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KIRIKAWA NOTE #03 「オペレーションの本質」

カフェブーム最前線から独立店経営まで。20年に及ぶ豊富な飲食店運営経験から導き出された飲食店経営の醍醐味やチームビルディングのモットー。TGPの飲食部門トップが実体験をもとに綴る飲食店あるある満載コラム。

これも前の会社員時代、飲食経験の浅い素人ばかりが集まっていた店舗で店長として働き出した時の話。

ある日のディナータイム、ビールサーバーの調子が悪く、バックヤードの奥にあるビール庫でしばらく作業しているとスタッフから「店長、お客様が怒って帰りました」と言われた。そんなに混んでもないのになんで怒って、しかも帰ったのか?急いでお客様を追いかけて聞いたら、「席に座って5分以上メニューも出してくれない」「誰も目も合わせようとしなかった」「もともとここはこんなレストランじゃなかった」と激おこだった。

働いているスタッフに聞いたら誰もが「気づかなかった」とか「誰かが行ったと思った」とか人任せ。あまり混んでなかったからこそおきることではあるのだが・・・。

前任の店長はオペレーションの仕組みもしっかり作っていた。しかしそれはあくまで表向きには、である。実際、そのオペレーションには肝となる部分があり、【常に全員に指示を出す人が必要】という仕組みだった。要はある一定以上のマンパワーが全員にないと回らないようになっており、その足りない部分を店長が指示を出して、一人で埋めていたのである。サッカーの監督が指示出しながら自分も11人のうちの一人としてボールを追いかけているようなものだ。

カッコつけて一人でここに乗り込んできたことを後悔してもしょうがない。1からオペレーションの作り直しに着手した。しかし、そのお陰で気付いたのだ。極論だが、例えスタッフが素人の集まりでも、マネージャーは自分を入れずにお店が回るオペレーションを作らなくてはならない、ということを。

では真のオペレーションとは何か。

まず、マンパワーやスキルをお店の価値にしてはいけない。わかりやすく言うと、お店を回すのにマンパワーやスキルに頼ってはいけないのだ。仕事ができる人ほどイライラしているお店ってよくあるでしょ?それってその人のせいにしがちだけど、実際はオペレーションの仕組みが機能してないことが多い。できる人の仕事量が多すぎて、マンパワーとスキルが無駄遣いされている状態。

店の造りやお客様の入り方によっては難易度の高い店もあるけど、だからこそマンパワーを使うことに意味がある。一方で、マンパワーに頼りすぎると、できる人がいないと回らないとか、できる人がワガママになるなど、チームのバランスが悪くなってくる。

オペレーションの基本は【最弱のメンバーで最高の試合】をする事。まずはそれがお店の基盤としてあって、その上にマンパワーやスキルが加わって、はじめて付加価値のある料理やサービスが提供できるのだ。

160席あるお店で素人の集まりを束ね、毎日試行錯誤しながら考えた。どうしたら最低限のサービスが提供できるのか。最初の目標なんて、【お客様が頼んだものが、お客様が想定してる時間内に、提供できる】なんてレベルだ。それを忙しい時でも暇な時でも、自分が入らずに、出来るかどうか。まずはそこをクリアしないと次には進めない。

毎日朝礼5分、ランチ後のミーティング10分、ディナー前の中礼5分、終礼10分。月に2回のハウスミーティング、ウェイターミーティング、キッチンミーティングなどなど。オペレーションに入らない代わりにとことんミーティングをやり、チームとして、個人としてのオペレーション能力を強化をしていった。指導の内容は【優先順位】と【具体的な行動】。「こんな時はこう動く」とか「ここのスピードをあげよう」とか「チームでこういう言葉のやり取りをしよう」などを、一人一人とみっちり時間をかけてやっていった。

もうひとつのアプローチとしては、人の代わりに設備や備品で対処すること。時給千円くらいのアルバイトが1日3時間働いたら月9万円、1年で108万円だ。108万円あればそれなりの設備や備品が揃えられる。

設備や備品は風邪も引かないし、遅刻もしない。結構頼れる仲間だと思う。仲間だと思ってちゃんとメンテナンスしながら大事に使えば、自己都合で転職します!って言い出すこともない。しかし、あくまで脇役。設備や備品でお客様の感動を得ることはほとんどない。

もう一度書きます。妄想のシュミレーションでは【最強のメンバーで最高の試合】をすれば良い。夢見て良し。そういうのも大事。でも実戦のオペレーションは【最弱のメンバーで最高の試合】をして、勝たないといけない。オペレーション能力を鍛えることが大事。

そして最弱だったはずのメンバーは、勝って自信をつけると、どんどん強くなる。そうすると、夢が夢じゃなくなる瞬間に出会える。それこそ飲食店経営の醍醐味だ。


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桐川ヒロユキ
1979年大阪生まれ。十代の頃から料理人を志し、20歳の時に上京。国内外に60店舗を経営する大手外食チェーンに入社。2003年に23歳の若さで西麻布の店舗の店長に就任。右肩下がりだった店舗を復活させたり、月商約1億円150名のスタッフを抱える店舗を回すなど経験を積む。26歳の時に満を辞して独立、渋谷区本町にイタリアンレストランを数店展開。しかしその後、体を壊し全て閉店。実践で培った対応力とマネジメント能力をかわれ、2019年、株式会社THINK GREEN PRODUCEにフード&ビバレッジ事業部の執行役員として参画。趣味はサーフィン。プライベートでは2児の父親。

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「1杯のコーヒーから街づくりを考える」コンテンツ・プロデュース・カンパニー。レストランやベイカリー、ホテルなどの運営から、商業施設開発、不動産コンサル、広告、PRまで。幅広い業務領域を行き来するTGPメンバーによるクリエイティブな視点やアイデア、カルチャーマインドを発信します。
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