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サブスクリプションビジネスを考えてみた

本格的に国内のB2Cのマーケットでも「サブスクリプション」を耳にすることが増えてきた。モノを所有することから、モノを利用することへ価値をシフトしていくこと、OwnershipからUsershipへ。

ある調べでは、57%の人が所有するモノを減らしたいと考えているという数字もあるらしい。
アメリカでコンマリがKonMariとしてブレイクしたが、これもモノを減らしたいという漠然としたところに、日本的な美しさ(という妄想)となんとなくのスピリチュアル感、SNSやNetflixなどとの相性や「SPARK JOY」というキーワードが重なって成功しているのだろうと思う。とはいえ、モノを減らしたい=モノはいらない、という単純なミニマリスト的な発想ではなく、モノは欲しいし持ちたいし使いたいのは変わっていない人が大多数なのだとは思う。

ところで、本当にモノが欲しいのだろうか?
それとも、そこにある課題を解決したいのか?
どちらだろうか。どちらかもしれないし、どちらでもないかもしれないが少しその課題という観点を考えてみた。

サブスクリプションというと新しい発想のようにも聞こえるが、音楽や映画の配信サービスが流行る以前からこの手のビジネスモデルはあったと思う。例えば、賃貸住宅や新聞も広義にはサブスクリプションだと思う。ちゃんと分類していくと、それはサブスクリプションではなくリカーリングビジネスだ、と言われそうだけど、そこの細かい定義は今はちょっと置いておいて。

むしろ、ここでの課題が何かというと、賃貸住宅は「いきなり住宅を購入できる大金を持っていない」、新聞は「毎日、駅で買うのは面倒」あたりではないかと思っている。

サブスクリプションビジネスでよく言われることに「顧客の経験の醸成」「満足度の継続的な提供」「カスタマーエクスペリエンスの最大化」などがあり、その理由は単純に中長期の契約継続が必要であり、かつ大半のサービスが薄利多売なため規模(顧客数)が必要になるためだろう。
「いつでも止めることができる」というのは、新しいサービスを使い始める敷居を低くするためにあるが、それゆえに当然、チャーン率(解約される率)との戦いになる。それを防ぐために「継続的」であったり「価値」「満足度」という単語が並ぶ。

そういったビジネスモデルが本質であると考えたときに、このサービスを選択する消費者の気持ちはどこにあるのだろうか。
「モノを持ちたくない」ではなく、正確には「継続的に維持費がかかるモノやすぐに捨てたり手放せられないモノを所有したくない」あたりではないかと思う。モノ自体は必ずそこにあるのだから、実は減らない。減らしたいのは維持費とか手間だったりする。

人はどのような理由でサブスクリプションを選びたくなるのかな、と考えると、そもそもの前提があるはず。
例えば、
・一時的な大金がないけど、必要な欲しいモノがある
・なんだかんだと定期的に購入しているモノである
・面倒なことが嫌だ

こういったことが消費者心理にはきっとあって、そこに+αで消費価値の醸成がくるのではないかと思う。だから先に消費価値の醸成から入ったサービスは魅力のないサービスになっているような気がする。
そのサービスを考え、世に送り出した人たちが、自分なら絶対に使う!というかβ時点で自腹で契約している!というレベルが当たり前でないと売れるわけもないのではないかと。

例えば、賃貸住宅をサブスクリプションとして考えると、一時的な大金という前提条件(課題)をクリアしている。
ここに、維持にかかるあれこれ(絶対に消費するし頻繁に買うもので持って帰るのが面倒なもの(ティッシュペーパーとかトイレットペーパーとか))がセットになっていたり、そのビジネスを展開している会社が多くの住宅を保有しており、年1回はサービス料金内で引っ越し可能(引っ越し代も含まれる)とかなら、価値の醸成がついてくることになる。

なんかそういう、そこまでやるのか!!!っていう一線を越えないと魅力にはならないのじゃないかな、と。

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ところで、今月あたりから頻繁に露出を始めたトヨタの自動車サブスクリプション「KINTO」があるが、そもそもサブスクリプションか?っていうのが気になっている。頭金もいらないし、維持費(メンテナンスや自動車税、保険)も込み込み。とすると、先に書いた前提条件を満たしているように思う。「KINTO SELECT」という3年間6種類のレクサスブランドを乗り継げるというのは、まさに顧客経験の価値向上に思う。

ところが、これが一般用の「KINTO ONE」というサービスにしてみたら、先の頭金や維持費込みで、3年間1台のトヨタ車に乗れるというサービスになる。

で、この「3年間」が気になって仕方ない。途中でやめたくなったらいつでもやめられる、というサブスクリプションらしさがないのである。中途解約には、所定の精算金(6ヶ月ごとの契約満了までの残リース料および早期終了に伴う追加未精算金)の支払いが必要と、リース契約条項に書いているとのこと。自ら「リース」と言っているし・・・。月額固定料金支払いでいくつかの諸費用が含まれているだけなんだけど、それをサブスクリプションと言っているだけではないのかな、と。

ちなみに、「KINTO ONE」で一番人気のプリウスにカーナビとETCを付けたら月53,860円で、3年間で約200万となる。もちろん維持費という点では駐車場代とガソリン代は別途必要だから、まぁ、そこそこ維持費ついてくるよね。近所のコインパーキングも占有できます&そこにある充電器で充電し放題、とかなら納得感に近付くけどね。

このビジネスモデルの難しさを感じてやまないのはこういうところなんだろうな。トヨタほどの企業でこうなのだから、本当に相当気合いれて戦略練って、マーケティングして、っていうのを繰り返して、それでいて他社より先にやらないといけない、って考えると、今検討している企業はそうとうの本気さが求められると思うんだけど、果たしてそこまで本気になっているかな?と思わずにはいられない。一線超える覚悟ってなかなかじゃないかな。。。


さてと。

ここまで書いて、我々テキマカは文具の世界を楽しんでいる身なので、ではサブスクリプションと文具の関係を考えてみたいなと思うのだけど、どうにも長くなってしまったので、そのあたりはまた次の機会に書いてみようかなーと。

つづく!

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