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頑張ることをやめてみた

この1週間はなんだか調子が良い。

気持ちがドーンと落ち込むこともなければ、身体が鉛のように重くなってどうしようもなくなる事も少なくなった。
元気になった!というよりは、身体や心のどこかで無理をしているという感覚がなくなって、すごくニュートラルな気持ちでいられている。

それは「頑張ることをぜんぶ辞めてみた」おかげだと思う。

以前までは、休んでも休んでも心が安まらなかった。
「休んでるんだから家事くらいちゃんとやらなきゃ」という義務感に駆られる。
調子の良い日に外出をすると罪悪感が湧く。かといってただ何もせずに休んでいるとどんどんふさぎ込んでしまう。

そのことを主治医に相談すると「いま、あなたの心の中には『もっともっと頑張りなさい』って鼓舞する”叱咤激励ちゃん”がいるのね」と言われた。
参照:「叱咤激励ちゃんと全面肯定くん」

叱咤激励ちゃんが休まない限り、宿主の私も心から休むことが出来ない。
今の生活において”叱咤激励ちゃん”が最も厳しくなるタイミングを改めて観察してみることにした。すると「家事が一切何にも出来ていない」時が1番『もっと頑張りなさい』と厳しくなることが分かった。
逆に言えば「掃除・洗濯・炊事がすべて完了していて他にやることがない」という状態にならないと私の叱咤激励ちゃんは満足してくれない。

これはマズい、と思った。
現状、家事全般は一応出来てはいるが、それは叱咤激励ちゃんからの命令によるもので、私の心からの欲求ではない。だから心も身体も実は一切休めていないし、いくら休職しても休んだ実感が湧かないのだ。

ということで週末、居酒屋で夕食を取りながら夫に相談してみた。

掃除も洗濯も炊事も、実は義務感に駆られて無理してこなしている。
でも、今はその無理がどうしても辛い。
ここは夫婦の家なので、快適な環境に整えたい気持ちはある。調子が良いとき、気が向くときはもちろんこれまで通りの家事をする。でも、どうしても頑張れない時は家事をお休みしたい。そして家事が出来ていないときは、調子が悪いんだな、と思ってどうかそっとして欲しい。

すると夫はこう言った。

「君の言いたいことは分かった。でもね、だからといって、それに甘えて一切頑張ることを放棄したら許さないからね」

そう言われて、私の心のどこかでピシッと亀裂が入った感覚がした。
その亀裂から今まで見て見ぬふりをしてきた感情がこんこんと湧き上がってくる。それはとても透明な色をした怒りと悲しみで、気がつけば私は滂沱の涙を流していた。

「私、結構、頑張ってるつもりだったんだけど」

「私が仕事を休んでる分、家の中はきれいにしようと頑張ってるし、食事も作ってるし、君の雑務も私が代わりにやってると思ってたんだけど」

「でも、それでも辛い時があって、辛い時は休ませて欲しいだけなのに」

「休んだら、その後もっと頑張らないといけないの?これ以上、どう頑張ればいいの?」

涙を流しながら次々と言葉が出てきた。
それは”叱咤激励ちゃん”の命令じゃない。自分の本心から出てきた言葉だった。
”叱咤激励ちゃん”は「もっと頑張れ」と言う。でも私の口から出てくる言葉は「もう充分頑張っている。これ以上頑張れない」だった。
そうだ、私は充分頑張っていたんだ。でも辛かったんだ。自分自身の本心にようやく始めて出会うことができた。

ちなみに夫の発言をフォローすると、
夫は夫なりに、休職してるのにどんどん病状が悪化して無気力になる私を心配していた。このまま治らないのではないかと危惧し、積極的に身体を動かしたり、社会との繋がりを持った方がうつが改善するのではないかと考えていたそうだ。だから、休み休みでいいから、うつを治すための努力は惜しまないで欲しい。
という趣旨だったそうだ。

私からしてみれば、そんな気力があるんだったら最初からこんなに辛い思いをしてないよ!と憤りを覚えたし、なんなら居酒屋で軽く口論になった。

でも次の日、夫が定時で帰ってきて
「昨日は完全に失言だった。頑張れなくて辛い人に向かって頑張らなかったら許さない、ってなんて酷なことを言ったんだろうと後悔している」と土下座する勢いで謝ってきた。
なんでも、あまりにも私が悲壮感漂わせて号泣していたので、今頃部屋で首を吊って自殺してるんじゃないかと、仕事中気が気でなかったそうだ。

ということで、無事に夫からの承認も取れたのでその日から”叱咤激励ちゃん”の命令に全部背くことにした。

部屋に服が散乱している。でも身体は休みたい。無視。

洗い物が溜まっている。でも今は面倒くさい。無視。

夕食の準備ができていない。スーパーで好きなお惣菜を買ってきてもらおう。無視。

”叱咤激励ちゃん”の命令に背いてボーッとしていると、心の底から「本当に休めている」と実感できた。それが嬉しく、また快感でもあった。
それでも最初の一週間は、何もせずに休んでいると、息が苦しくなって胸が痛くなるパニック症状に襲われた。”叱咤激励ちゃん”が今度は身体に攻撃をし始めたのだ。
そんな時はお医者さんから処方して貰ったパニック症状に効く頓服薬を飲んで昏々と眠ってやり過ごした。

そんな日々を2週間ほど続けていると、ふと、身体が軽くなっていることに気付く。悲しみの波が徐々に穏やかになってくるのを実感する。起死念慮の回数が減っていることに気付く。食べ物が素直に美味しい、と思える。Amazonビデオで見ているドラマの続きが気になってワクワクしている。

休職4ヶ月目でやっと、私は安心して「休む」ことが出来ている。
このまま順調に寛解に向かって欲しい。今、床の綿埃を見て見ぬふりをしながらソファに横になってそう祈っている。

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うつ病を患っています。これからどう生きていこうか模索中。人生リハビリの備忘録や短歌やエッセイなど。

コメント1件

病院おつかれさまでした。私も長期戦覚悟で来月もお休みしようかと考えています。来月もゆっくりしましょうね。
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