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ぼくはただの高利貸しおじさんです。

街金本を出版してから、いくつかのメディア様の取材を受ける機会をいただきました。世の中の裏側で生きてきたぼくにとって恐怖でしかありませんでしたが、販売部数を伸ばすために身体を張りました。

結果、同業者から「本買ったよー!」とか「Twitter、フォローしてるよ。」とか、たくさんの応援?メッセージをいただき、これまた光栄です。

「うちの社名消してくれる?」と同業者に電話で直接言われるの、辛さしかありません…。

地上波テレビ局から出演オファーをいただいたのに、「コンプライアンス部から出演ストップ出ちゃいまして。」と無かったことにされたり、池袋のBBAスナックのママが常連に街金本を配ったら、「こいつに会わせろ。」と反社おじさんが言いだしてるので、しばらく店来ちゃダメよと警告されたりとか、まあ色々ありました。

そんな中、TwitterDMで取材申し込みが届いて、回答したにも関わらず放置されているなんてのもあります。頑張って返事したのに、ですよ。

ということで、放置された取材を自分で発信してしまいます。どうです、この恥ずかしい行為。

あとですね、街金マンガ、おかげさまで第6話まで進んでおります。

https://kkbestsellers.net/n/n4f320d56c503

みんな、読んでね。


ーとある日の取材ー(20代若者ターゲットの媒体)


―街金について。よく知らないひともいると思うので、まず街金とはどのような金融業なのか教えていただけますでしょうか。

A.街金というと、怖い高利貸しをイメージする人が多いと思いますが、実際は法律に定められた金利の範囲でお金を貸す貸金業者なので、いろんな意味でギリギリセーフです。

―テツクルさんは、普段どんな業務をしていますか?

A.お金を借りにきた人との面談、多重債務者を紹介してくれるブローカーとの商談、取り立て、貸すお金の調達が主な仕事です。

―街金の世界に入ったきっかけを教えてください。

A.元々、ぼくも多重債務者でして、よくある「働いて返せやっ!」と当時の債権者に言われて、貸金の業界に入りました。最初に入った会社はヤミ金でした。ぼくも当時はヤミ金と街金の区別ができてませんでした。

―現在は独立をされています。独立されるまでの経緯を教えてください。

A.ヤミ金から街金に転職して、街金時代の上司が独立するときにぼくを引き抜いてくれると思ってたのですが、裏切られたので、恨みつらみを晴らすために独立してやりました。今となっては雇われが良かったと思ってます。

―仕事で、キツさや辛さを感じたことはありませんでしたか?(闇金ウシジマくんを見ているとかなり辛そうな印象があります…)

A.いまは取り立てできる時間帯に制限があるので、身体はすごく楽になりました。昔は音信不通になった債務者を見つけるために車中泊したり、非常階段で何時間も債務者を待ったりすることもありました。

―仕事での辛さやキツさはどう乗り越えている?

A.昔は浴びるほど呑んで忘れるみたいなことをしていましたが、いまは翌日の胃もたれがひどいので、美味しいご飯を食べて、国産レモンで作ったレモンサワーを軽く飲んで、あとはツイッターをしています。

―テツクルさんのもとにお金を借りに来る人はどんな人が多い?性格的、外見的に共通する特徴は何かありますか?

A.基本的にだらしなくていい加減な性格の人が多いです。そんな性格だから債務のコントロールができなくなるんだと思います。外見はそれぞれです、汚らしいひともいますし、やたらお金をかけている人もいます。債務者の着けた立派な時計がコピー品だったりするとぐったりします。

―最近、著書「ぼく、街金やってます: 悲しくもおかしい多重債務者の現実」を出版され、大人気を博しました。どんな思いでこの本を執筆された?どんなことを感じて欲しいと思っていますか?

A.まず、街金とヤミ金は違うんだよということを周知させたかったということがあります。街金は身近な存在で、高利貸しというだけじゃなくて利用の仕方次第でいいパートナーになることも可能だよということも知ってもらいたかったです。

あと、多重債務者の特徴といいますか、いままで出会ったひとたちの共通項を挙げて該当するものがあれば、あなたも多重債務に陥るリスクを抱えてますと、注意喚起もあります。
内容が薄い、みたいなレビューも散見しましたが、皆さんと街金の距離感をかんがえるとアレでよかったと思っています。蛆虫とかゴミ野郎とも書かれました。メンタルが鍛えられました。

―街金をやっていて良かったなと思う瞬間はありますか?(もしあれば具体的な場面もお教えください)

A.基本的に悪いことしかありません。ごく稀に期日通りに弁済してくれた人が次々お金を借りてくれる人を紹介してくれて、債権者債務者の関係ですが知り合えてよかったなと思うことはあります。ただその人、裏で高額手数料を取ってましたけど。

―どんな幼少期でしたか?

A.乳児の頃ですが、仏壇のロウソクが倒れたのを泣いて大人に知らせたらしく、神童として育てられました。園児の頃、石を投げて近所の窓ガラスを割ってしまったのに、投球フォームがよかったと褒められました。

相当甘やかされて育った、ということです。

―小・中・高校生…とどんな学生時代を送ってきましたか?

A.ミーハーでお金が大好きな学生時代でした。
中学生のとき後楽園球場が取り壊される前の感謝イベントに参加して、ボールボーイのお兄さんたちから巨人の選手のサインボールや色紙を大量に譲ってもらったんです。それを同級生たちに売却したら、サインの主が実はボールボーイだったことが判明して返金騒ぎを起こされたことがあります。
高校生になると、ジーンズのデッドストックブームに乗って地元の大型ジーンズ屋の売れ残りジーンズの山をひっくり返して赤耳とか見つけ出しては同級生に転売してました。
高校の体育倉庫で見つけたボロボロのAIR JORDANⅠも売れました。誰のものだったのかは知りません。稼いだお金でトニーラマのウエスタンブーツとか買ってました。時代です。

―20代の頃について改めて詳しくお伺いさせてください。(20代での起業から多重債務者に転落し、借金のカタに闇金の「奴隷」になった話、債権回収で鉢合わせたヤクザに埋められそうになったなど、壮絶な話が著書の中で書かれていましたが…)

A.東京に憧れて、早く大人になりたいと思ってました。望んでないのに起業しなければならない状況に陥って、20代前半でそこそこ稼げてた時期があったので、大人たちにチヤホヤされて勘違いしてしまいました。人生ちょろいと思っていました。
そこから猛烈な勢いで債務が増えて多重債務者になり、「働いて返せやっ!」からはじまった街金人生ですが、いまとなってはしかたありませんので、このまま寿命を迎えようと思っています。

―改めて振り返ってみると、これまでの人生はどんな人生でしたか?

A.できれば幼稚舎から人生をやり直したいです。それくらいのひどい人生です。

―「テツクル」という名前はどうして名付けたのでしょうか?

A.韓国語で「書き込む」ことをテックルと言うんですが、それが語源です。(嘘

―人生訓のようなもの…、大事にしている考え方などがありましたらお教えください。

A.多重債務者を信じるな、ということくらいですね。みんな作り込んだ話を持ってお金を借りに来ます。入金予定のエビデンスとかパッと見、信用してしまうものを用意して来ます。でも全部嘘だったりするんですよね。
何度も騙されました。いまでは全く信用してません。

逆に正直に言ってもらえると、「しょうがねえな」とノリでお手伝いしてしまうことはあります。

―今後のご自身の展望やこんなことをしたい等がありましたらお教えください。

A.街金は高利貸しですが、ソーシャルレンディングの会社などと違って融資するために集めたお金の回収に命を懸けなければなりません。デフォルトしちゃいましたすいません、では済まないし、そこがプライドというか唯一生き残るために頑張らなきゃいけないところなんです。
お金の集め方や融資先を拡大してデフォルト率が上がらないように、みたいなのは向いてないと思いました。いままで通り、回収率100%を維持するやり方の方が気が楽なので。

―今、「キャリアをどうするか、どう考えるか」とよく言われています。テツクルさんは「キャリア」について考えたことなどはありますか?

A.街金からノンバンクへ転職したいと相談したことがあるんですけど、やんわり断られてからぼくは街金で生きていくと覚悟を決めました。

いまは、いつか金主になることを夢見ているくらいです。

―お金とはテツクルさんにとってどんな存在?

A.お金の価値観って人それぞれだと思うんです。たくさん稼いで美味しいもの食べていい車乗っていい腕時計してアイドルとかモデルとかと結婚することも夢があります。稼ぐプロセスに生きがいを感じる人もいます。
ぼくの場合、融資するための自己資金を増やすことに生きがいを感じています。

いまは融資するお金は投資家などから調達してるんです。年利10パーセントで借りてきて年利15パーセントで貸してるんですが、みなさんが思うほど利益がでるわけじゃありません。コツコツ稼いで、融資残高を増やすこと。投資家の皆さんの力を借りずとも融資できる現金をどれだけ集められるか。地道です。

―幸せとはテツクルさんにとってどんな存在?

A.しょうもない日常をツイートしたら100ふぁぼついたとか、そんなことが幸せな日々を送っています…。

―「貸金」という職業について、他人から変な誤解を受けることはありませんか?それに対して何か思われることなどはありますでしょうか?

A.親にも親戚にも近所の人にも、職業を偽ってます。皆には不動産屋で働いてると言ってます。プライベートで知り合った人が不動産屋で、「どちらにお勤め?」と訊かれて適当な社名答えたりするじゃないですか。「うち取引ありますよ!○○さんわかります?」とか言われてもう泥沼です。

―著書の中で、「お金を守る知識がないと騙し取られるだけ」とおっしゃられていました。これからの時代を生きていく中で、金融の知識は必要だと思われますか?(諸外国に比べ、日本国民の金融リテラシーは低いとされています。その辺りについていかが思われるでしょうか?)

A.とんでもない利回りと元本保証で騙される個人投資家って後を絶たないじゃないですか。所謂、情弱ビジネスって、経験も知識も豊富だと騙されないと思うんですよね。また弁護士先生アカウントにフルボッコにされるかもしれませんが、そんな詐欺商材に騙さされても自己責任だと思うんですよ。
詐欺商材で騙された人のリストを使って救済しますみたいな電話して二次被害に遭ってる投資家もいるんです。インターネットで検索すればわかる情報を見落として、私は被害者です!と言っても、あなたが載ってる名簿のタイトルが「投資カモリスト」だったりするんです。せめて検索くらいはしましょうよ、と思います。

-20代の若者にメッセージやアドバイスがあれば、お願いいたします。

A.ぼくが立派な人生を送ってるわけではないのに、未来輝く若者たちにアドバイスなんておこがましいのですが…。
生き方は人それぞれです。無理はしても無茶はしない。頑張りすぎない。

いまはあちこちに気づかないうちにお金を借りてしまっていることがあります。携帯電話端末の分割払いや通販の後払い、ぜんぶあなたの与信に直結してきます。簡単に買い物できる時代です、それ本当に必要なものですか?クレジットカードの引き落としが苦しくなり始めた、それ多重債務者の始まりですから。



おしまい。


ほんとにぼくでいいんですか?