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【25,000字】SaaSマーケティングの全体像を徹底解説

浅木レイ

このnoteは、約25,000字に渡って、SaaSマーケティングを網羅的に解説するものである。

僕は現在あるBtoB SaaSの事業会社でマーケティング責任者をしている。副業を含めるとこれまで約10社のSaaSをマーケティングで支援してきた。細かい情報交換をしたり、アドバイスをしたり、といった会社まで含めると、100近くのSaaSに触れていると思う。

そんな僕がこのnoteを書こうと思ったきっかけは、やはりSaaSのマーケをもっと盛り上げたい!という思いだ。SaaSのマーケティングをやってると、人手不足を常に感じる。「うちはマーケティング人材には困っていません」というSaaS企業を見たことがない(苦笑)。これを読んでいる方も大抵SaaSの方だと思われるが、おそらくそうだろう。

SaaSマーケをやりたいけど、どうやればいいかわからない。もっとうまくやりたいけど、どうやればいいんだ。こういう人はおそらくたくさんいるはずだ。このnoteがそういった方々の助けになることを願っている。

プロローグ このnoteを読まなくても良い人たち

今からいくつか質問をする。これらの質問に、ズバッと適切な回答ができる人なのであれば、このnoteを読んでいただく必要はない。おそらく優秀なSaaSマーケターの方だろう。

Q1. SaaSマーケティングの役割は何ですか?

大上段も大上段の話だ。「契約につながる質の高いリードを獲得することです!」と自信をもって答えた人たちは、ぜひ本noteを読んでほしい。

リード数を追うことがSaaSマーケティングだと勘違いしてはいけない。

Q2. あなたのプロダクトの価値は何ですか?そしてその価値を感じてくれるユーザーには、どのような共通属性がありますか?

めちゃくちゃ当たり前の話だ。しかし意外と答えられない。ちょっと考えないと答えられなかったりチームで意思疎通できていなかったり。これに即答するのはマーケターの義務である。答えられなかったら本noteを読んでおくべきだ。

Q3. あなたのプロダクトのLTVはいくらですか?そして許容できる1リードあたりのCPAは?

自分で計算できるかどうかでマーケターとしてのレベルが一段上がる。売上と利益を気にするSaaSマーケターになろう。答えられないならぜひ最後まで読んでほしい。

Q4. 顕在層の刈り取り施策の勢いが鈍化してきました。リード数を確保するために次にやるべきことは?

「潜在層向けの認知施策です!」と答えた方。おそらくそれなりにマーケに明るい方だろう。しかし答えはNOだ。

Q5. 事例発信への協力をいつ誰を対象に行っている?

SaaSマーケとして最重要コンテンツになるのがおそらく事例だろう。かなり各論だが、この事例コンテンツをどう作るかは丁寧に解説しているので、作成オペレーションが整えっていない方は参考にしてほしい。ちなみに、「成功基準を設けてサクセスした企業に打診してます」は僕的には不正解なのでそういう方にもしっかり最後まで読んでほしい。

以上5問だ。すべて答えられただろうか。答えられた方はブラウザバックしていただいて構わない。

答えられなかった項目のある方、全くピンとこなかった方、一応答えられるけどイマイチ自身のない方、ぜひ続きを読んでほしい。

1.  SaaSマーケティングとは何かを理解する

SaaSマーケティングとは、営業につながる見込み顧客(=リード)を獲得することではない、ということを先で述べた。

そもそもこういった誤解が生じている理由はSaaSにおけるThe Modelをベースにマーケティングを把握しているからだと思う。

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引用:営業効率を最大化する「The Model」(ザ・モデル)の概念と実践

The ModelはSaaSに最適化された営業プロセスモデルで、実際にSalesforceで取り入れられた分業体制だ。KPIをベースに組織を分け、

・マーケティングは見込み顧客数(≒リード数)
・インサイドセールスは案件数(≒商談数)
・セールスは受注数
・CSは継続数

を追うというもの。各組織のKPIがシャープにして分業をすすめることで、各KPIのパフォーマンス最大化が見込めるというモデルだ。SaaS特にSMBをターゲットの中心に据えている企業においては、このモデルをベースに組織設計している企業が圧倒的に多い。

僕はこのThe Model自体を否定するつもりはない。すばらしいモデルだと思う。しかしこれは分業プロセスのリード獲得という役割にマーケティングという名前を当て込んだに過ぎないので、この役割がマーケティングにとって必要十分かと言われると決してそうではない。マーケティングとはもっと広い概念だ。

ではそもそもマーケティングとは何だろうか。マーケターとしては王道すぎる引用だが、株式会社刀の代表をされている元USJの森岡さんのこちらの本に書かれている内容をそのまま引用する。

「商品を売る」のは営業の仕事、「商品を売れるようにする」のがマーケティングの仕事。

そして、

放っておいても売れるということは、自社商品が顧客に「選ばれる必然(選ばれて当たり前の理由)」を作れているということ。

という部分だ。

ZOOMやSlackのようにいわゆるProduct-Led Growth的な広がりをしているツールもあるが、まだ日本の大抵の製品はSales-Led Growthが主流だ。その中で営業そのものを不要にすること自体はまだまだ難しいことだと思うが、その営業の労力を極限まで不要にすることがマーケの役割とも言える。

自社商品が顧客に選ばれる必然性を作り、売れる状態を作ること。それがマーケティングだ。

マーケティングとは商売そのものと言われることもある。ということは、SaaSマーケティングはSaaSビジネスそのものだ。であればそのKPIはリード数ではない。SaaSがしっかり売れているかどうかを皆さんはどういうKPIで見ているだろうか。ピンと来ない方は必ずここでインプットしてほしい。

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最上段の指標は当然売上だ。SaaSはサブスクリプションモデルを採用しているため、売上の大半はストック売上(MRR)でできている。月額の積み上げだ。

初期費用やコンサル費用など、スポットで発生するものもあるかもしれないが、今回のメインテーマはSaaSなので、上側のストック売上に注目しよう。

ストック売上は、その右5つの要素によって決まる。

まずは元々先月まであった既存契約のMRRだ。先月1,000万円のMRRが積み上がっていたのであれば、SaaSにおいて基本的にこの1,000万円は今月も同様に積み上がっている継続的な収益だ。

そこに今月営業が新規で受注獲得できたMRRが乗っかる。同様にプランのアップセルがあったり、追加購入があったりなどのエキスパンションをCSが獲得するケースもあるだろう。

アップセルがあるなら当然ダウンセルもある。コントラクションMRRというのはそのダウンセル部分を指す。

最後にチャーンだ。SaaSにおいて超重要指標であるチャーンレートだが、解約MRRもここにマイナス要素として加わる

先月までの契約に、新規とアップセルをどれだけ足したか。そしてチャーンとダウンセルをどこまで食い止めたか。これがSaaSにおける基本的な売上の構成であり、純増のMRRがどれだけ毎月あるかがSaaS企業の成長曲線となる。

ではさらに「新規獲得MRR」を深掘りしてみよう。

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毎月いくら新規でMRRを獲得できたかは、受注数×受注単価で決まる。この受注数は商談数×受注率で決まるわけだし、商談数はリード数×商談化率で決まる。さらに言うとリード数は大きくオンライン/オフラインに分類できたり、インバウンド/アウトバウンドに分類することも可能だ。オンライン経由のリード数はサイト訪問数×CVR・・・オフライン経由だとイベント出展数×1イベントあたりの名刺獲得数・・・などとさらに深ぼることも可能だ。

一方「エキスパンションMRR」「コントラクションMRR」「チャーンMRR」もさらに深掘りしていくことができるはずだ。ただ新規獲得と違ってこちらは簡単ではない。更新やアップセルの中間指標が何か、という話であるから、あなたの企業のCS活動を指標化してKPIにする必要がある。ここについては話し始めると長くなるので一旦は新規を深掘りした時点で止めておく。

あなたはこれらのSaaSビジネスにおける重要KPIを、どこまで捕捉できているだろうか。あなたのプロダクトのリードの商談化率は?受注率は?平均単価は?チャーンレートは?

即答できるのであれば、あなたはきっと優秀なマーケターだ。しかしおそらく即答できない人の方が多いだろう。それはあなたが目先のリード獲得数を追うことだけに奔走しすぎているからだ。

マーケティングとはSaaSビジネスそのものなのだ。あなたがやるべきことは、これらのKPIの現状を常に把握できる環境を作り、今自社の成長曲線の傾きを上げるためには何が最も重要なのかを見極めることだ。

もちろんリード獲得はこのKPIの一因なのだから、リード数が増えれば売上も増えていくはずだ。それに商談率や受注率はISや営業の力で何とかなる部分でもあるわけだから、彼らには手に負えないリード数向上をマーケの目先の活動として掲げるのは別に間違ったものではない。

一方ただ単純にリード数だけ増えても、それらが全くあなたのプロダクトのターゲットに合致しないのであれば当然商談率以降が落ちてリード数に売上がついてこないし、インサイドセールスや営業の力不足や人員不足など、様々な要因でリード数を増やしても売上に直結しないケースは多々ある。

そこで「マーケはリード十分とってるから、IS・営業なんとかしてよね!」と考えるのか、「せっかくリードを増やしたのに売りにつながってない…どこがボトルネックなんだ、、どうやって解決しよう」と考えるかがマーケターとしての格の違いであろう。常に広い視点で見ることが必要だ。

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