UFCのコロナ感染対策について(更新あり)


コロナウィルス・パンデミックの影響で、ほとんどのメジャースポーツが休止に追い込まれている中、UFCは今週末(日本時間5月10日)、フロリダ州ジャクソンビル市で再開される。

このような時期にスポーツイベントを再開することには、米国でも批判がないわけではない。UFCとしては、感染防止対策をしっかりと行って、感染者を出すことがないような運営が求められるところだ。

具体的にどのような感染防止対策を取るのかについて、UFCでは多くを開示していない。物議の種になりかねないテーマであるため、意図的に情報を伏せてきたという見方もある。しかし、すでに選手や記者も現地入りした現在、防止策がかなり明らかになってきている。そこで、各種報道からファイトウィークの実態をまとめてみる。

検査体制について

ホテルに到着した選手とセコンド、メディア関係者は、まず抗原検査、抗体検査を受ける。2種類の検査を併用することで、偽陰性の確率は2%にまで下がるとされる。抗体検査はすぐに結果が出るが、抗原検査の結果は翌日になるので、それまでは各自が基本的にひとりで過ごす。UFCではフロリダでのトリプルイベント用に、600回分の抗原検査と、600回分の抗体検査を用意している。

2日目以降も、選手とセコンドは、体温計測、問診など、連日診察と検査を受けることが義務づけられる。

ホテルを利用できるのは選手本人とセコンド(3人まで)、UFCのスタッフのみとし、選手の家族や友人、マネージャーは入館が認められない。

試合前日にも選手には2度目の抗原検査が行われた(ジャカレイ・ソウザの陽性はこの時明らかになった)。

食事

UFCパフォーマンスインスティチュート(PI)の提携先であるTrifecta提供の食事、スナック、サプリメントが配布される。決まったスタッフが、決まった時間に選手の部屋の外まで食事を届ける。

トレーニングルーム

各選手に専用のトレーニングルームが与えられる。トレーニングルームには、マットとマットの消毒剤、個人用サウナが設置されている。


医療体制

パフォーマンスインスティチュートの医療スタッフが常時待機し、ホテル1部屋を医療室として借り切っている。

医療室を利用する際には、選手はシャワーを浴び、手を消毒しなければならない。また入室前には体温測定を行わなければならない。

医療室には医師と選手のみが入出できる。選手は40分以上、医療室に在室してはならない。選手が利用した後には、20分間の消毒作業が行われる。

治療中、選手はマスクの着用、医療スタッフはマスクと手袋の着用が義務づけられる。

治療に際し通訳が必要な場合に備え、通訳がFacetimeでリモート対応できるよう待機している。


計量

通常通り金曜日の午前中に行われる。ただし時間内であればいつ計量しても良い通常の形式ではなく、各選手が割り当てられた時間帯に計量を行う。計量時の密を防ぐためである。

試合当日

アリーナには、試合中の選手2名と、ウォームアップ中の次の試合に出場する選手2名、合計4名しか入場しない。

選手はホテルで待機し、1試合が終わる毎に2人ずつ、会場に移動する。

ロッカールーム内の人数は上限6人とされる。

放送

実況はジョン・アニク、解説はジョー・ローガン、ダニエル・コーミエ。3人はいつものように1つのテーブルに並んで座るのではなく、離れて着席する。

試合直後のオクタゴンでの勝利者インタビューも手順が変更される。勝者はケージを降りてから無人のインタビュースペースに行き、そこで消毒済みのヘッドフォンを付けて、放送席にいるローガンのインタビューを受ける。← していませんでした。当日に変更になった模様。

ジョン・アニクは5月10日と14日の大会を担当したあと、2週間待機してから帰宅する予定だ。

レフリーはマスクとゴーグルの着用が検討されている。 ← していませんでした。

アリーナ場内にいる人は、スタッフ、コミッション職員、メディアを含め、それぞれ最低2メートルの距離を取り、N95マスクと手袋の着用を義務づける。人数は上限20人とする。

番組製作スタッフの数は通常は130人程度のところ、80人程度に削減される。

試合ごとに消毒作業を行う案もある。← ある程度していました。


歓声がないため、放送ではマット上の音やパンチやキックの音、セコンドの指示などの音量を強調する

試合後記者会見はオンラインで行われる。

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UFCの感染防止対策は、約25ページにもおよぶマニュアルにまとめられている。フロリダ州アスレティック・コミッションやジャクソンビル市当局は、これらの対策を高く評価しているとされる。UFCでは現在、同じ実施計画をネバダ州にも示しており、ラスベガスのUFC Apexでの開催承認を待っているところだ。

もちろん、批判の声も上がっている。コロラド州立大学免疫学教授のAlan Schenkel氏は、「UFCの検査態勢は弱い。抗体検査は過去に感染していたかどうかを見るもので、現在感染しているかどうかの判断基準にはならない。抗原検査にも偽陰性の可能性がある上、ごく最近に感染した人を判定できない」とし、抗原検査を2度行うことがより望ましいとしている。

UFCプレシデントのデイナ・ホワイトは、「私にも家族はいる。家族には病気になってもらいたくないし、私も死にたくはない。だから何も無謀なことをしようとしているわけではない。慎重に練り上げた計画があるんだ。UFCで働いてくれているドクターやスタッフと、長い時間をかけて不眠不休で考えた。この計画でいけば、これ以上の安全策はないというほどのプランになっている。いまごろ自宅にこもって、プールで泳いだり、子どもと遊んだりしていてもいいんだ。でも私はそうしない。私はどうにかして仕事を進め、社員や選手、その家族の面倒を見ないといけないと思っている。カネはすごくかかっている。非常にかかる。後に続くプロスポーツのモデルになるとは思うが、誰もやりたがらない。本当に高く付く。運用にはものすごくカネがかかる」と語っている。



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