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「土地とクラブ」にこだわり続ける理由〜『フットボール風土記』著者インタビュー<前篇>

 11月13日、私にとって3年ぶり、単著としては11冊目となる『フットボール風土記 Jクラブが「ある土地」と「ない土地」の物語』が発売された。帯に掲げられた《北は帯広、南は宮崎まで「土地」の匂いが薫る/令和の全国蹴球郷土誌》というコピーが、最も本書の本質を言い表している。

 今月は、OWL Magazineとのコラボレーションということで、本書について初の著者インタビューを掲載していただくこととなった。インタビュアーは大澤あすか編集長。15ある章についてのあすかさんの感想や疑問に、著者である私が答えるという形式で、前後篇でお届けすることにしたい。

第1章 かくも厳しき全国リーグへの道 全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(2016年)

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──2016年の地域CLといえば、現在J3に所属するFC今治が優勝した年ですね。「かくも厳しき」ということですが、どちらのチームにスポットライトを当てて、どのようなドラマをご覧になったのでしょうか?

 FC今治です。前年から今治を取材していたのですが、15年大会は1次ラウンドで敗退。16年大会も1次ラウンドでヴィアティン三重に0−3で完敗し、ワイルドカードで何とか決勝ラウンドに滑り込むことができました。限られた日数の中で、今治はどうやってチームを立て直すことができたのか。チーフメソッドオフィサーとしてベンチ入りしていた、岡田武史さんへのインタビューで、すべてが明らかになります。

第2章 親会社の都合に翻弄されて 三菱水島FC(2017年)

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──岡山というと、まずはファジアーノ岡山をイメージしますが、三菱水島の方が歴史が長いんですよね。そして三菱というと、浦和レッズのイメージが強く、取材された当時ですと、三菱は日産への株式譲渡で揺れていた頃かと思いますが。

 2016年の4月に、三菱自工の燃費試験データの不正操作が明らかになりました。問題が発覚したのは、日産がデータに不整合な部分があると指摘したことがきっかけだったようですね。そうした東京での不祥事が、地方の企業クラブにどのような影響を与えたのか、というのがこの章のテーマです。また、前章の地域CLの「後日談」として読んでも、味わい深いと思います。

第3章 県1部からJリーグに「否」を叫ぶ いわきFC(2017年)

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──いわきFCといえば、「Jリーグへの昇格」に対して慎重な姿勢を貫いているイメージです。クラブとして、どんな考えがあるのでしょうか。それから、東日本大震災の影響とクラブ設立には、関連があるのかについても気になります。

 いわきFCといえば「日本のフィジカルスタンダードを変える」というテーゼで有名になりましたが、もともとは東日本大震災で被災した地域に雇用を生み出すために、株式会社ドームが物流センターを作ったのがきっかけです。そこで選手たちは働きながら肉体改造をして、独自のサッカースタイルを構築していきました。いわきFCは今年、Jリーグ百年構想クラブとなりましたが、この章はJリーグに対してかなり尖っていた時代のレポートです。そのギャップも興味深いでしょうね。

第4章 女川町にJFLクラブがある理由 コバルトーレ女川(2018年)

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──すみません、コバルトーレ女川の名前は存じ上げているものの、情報はほとんど持っていないんですよね。クラブが生まれた背景とか、どんなサッカーをしているのかとか、教えていただけますか?

 無理もないと思います。2018年にJFLに昇格しましたけれど、1シーズンで東北リーグに出戻りになってしまいましたから。この章の注目ポイントは2点。まず、人口6700人の小さな街に全国リーグを戦うクラブが存在していたこと。そして、震災復興の街づくりとクラブの存在が密接にリンクしていること。これを読んだら、きっと女川町を訪れてみたくなると思いますよ。

第5章 ワールドカップとJFLをつなぐもの FC今治(2018年)

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──FC今治といえば先日、岡田代表のインタビュー取材に同行させていただきました。非常に経営者としての視座の高さを感じましたが、この今治の章では、そうしたエピソードも出てくるのでしょうか?

 岡田さんを中心に据えた章ではありますが、あすかさんが期待しているような経営の話は出てきません(笑)。18年の今治はJFL2年目で「絶対昇格!」の状況ではあったんですが、岡田さんは現場からあえて距離を置いていました。その葛藤と試行錯誤の様子が、随所に感じられる章になっています。あと、ホンダロックSCとの最終節の試合で、ロック総統が登場するのも注目です(笑)!

第6章 世界で最も過酷なトーナメント 全国社会人サッカー選手権大会(2018年)

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──今年は中止となってしまった全社ですが、2018年だと松江シティFCが優勝した年ですかね? 以前、松江を訪れた時に、松本に雰囲気が似ていたので、今後がとても楽しみです。ところで全社は、どのあたりが「世界で最も過酷」なんでしょうか?

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