宇部詠一「愛と友情を失い、異国の物語から慰めを得ようとした語り部の話」の感想 - SF創作講座感想

分かりやすさ:語り部が読者に語りかけるので、説明的な文章が受け入れやすく、分かりやすい。作中作は児童文学的な世界を見通せる視点で、説明や登場人物たちの感情をいちいち書いても、うっとうしくない。かつ、必要な情報を出せるだけ出せていると感じた。

意外性:語り部の自己欺瞞とひとりよがりな観測が、後半でひっくり返るところ。作中作世界の構造もしかり。さらっと終わりすぎかと思いつつも、作中作の別れの大きさの根拠が明かされがじわじわくるしかけだと感じた。あと、分離による平和の実現は、意外な落とし所だと思う。

必然性:面倒そうな語り部だなーと感じてからの「だからモテねーんだよ」と感じるにいたる流れは、必然性がある。作中作のひとびとの行動原理も分かりやすい。

変化:自分を救うために書く、ということを認めるところか。ちょっと弱い印象がある。一方、作中作のメジャー宗教信者が棲み分けをする、というのが大きな変化の痕跡を目撃した気分になる。

小並感:信用できない語り部による、説得力のある作中作。
https://note.com/tfurukawa/n/ne00ab20f71a1 に感想のスタンスを書いてあります。

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