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【要約・書評】脳を活かす仕事術 ー茂木健一郎

書籍名:脳を活かす仕事術
著者:茂木 健一郎


全体を通して。

著者の脳科学の見地と実体験から、日々活かせる仕事術を、脳をフル活用する習慣・思考整理術に大分し、紹介している。

要約①:脳をフル活用するには?

本書は、情報入出力のバランスの重要性について繰り返し述べている。
つまり、情報を仕入れたら、書くなど「体を動かす」事が脳の構造的に非常に効果的だ、という事だ。

脳には、
・感覚系学習の回路(インプット)
・運動系学習の回路(アウトプット)
…をそれぞれ司る領域があるが、これらは独立しており、脳内で直接連携を取っていない。
つまり、インプット・アウトプットをバランスよく行う事で、それぞれの回路が活動し、インプット内容が更に濃密さを増す。

これは、脳にはインプットした情報を、無意識の内に整理する性質がある事にも関係している。
この「整理」は、体を動かしアウトプットする事で、運動系学習の回路が働き、インプット内容を整理・編集し、「意味」として捉える役割がある。
つまり、知識が定着することを意味している。

脳をフル活用する上で、もう一点重要な事が、「チェック機能」を設ける事だ。
アウトプットした情報を定期的に見返し、例えば、著名人の作品と比較してみる事が、理想と現実のギャップへの認識につながる。
このギャップ認知が、脳にとってはパフォーマンスを上げるきっかけとなる。
著者は、自身が執筆した書類と、憧れである夏目漱石の書籍と比べたりすることで、ギャップ認知を起こし、脳に刺激を与えていると述べていた。

要約② 思考整理術

 ・現代の情報収集能力に必要なもの

現代においてはインターネットでの情報検索が手軽になったため、情報を暗記する必要性は薄まった。
著者は、この影響により仕事の価値も単なる情報整理(事務作業)ではなく、知的創造が重要になってきていると述べている。

故に、多くの情報を処理・統合し、新たな価値を生まないとならない訳だが、そのためには、価値ある情報(=本書では”真水の情報”と表現)を瞬時に判断する能力が必要である。
これについては、①で述べたインプット・アウトプットで継続的に鍛える事で、真水情報を瞬時に判断する能力が会得可能になると述べている。

また、専門分野はその発祥国の文献が優れていたりする事も多いため、語学の習得もオススメをしている。

 ・集中力を上げるためには。

著者によると、集中力は前頭葉が支配しており、無意識の一種であるとのこと。
無意識とは、文字通り意識が無いことで、要約①で挙げた運動系の回路と非常に密接な関係を持っているようである。
つまり、集中力を上げるには、アウトプット(体を動かす事)で鍛える事が出来る。

また、脳のワーキングメモリという機能を活用し、集中力を増強する方法もある。

ワーキングメモリとは、作業を行うために一時的に長期記憶などを集結させ、タスクの操作と管理を行う機能である。
これは脳の司令塔と言われるLPFC(前頭前野外側部)が中心となって機能している。
このワーキングメモリは、都度1つのタスクのみに有効であるため、集中し物事に取り組む際には、短時間(1〜2時間)で1つのタスクを行う事が有効だ、と述べている。

 ・自分のパフォーマンスを最大限に引き出そう。

「深部感覚」という、「なんだか嫌な予感だな」など五感ではない感覚を指す言葉がある。
失敗をした状況や成功した状況などを再現するのは難しいが、この深部感覚は人間の感覚に曖昧さがあることを意味している。
しかし、これをある程度コントロールすることで、パフォーマンスの最大化が図れる。

例えば、野球のイチロー選手は試合前にカレーを食べるなど、有名な「ルーチン」を実践している。
これは、成功するパターンやシチュエーションを自分で把握し、ルーチン化しているという事だ。
このルーチンこそ、深部感覚を掴み、パフォーマンスを最大化する方法と言える。

 ・ひらめきを大事にしよう。

ひらめきは、側頭葉のACC(前部帯状皮質)という「おもしろアンテナ回路」が関係している。
面白い事、新しい事を発見するとACCがLPFCへシグナルを送り処理される。
この一連の流れを、ひらめきと表現する事が意味合い的には近い。

そして、この情報伝達はリラックスしている時が一番起こりやすい。

つまりは、リラックスしていないとひらめきが起こらない。
更に、情報伝達が起こらない状況が続くと、ACC(おもしろアンテナ回路)は脳にとって不要な情報と判断してしまう。
これが続けば、脳のアンテナは弱体化してしまうのだ。

 ・マネることの重要性

脳の前頭葉運動視野には、ミラーニューロンという神経細胞がある。
これは、相手を真似るための神経であり、優秀な人や明るい人を見れば、脳は真似ようとし、結果として自分のパフォーマンスも上がっていく事に役立つ。

しかし、逆にいうとネガティブな人だったり、意識が低い人と一緒にいてもミラーニューロンは働いてしまい、やはり真似てしまう。
つまり、ネガティブを発する人とは出来るだけ距離を取った方が良いと言える。

書評

サクサクと読める本でした。
僕は脳については全く知識がないため、興味深く読むことが出来ましたが、著者である茂木さんの経験などに触れることも多く、「◯◯すると脳の△△という領域が活発化する」みたいな、科学的アプローチが欲しいなとも思いました。

また、本書にはセレンディピティ(偶然出会う能力)にも触れているのですが、この様な「脳を正しく使えば奇跡が起こる」といったニュアンスで書かれている所も多いなぁというのが私の印象です。
茂木さんの様な膨大な脳についての知識がある方には、一見するとスピリチュアルな領域に結論づいてしまうのかとも思いますが、ここをもう少し脳の構造からアプローチしてくれたら…
(例えば、偶然と呼ばれるものは脳がどうなっている時に起こるのか、松果体が持つ神秘的なイメージは科学的にはどうなのかなど)

でも、読んでいると茂木さんの元気がもらえそうな本です。
脳について知る機会がありましたら、次はもう少し専門的な物を読んでみたいと思います。

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