後、Cultured Meatと呼ばれる肉が世の中に浸透し、2040年には市場の35%に相当する$630Bnに達すると見積もられている。私も北欧でスタートアップ投資をする中で、最近Clutured Meatに相当するスタートアップを目にするようになってきたこともあり、今後の代替肉の展望について、Kearneyのレポートを参考にしながらあれこれ考えてみたいと思う。

そもそも代替肉が必要とされるきっかけとは?

私の理解では畜産産業を取り巻く問題として下記の3つが存在し、それらの解決策の一つとして代替肉が生まれたものと理解している。

1. 家畜から排出されるメタンガスによる地球温暖化問題

世界の温室効果ガスのうち、4%程度が牛のゲップによるものであることをご存知の方も多いのではないでしょうか。
また、後述の食料不足の解消に向けた酪農用地の拡大のため、森林伐採が進んでいることもまた問題視されている。

2. 人口増加による食料不足の解消

2050年には世界人口が100億人に達すると言われており、2010年時点の食料
の+56%の食料供給が必要と言われています。

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下記のOurWorldInDataによるレポートデータを見ていただくと分かる通り、農用地の77%が畜産に使用されているものの、カロリーベースでは18%しか産出できておらず、畜産を続けることは全人口の食料生産効率を考える上では非効率と考えられ始めていることも問題の一つである。

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3. 動物愛護の観点から見た屠殺への忌避感

近年、食用に屠殺される動物数が豚:約1,100M(2000)→約1,500M(2016)、鶏:約900M(2000)→約1,400M(2016)と増加しており、動物愛護の観点から屠殺に反対する声も出てきている。

代替肉の種類にはどんなものがあるのか?

先ほど述べた諸問題の解決策として期待されている代替肉の種類は私が把握している限り、大きく4つの種類として捉えている。

1.Plant Based Meat - 豆類や芋、豆腐、キノコ類等を使った代替肉。
アメリカのBEYOND MEATIMPOSSIBLE MEAT等が有名ではないでしょうか。最近では肉に限らず乳製品を植物ベースの材料で代替する製品を作るスタートアップ等も出てきており、スウェーデン発のSTOCKELD DEAMERY社もその一つ。

2.Insect Based Meat - 昆虫(ミミズ/ゴカイやコオロギ等)を使った代替肉。いくつかのスタートアップ企業が散見される。(※リンク参照)

3.Mycelium/Fungi/microalgae/mycelium Based Meat -菌糸類/菌類/微細藻類/菌糸体等の微生物の発酵による代替肉。
2022/3に菌糸体の発酵による代替肉を製造するスウェーデンのスタートアップMycorenaシリーズAラウンドで欧州同業界における最大規模の$27mを調達したこともビッグニュースの一つ。

4.Cultured Meat - 動物から採取した細胞をバイオリアクターすることで成長させ、成長させた培養肉。
他の代替肉と異なり本物の肉である点が重要。最近ではオランダのMosa meat等が注目を浴びている。

また、代替肉/培養肉とは異なるアプローチとして、現在の飼料を変えることで家畜から排出されるメタンガスを減らすことを目指す企業も存在する。スウェーデン発のVolta Greentechもその一つだ。

参考までに、Shiftedがまとめた"16 alternative protein startups to watch, according to VCs"という記事に16社の注目の代替肉スタートアップ企業がまとまっているので、興味があれば覗いてみると良いかもしれない。

どこまでMeat Alternativeが受け入れられるか?

環境問題への意識、食糧問題への意識、動物愛護に対する感度、これらの感覚は人それぞれ濃淡が異なるため一概には言えないものの、やはり「味」がそれなりに美味しくない限り世に受け入れられることは難しいだろう。つまり、どんなに環境に優しく、生産効率が高く、屠殺がゾロになろうが、よほど日頃から意識をしている人でない限り、美味しくないものは継続して購入されづらいことは想像に易い。

Kearneyのレポートによれば、Plant Basedな代替肉や菌類ベースの代替肉は既存の食用肉と比べて味が悪く、Insect Basedな代替肉に関しては味に加え、食文化として昆虫を食べることに抵抗を覚える方が多いだろうと予想している。一方でCultured Meatに関しては本物の肉をベースにしていることから味がそこまで落ちない点で市場に受け入れられやすいとしている。その結果、冒頭に記載した通り、2040年には市場の35%に相当する$630Bnに達すると見積もられている。

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今後の展望

代替肉/培養肉に解決が期待される課題の中でも「環境負荷」については先日のCOP26での2050年までのNet Zero目標や特に欧州各国では2030/40年ごろに向けた各国独自に温室効果ガス削減目標を掲げる等、世界的に気運が高まっているところかと思います。

今般のウクライナ情勢を受けて、エネルギー発電分野でのCO2削減の先行きが見通しづらくなった中で、食サプライチェーンの中での温室効果ガス削減の動きはさらに重要性が増すのでは無いかと考えており、特に米国・欧州では環境負荷の少ない方法での飼育・加工を行っている業者への助成金や補助金等は今後増えてくるものと予測しております。

そうなった場合に供給側の各スタートアップ企業は高い注目を集めている市場なので資金調達がしやすく、助成金/補助金を上手く使うことで研究開発・セールスに必要な資金を蓄えることができる分、ビジネスを加速させやすくはなるのではないかと思っております。

後はとにかく「美味しい」代替肉/培養肉をどれだけ早く高い品質で作れるかに掛かっているのでは無いかなと。

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