COVID-19に対する胸部CTとPCRの診断能についてのmeta-analysisについてのsummary (4月17日)

Radiology誌(放射線科領域で最も権威のある学術誌)から4月17日付けでCOVID-19に対するCTとPCRの診断能を比較したmeta-analysisの報告が出ました。

Diagnostic Performance of CT and Reverse Transcriptase-Polymerase Chain Reaction for Coronavirus Disease 2019: A Meta-Analysis | Radiology

https://pubs.rsna.org/doi/10.1148/radiol.2020201343

韓国からの報告で、筆頭著者のHyungjin Kim先生はEuropean RadiologyのChestのeditorial boardで同誌に2月18日とのかなり早い段階でCOVID-19についてのeditorialを投稿しています。

Key results 

[1] 胸部CTの感度は94%(95%信頼区間: 91-96%)、特異度は37%(95%信頼区間: 26-50%)。PCRの感度は89% (95%信頼区間: 81-94%)
(PCRは偽陽性がstudyデザイン上、検出出来ないので記載なし)

[2] 術前検査確率が低い(<10%)国であれば、PCRの陽性検査的中率(range: 47.3-84.3%)はCT (range: 1.5-8.3%)の10倍近い。この場合、PCRもCTも陰性検査的中率は99.0-99.9%である。
(PCRの得度は99%との想定の下の検出)
(CTは特異度が低いため、術前検査確率により陽性的中率が大きく変化)

著者らの指摘としては、検査前確率が低い対象に対してCTを施行すると、偽陽性確率が高く、不要なPCRテスト、医療コストの増大、医療スタッフの負担、患者の不安の原因となり得るかもしれない、としている。

また、著者らは結構、大事な事をサブ解析しており、無症候例が20%より多数を占める9つの報告でのCT感度は63%(57-69%)。これは報告間のバラツキが少ない (I2=0%で信頼出来そう)としています。
無症候例に対する胸部CTでのCOVID-19除外との臨床検査の適応を考える上で参考になるデータと思います。

論文通り受け取るなら、CTの検査利用は控えめにすべき、となります。

ただ、レベルが低いmanagementとなるかもしれませんが、CT室利用のworkflowがある程度担保されている (感染管理がしっかり出来る) & 画像所見解釈についての臨床医のコンセンサスが取られている (偽陽性症例の頻度についての大まかな臨床的感覚がある)のであれば、COVID-19の偶発例やそれに伴う院内感染の社会的なインパクトを考えて、検査適応の閾値を下げた運用は止むを得ないのではないか?と思っています。

本文

4月3日までの論文をinclude

下記の検索タームを利用
”coronavirus disease,” “novel coronavirus,” “2019-nCoV,” and “SARS-CoV-2.”

Inclusion criteriaは
・ 症例5例以上
・ 初回ないし繰り返しのPCRのreferenceあり
・ 初回PCR and/or CTの感度・特異度が計測されている

・Random-effectsモデルを用いてCTとPCRの感度、CTの特異度を計測
・PPVとNPVを計算
・スタディが行われた地域、高齢者の割合、重症度、合併症の有無、無症候例の割合い、ORF geneがPCRのターゲットとして用いられているか?が結果に影響を出していないかに付いてメタ回帰分析。

・68報告をinclude。
・63の報告で6218症例についてCTの診断能を解析
・63の報告での内、全報告で感度の報告、5つの報告で特異度を解析
・63の報告の内、繰り返しのPCRがreferenceとして用いられているのは21報告。
・19の報告で1502症例について初回PCRの診断能を解析
・14の報告でCTと初回PCRの感度の両者が報告されている。
・12の報告が中国から。

結果

胸部CTの感度は94%(95%信頼区間: 91-96%)、特異度は37%(95%信頼区間: 26-50%)。PCRの感度は89% (95%信頼区間: 81-94%)
但し、I2=90%越えと報告館間のheterogeneityが大きい。

メタ回帰分析では
・中国内・外でbiasなし
・PCRは65歳以下のcohortのみの3つの検討ではPCR感度は75%(95%信頼区間: 62-84%)。高齢者ではPCR感度が悪く、samplingがしにくいからだ、とのdiscussionがあるが、それを裏付けるtableが記載されていない (authorらの誤記?)
・CT感度は、年齢とは無関係。
・症状の重篤さ・合併症の多さ・無症候例の割合と相関
・特に無症候例が20%より大きい9つの報告でのCT感度は63%(57-69%)。これは報告間のバラツキが少ない (I2=0%で信頼出来そう)
・メタ回帰分析後も大凡、報告間のheterogeneityが大きく解釈には留意が必要

CT、PCRともにファンネルプロットを見る限り、publication biasは無さそう

Limitation

少数の報告・後ろ向き研究・CTの特異度が報告されているstudyが少なくmodelにバイアスが載る可能性がある。
症状発現からCTまでのタイミングは診断能に大きく影響を与えるが、これが加味されていない。
(他にはPCR初回陰性で2回目検査されていない症例が存在すると推測されるので、PCRの見かけの感度が高くなると思われるが。)

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