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観光なし、飲み会なし、ご当地グルメなし。仕事オンリーで水戸を楽しんだ話〜2020年の「特別な夏」に寄せて

 西新宿の百合子が言うところの「特別な夏」。皆さんはいかがお過ごしであろうか。虹をモティーフにしたTシャツを見せびらかして、報道カメラのフラッシュを浴びながら、忘我の表情を隠そうとしない百合子。それに対して、今年は里帰りも旅行も外食も控えて、自宅でじっとしている私のような都民も少なくないだろう。

 フェイスブックで自動的にアップされる、何年か前の「その日」の写真。去年は松本、一昨年は長崎、その前は……。毎年この時期は、カミさんとあちこちを旅行しては、現地でのサッカー観戦を楽しんだものである。しかし、今年は「特別な夏」に加えて、われわれJリーグファンは遠征の自粛も求められている。

 そんな中でも、われわれジャーナリストは、県境をまたいでの取材が許されている。もちろん移動には細心の注意を払い、マスクや手洗いを徹底し、大人数での外食はしない。「取材と旅は違う」というのは一貫した私の主張だが、最近は北関東への取材であっても、何やらちょっとした旅気分を味わえるようになった。

 この8月2日と3日の水戸取材も、まさにそんな感じ。ケーズデンキスタジアム水戸には、これまでにも毎年のように訪れているし、めぼしい観光スポットもコンプリートしている。加えて今回は、飲み会やご当地グルメを楽しむ余裕もなかった。にもかかわらず、今回の水戸取材は、非常に充実したものに感じられた。それはなぜか? さっそく、水戸での「特別な夏」を振り返ることにしたい。

宇都宮徹壱ウェブマガジン
https://www.targma.jp/tetsumaga/

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 東京駅から特急ときわに乗車して出発。いつもなら水戸方面の列車は、かなり混んでいるのだが、今回はガラガラ。そう言えば、東京駅を行き交う人々の姿も、まばらであった。すっかり変わってしまった旅の風景。それでも車窓から見る空は、突き抜けて青かった。

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 およそ1時間半で水戸駅に到着。水戸での最初のルーティーンは、北口駅前の水戸黄門像に一礼することだ。昭和の時代には夕方の再放送も含めて、ほぼ途切れることなく続いていた、水戸黄門シリーズ。しかし時代ゆえか、いつの間にか民放から時代劇は消え、BSで命脈を保ったシリーズの黄門役には、武田鉄矢が収まっている。

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 今日のキックオフは19時なので、昼の時間帯はシャトルバスは出ない。1時間に1本のバスに狙いを定め、無事に乗車。これで今日のミッションの半分を達成した気分になる。在来線は、シャトルバスとは違ったコースなので、少しばかりスリリングな気分を味わうことができた。

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 アポイントの5分前にKsスタに到着。今日の対戦相手である、ツエーゲン金沢の車両を発見する。キックオフまで5時間半。しかも今日は超厳戒態勢での開催である。あっけらかんとした青空の下、周囲には人影がほどんど見えない。何やら時間が停止したような、不思議な空気感。

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 今回の取材のアテンドをお願いした広報のAさんと合流。インタビュー取材のために用意された、スタジアムの最上階の部屋に案内される。最初のインタビュイーの到着を待つ間、このポジションから初めてKsスタを俯瞰。こうして見ると、実に美しいスタジアムだ。

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