いよいよファイナルマッチ! アントニオ・ホジェリオ・ノゲイラが、16年前のPRIDEでの替え玉事件を語る

キャリアまもなく19年という大ベテラン、日本でもおなじみのアントニオ・ホジェリオ・ノゲイラ(44)が、7月26日UFCファイトアイランド大会でのマウリシオ・ショーグン戦でついに現役を引退する。

時が来たと思う。引退は辛いけれど、やるべき仕事はいろいろあって忙しいから、試合をしない生活にも慣れていくことだろう。ヨガや瞑想をたくさんやって、試合以外のことに集中していきたい。コーチとして後進育成にあたることになっているから、勝ちたいという欲求は、新世代のチャンピオンを育成することで満たそうと思う。

ホジェリオは次の4試合を自身のベストマッチとして挙げている。

・キャリア2年目で実現した桜庭和志戦(PRIDE男祭り2003)
・2007年パンアメリカン競技大会でボクサーとしてメダルを獲得したこと
・2005年PRIDEミドル級グランプリでレジェンドファイターと連戦したこと(ダン・ヘンダーソンに一本勝ち、ショーグンに判定負け)
・2009年のUFCデビュー戦(UFC 106、ルイス・カーニー戦)

”リトル・ノグ”というニックネームが示すように、ホジェリオといえば、PRIDEとUFCでベルトを巻いた偉大な双子の兄、アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラの弟、いわば「じゃない方ファイター」として、ファンの記憶に残る(ちなみにホドリゴは2015年にすでに現役を引退している)。偉大すぎる兄を持つことは、ホジェリオにとってプレッシャーにはならなかったのだろうか。

ミノタウロ(ホドリゴ)と兄弟であることはラッキーだよ。あれくらいのレベルの人がそばにいれば、学ぶことばかりだからね。あんな兄貴がいなかったら、私もここまでやってくることは出来なかっただろう。兄にいい練習を付けてやるためにも、自分のためにも、強くならないといけないと思っていたおかげで、選手として進化できたんだと思う。だから、比べられていやだ、なんてことはないんだよ。グラップリングでは兄貴のようにはできないからこそ、私はなにか別のことで上達しようと思って、ボクシングの練習に力を入れたんだしね。

ところで、米スポーツサイト『The Athletic』でホジェリオは、顔形のよく似た双子の兄弟だからこそ起きた驚きのエピソードを明かしている。

2004年12月31日にさいたまスーパーアリーナで開催された『PRIDE男祭り2004』。メインイベントでは、PRIDE GRANDPRIX 2004決勝戦の再試合兼、PRIDEヘビー級統一王座決定戦、正王者エメリヤーエンコ・ヒョードル対暫定王者アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラが組まれていた。

その日ホジェリオの試合は組まれていなかったが、「当時は私もトップ5くらいの位置にいたから、おそらく今後闘うことになる選手の試合を見ておきたくて」という理由でホジェリオは会場に早めに乗り込んでいた。

他方、この日の主役のホドリゴは、連日の取材攻勢で疲れてしまっていたこともあり、できるだけゆっくり休むことにして、弟から遅れてホテルを出る予定だった。それでも、メインイベントはもちろん、PRIDEのオープニングセレモニーには十分間に合うように会場入りするはずだった。

しかし、その日の東京は豪雪に見舞われた。ホドリゴは電車で移動する予定だったが、移動しようとする頃から、電車や地下鉄の運休が続々と始まる。タクシーを捕まえようとしても、道には車など一台も走っていない。

「動いている電車はないかと、地下鉄の駅から駅へ、ずっと歩き回っていたんだ」とホドリゴは振り返る。「ホジェリオに電話をしたら、大丈夫、いざとなったら僕が代わりに闘ってあげるよ、なんて軽口を叩いていた」

結果的に、この日のメインイベントに登場したのは、紛れもなくホドリゴ本人である。しかしこの日、オープニングセレモニーでフードを深くかぶって登場したのは、実は替え玉のホジェリオだった。

「観客にバレるんじゃないかと不安だったよ」とホジェリオは語っている。「お恥ずかしいことだった。でも一方で、まさかの事態に冷静に対処することはファイターの使命だと自分に言い聞かせてやりきった。今となっては笑い話だが、そのときには全然笑えなかった。胃が痛かったよ」

ホドリゴがマウスピースをくわえて会場に駆け込んできたのは、試合の20分前のことだった。この日のロドリゴは、間に合わないのではないか、という焦りやイライラを抱えたまま、ウォームアップもろくにしないでリングに上ったのだ。

「ヘトヘトだったが、やるしかなかった」とホドリゴは語っている。

「間に合わないんじゃないかと焦っていたせいか、試合では足が動いていなかったね」とセコンドについたホジェリオは言う。「とにかく会場につかなければ、と焦りすぎて、試合そのものには十分に集中出来ていなかった。ストレスでスタミナを使い果たしていたんだ。それでも、試合内容は素晴らしかった。判定負けだったが、打撃でも互角にやりあった」

ホドリゴは、替え玉作戦を発動したのは、このときが初めてではない、と語っている。子供の頃には、英語や国語のテストで、助け合ったことがあった。しかし格闘技関係で替え玉をしたのは、この時1回限りだった。


引退戦の相手、ショーグンとは今回が3戦目、過去2戦はショーグンが2勝している。

「ショーグンとはいつもいい試合ができるね」とホジェリオは語っている。

2015年の試合はファイトオブザ・ナイトを獲得したし、2005年の試合はPRIDEのベストファイトの1つだ。今回は特別な練習をしてきた。リスクを取って、アグレッシブにノックアウトを狙うぞ。ショーグンを驚かせてやるつもりだ。詳しい作戦は話せないが、最終戦はフィニッシュで飾りたいと思っている。


(出所)

Rogerio Nogueira to end 19-year MMA career with Shogun Rua trilogy on ‘Fight Island’

That time ‘Lil Nog’ impersonated ‘Big Nog’ during Pride Shockwave 2004 intros



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