前澤_孫2

前澤友作は平成最後のスター起業家だった

記者会見の主役は前澤さん

2019年9月12日、前澤友作さんはゼロから立ち上げ、一時は時価総額1兆円を超えるまでに成長したZOZOから卒業しました。ヤフーとZOZOの資本・業務提携についての記者会見は17時30分から始まり、予定時間を超えて約2時間の長丁場となりました。本来、M&Aの主役は買収サイド(つまり今回はヤフー)ですが、まぎれもなく今回の主役は前澤さんでした。

新聞、テレビ、週刊紙からワイドショーのリポーター、そしてサンジャポまで詰めかけたメディアは、前澤さんが何を言うのかを固唾をのんで見守りました。前澤さんは100%自分の言葉で、ヤフーへの売却や新社長の紹介、共に戦った社員への惜別の思い、そして自らの次の夢の一端について語っていました。

途中、尊敬する経営者であり、友人でもあるというソフトバンクグループの孫正義代表を招き入れ、新旧のスター起業家の競演を演出。「ZOZOTOWN」というプロダクトを生み、育て、芸能人との交際でも世間を騒がせ、自分の考えを臆することなく発信する前澤さんは、紛れもなくスター起業家と呼ぶにふさわしい存在感でした。

夏の終わりのような寂しさ

一方、前澤さんのZOZOでの挑戦が終わることに何とも言えない寂しさも感じました。日本で生まれたZOZO、そして前澤友作という起業家は、このまま世界に飛び出し、世界のスター起業家と肩を並べる存在になれるのではないかという期待を持っていたからだと思います。

プライベートブランド(PB)を発表したときは、なるほどウェブサービスではなく、デジタルを駆使した新コンセプトのアパレルブランドで世界進出を図るのかとワクワクしました。しかし、このPBは思うようには成長せず、有料会員サービス「ARIGATOメンバーシップ」なども空転し、ZOZOの評価を落とす結果となってしまいました。これまで多少の失敗はあったでしょうが、基本的に連戦連勝していきた前澤さんもZOZOにおける自らの経営者としての限界を感じたようでした。

前澤さんも会見でトップダウン経営の限界を述べ、今後のZOZOはボトムアップ型の組織に転換すべきだと語っていました。ZOZOのトップから退く決断は9月に入ってから下したそうです。最後まで辞める気はなかったものの、最終的には自らの経営手腕をある意味否定する決断をせざるを得なかったということなのだと思います。もしくは前澤さんにとって日本の経営環境は息苦しさもあり、この場で戦い続けるよりも、次の夢にステップアップしていく方が自分らしい生き方ができると感じたのかもしれません。

令和の前澤さん、次のスター起業家の登場に期待

前澤さんは次のステップとして2つ示していました。一つは月旅行です。月に行く前に宇宙に行く機会があるそうですが、自分だけでなくアーティストを引き連れて月に旅立つビッグプロジェクトは再び世間の注目を集めるでしょうし、前澤さんが月を間近で見て何を感じたか、どんな話をするのかが今から楽しみです。

もう一つは事業家としての道です。ZOZOを退いても「事業家でありたい」と語る前澤さんは、社会貢献性の高いビジネスをこれから立ち上げていくそうです。きっとわれわれを驚かし、ワクワクするような方法で新たなビジネスを爆誕させると思います。

ZOZOから退いても前澤さんがビジネスから退くわけではないので、また次の挑戦で多くの人をハッピーにすることでしょう。そして、EC業界で取材活動をする私としては、日本のECや流通、ショッピングをさらにイノベートするような次のスター起業家の登場に期待したいと思います。もちろんただ待つのではなく、取材活動を通して原石を発掘していくつもりです。



EC業界向け専門紙「日本ネット経済新聞」で記者してます。EC、通販、モノづくり、流通、マーケティングなど取材していく中で紙面には書かない自分の考えや疑問について書いていきたいと思います