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こどもてつがく 対話 小学4年〜6年生

2021年07月11日 丸亀市飯山総合学習センターにて

小学校の4年生から6年生を対象にした哲学対話を行いました。
参加者は、3名でした。

小学校の高学年になってくると、皆さん、習い事が多く大変忙しいようです。
哲学対話も、いつか、習字教室やサッカー、ピアノ、算盤教室と同じくらい、学びの課外学習として、認知されるようになればと願っています。

参加者のみなさんには、名札に呼ばれたい名前を書いてもらいます。

ファシリテーターの私も書いてみました。
低学年の子どもたちには「あやちゃん」と呼んでもらうことにしたのですが、高学年の皆さんには、「あやのさん」という名札にしてみました。

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参加者のみなさんには、哲学対話について簡単に説明した後、次のように伝えます。

哲学対話は、みなさんと一緒に考えたり、発見したり、疑問を持つための時間なのです。ファシリテーターの私一人だけでは、成り立たない時間なのです。
そういう意味では、この時間が楽しい時間になるよう、そして一緒に考えを深められるよう、参加された皆さんの協力が不可欠なのです。

つまり、主役は、参加者です!


さあ哲学対話をはじめよう!

さて、今回は、てつがく絵カードを使いました。
あらかじめ、用意しておいたカードの中から、トランプのカードを一枚選ぶかのような要領で、参加者に1枚を選んでもらいます。
何がテーマとして出てくるのかは、選んだ後のお楽しみです。


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この日の哲学対話のテーマは【誰かと一緒と一人でと、どちらがいい?】に決まりました。テーマに関連する他のイラスト付きのカードも並べます。

【誰かと一緒と、一人でと、どちらがいい?】

早速、手元のカードを参考に次のような意見が出ました。

「絵を描くのは、みんなで描いた方が楽しい」

「遊ぶのも、みんなと一緒の方が楽しい」

「ゲームをするのも、友達とした方が楽しい」

「りんごを食べるのも、みんなで食べたほうがいい」

「学校で何かを学ぶのも、みんながいた方が、いろんな意見も聞けるからいいと思う」

これに対して、「勉強の場合、復習とかは一人でやる。」という意見もありました。

最初は、色々なことが、「みんなで一緒にやった方が、楽しくて良い。」という意見が多かったように思います。

そこで、質問せずにはいられません。

「一人の方がいい時はないのかな?」

すると、参加者の一人が次のような意見を出してくれました。

「一人の時は、集中する時。真面目にしたり、ケジメやメリハリ。大勢の時は、楽しくする時。」

なるほどね!!確かに、一人だと集中できやすそうな気がするし、逆に大勢人がいると何だか賑やかで集中できないようなイメージがありそう!

けれども、疑問は更に深まってきました。

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【集中すること】

「集中する」のは、一人の時だけなのかな?
みんなと楽しく遊んでいるときに、「みんなで一緒に遊びに集中している」ということはないのかな?

楽しいのは、みんなと一緒にいる時だけ? 一人では、楽しめないのかな?

これらの問いかけに対して、先ほどまでとは違う意見が出てきました。

「一人でも、みんなと一緒でも、楽しくできる。」

家族で釣りによく行くという参加者にも質問してみました。
家族で一緒に釣りに行っていても、釣りの最中は集中してる?

すると、「集中してる。」という返答が返ってきました。

うーん。これは一体どういうことだろう。

他の誰かと一緒にいても、集中することができるなら、みんなと同時に集中しているのかな?

それとも、みんなと一緒にはいるけれど、あくまで一人で集中しているのかな?

みんなと一緒に居ながら、同時に一人であることってあるのかな?

【寝ること】

「『寝ること』は、寝ようと集中したら、全然、寝れない。」

そんな発言も受けつつ、問いかけてみます。

「寝ること」はどう?誰かと一緒と、一人で寝るのとどっちが良い?

「家にいる時は、一人で寝る。お泊まりとか修学旅行の時とかは、みんなと一緒に寝たい。」

でも、眠りについてしまったら、自分がどこで寝ているのか、誰が同じ空間にいるのか、関係あるのかなぁ・・・?だって、夢の中でまで、みんなと一緒だとは限らないんじゃないかな?

するとこんな意見がありました。

「みんなと一緒に寝る時は、なかなか寝たくない。一緒に過ごしていたいから。」

うーん・・・。すると、「寝ること」については、みんながいると、逆に寝たくなくなっちゃうということのようです。
「寝ること」それ自体を考えると、お友達と一緒にいることが楽しくて、むしろ「寝ること」を邪魔してしまうとも言えそうです。

これまでの話では、「みんなと一緒」なのは、基本的には、「楽しいことだ」という意見です。

次のような疑問も参加者に伝えます。

ところで、家では一人で寝るということだけど、それって本当に一人なのかな?

誰もいない家の中で、一人ぼっちで寝ることはできる?

もしかして、一人で寝ているのだけれど、同じ家の中には、別の部屋に家族が居るから、安心して眠ることができるのかな?もしも、そうだとしたら、一人で寝てるけど、同じ家の中に「みんなと一緒にいる」とも言えるのかもしれない!?


【みんなと一緒とは?一人とは?】

最初に、「絵はみんなで書いた方が楽しい」って意見があったけれど、絵は一人描いて、一人で楽しむこともできるのかな?

すると、こんなハッとする意見を貰いました。

「みんなで絵を描く時間は、みんなで一緒に絵を書いているけれど、好きな絵を書いて良いときには、みんなそれぞれ違う絵を書いてる!『絵で、私はこれが好きです!』って自分のことを伝える。自分を表現するものだと思う。」

「ツイッターのアイコンとか、バナーの絵も、自分がどういう人かをみんなに伝えている。」

絵を描く時間を、みんなで一緒に過ごして、みんなで絵を描くところまでは一緒にしているのだけれど、同時に、私という「一人」が自分の絵を書いて、自分を表現しているのかな?

ツイッターのアイコンやバナーの絵も、自分を表現しているけれども、それには、伝える相手の存在が必要?

描かれる絵は、一人一人違っていて、そして、みんなバラバラの絵が自分を表現しているということになれば、それは、一人の作業でもあるのでしょうか。

「みんな一緒」にいて、同時に「みんなそれぞれ一人」なのかな?

やっぱり、どうしても気になる疑問、それは、「みんなと一緒に居ながら、同時に一人だ」ということがあるのかどうかです。

みんなと一緒にいるけれど、それぞれ一人で集中したり、それぞれ一人で自分を表現してる時の、「一人」のありかたって、一体どういうものなんだろう?

これには、参加者全員が黙ってしまい、しばらく沈黙が続きます。

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ファシリテーターとしても、参加者のみなさんと一緒に考え込んでしまいました。

そもそも「みんなと一緒」や「一人」ってどういうことなのか、分からなくなってきてしまったのです。

【自分を表現する】

さて、少し話題は変わります。

途中で、みなさんに、用紙に疑問を書いてもらっていたのですが、そのなかに次のようなものがありました。

「絵を描くのは、みんないないとできないのだろうか?」

そこで、この問いを書いた本人に、どうしてこのような疑問を書いたのか尋ねてみると次のような返答が帰ってきました。


「絵を描くとき、人に見られてああだこうだ言われたくないから、一人で描きたい人もいるかもしれない。」

すると、他の参加者も、何か思いついたようです。

「一人で描いていても、自分を表現していて、自分で自分を発見している。」

なるほど!!自分のことを伝える相手は、他者だけではなく、自分自身に伝えるっていうことがあるのかもしれない。


今日の振り返り

哲学対話の時間を終えて、参加者の皆さんには、振り返って、考えたことや、疑問などを書いてもらいます。

しばらく、一人ずつが用紙に向かう沈黙の時間。

ところで、対話の最中に、こんな意見がありました。

ツイッターのアイコンやバナーを、依頼して書いてくれる絵師さんが居るそうです。絵師さんによってイラストは様々。まさに、それぞれの絵師さんが自分を表現しているということです。気に入った絵師さんに、自分のツイッターのアイコンやバナーのイラストを書いてもらうことを依頼することができるそうです。

参加者が、鉛筆を握り、用紙に「振り返り」を書く時間、ふと、政治家の選挙カーのようなものが、自分の名前を声高に叫びながら通り過ぎます。

参加者の一人がハッとしたように「〇〇さん(政治家)も、自分を表現しているのかな?」と言いました。

そうかもしれないし、どうだろう。政治家の人は票を貰わなければ、いけないし・・・。単に自分の表現だけでは、難しいかも。

「政治の中で、通したい法案があって、そのためには、自分のやりたいことじゃないけれども、やらないといけないこともあるかも…。」と、飯山総合学習センターの所長さん。

そんなことを言っていると、また、ほかの参加者が、何かを思いついたようです。

「ツイッターの絵師さんも、依頼を受けてお金を貰わないといけないから・・・。」

なるほど、お金が関わったり、生活が関わったりしたら、純粋に「自分の表現」だけでは、難しいのかな?

それでも、絵師さんの絵に、全く個性が無いなんてことはないだろうから、そこには「自分の表現」もあるだろうけれど・・・。

哲学対話が終わった後も、そんなことを参加者たちと話すことができましたのでした。


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最後におまけ

「問い」の記録

以下は、対話の途中で参加者が出した問いです。

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