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「一生に一度」のラグビーワールドカップをめぐる旅〜東京、札幌、釜石、静岡、神戸篇〜

「4年に一度じゃない、一生に一度だ!」ということで、先月20日からラグビーワールドカップの取材を続けている。フリーランスの写真家・ノンフィクションライターとなってから22年、これまで私は一貫してサッカーの取材を続けてきたことは周知のとおり。その兄弟スポーツであるラグビーに関しては、かすかな関心こそあったものの、ずっと不幸なすれ違いを繰り返してきた。

「流行り物に手を出した」という指摘は当たらない。なぜなら私が今大会の取材申請をしたのは、今年の4月のこと。あの当時、今大会がこれほど盛り上がることになるとは、誰も予想できなかったはずだ。ならば、なぜ国内サッカーが佳境を迎えるこの時期に、ラグビーのワールドカップを取材することを思い立ったのか。それについては、すでに私のウェブマガジンにたびたび書いてきたことなので、ここでは割愛する。

 今月は2回にわたり、ラグビーワールドカップ取材をめぐる旅について、現地で撮影した写真とともに振り返ることにしたい。これをご覧いただければ、なぜ私が「不幸なすれ違いを繰り返してきた」ラグビーの祭典を追いかけることになったのか、自ずとご理解いただけるだろう。なお大会期間中は、スポーツナビにて『サッカー脳で愉しむラグビーW杯』を連載しているので、こちらもご覧いただければ幸いである。

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 ラグビーワールドカップ日本大会2019が開幕したのは9月20日。当初は新国立競技場でオープニングゲームが行われることになっていたのが、いろいろあって味の素スタジアムあらため東京スタジアムが使用されることに。最寄り駅となる京王線の飛田給駅は、ご覧のとおりすっかりラグビーモードである。

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 飛田給からスタジアムまでの通い慣れた道も、ラグビーワールドカップとなるとずいぶんと雰囲気が違ってくる。まず、こんなに多くの赤白ボーダーの人々を見るのが初めて。そして、この日の対戦相手であるロシアをはじめ、さまざまな国からやって来たラグビーファンの姿も目立つ。

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 開幕セレモニーは、歌舞伎や和太鼓や富士山といった和のテイストに、ラグビーワールドカップの大会史がほどよくブレンドされた演出。いつも見慣れた東京スタジアムが、まるで別世界のようにも感じられた。かくして、アジア初のラグビーワールドカップは華々しく開幕。果たして、どのような大会となるのだろうか。

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 イングランド対トンガが行われる札幌へ移動。すすきのにあるスポーツバーは、どこも海外からのラグビーファンで溢れかえっていた。注目はこの日、横浜で行われたニュージーランド対南アフリカの大一番。オールブラックスのハカが始まると、オーストラリアのファンから軽いブーイングが発せられた。

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 札幌での開催はわずか2試合、しかも9月21日と22日の2日間のみ。それでも北海道は人気スポットということもあり、オーストラリアやイングランドをはじめ、あちこちで観光を愉しむ外国人の姿を目にした。こちらは札幌ビール園に訪れていた、イングランド人のグループ。

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 イングランドのサポーターといえば「裸族」のイメージが強い。けれどもラグビーのワールドカップでは、それまでのイメージと反して皆、お行儀よくジャージを来ている。コスプレしている人もまれで、ようやく見つけたのがこちらの2人組。私がカメラを向けると何人かの追随者が現れ「俺たち、ミッキーマウスみたいだな」と苦笑された。

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 岩手県釜石市で行われる、フィジー対ウルグアイの試合を取材するために前日入り。とはいえ、釜石市内のホテルはどこも埋まっているため、新花巻駅からバスで40分ほど離れた温泉旅館に宿泊する。翌朝の出発時、旅館のスタッフがこんな横断幕を掲げてくれた。新花巻駅行きのバスには、次々と外国人のファンも乗り込んできた。

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 釜石会場までは新花巻や盛岡や一関など、周辺の駅から30分おきにリムジンバスが出ていた。およそ1時間半でスタジアム付近に作られた臨時駐車場に到着。そこから20分ほど歩いて目的地に到着する。いささかハードルの高いアクセスだが、さほどストレスは感じることはなく、むしろボランティアスタッフの笑顔に大いに癒やされた。

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 人口3万5000人の釜石市に新設された、ワールドカップ開催の最低基準を満たす1万6000人収容のスタジアム。これをレガシーとするために、およそ1万席を仮設スタンドとして、大会後は6000人収容にまでダウンサイズされる。今回は4時間半しか現地に滞在できなかったが、いずれまた北のラグビーの街を訪れてみることにしたい。

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 開幕戦でロシアに勝利した日本が、次に対戦するのは世界ランキング2位のアイルランド。会場は小笠山総合運動公園エコパスタジアムである。新幹線が停車する掛川駅周辺は、試合前日から当日にかけてお祭りモード。前夜の飲み屋街は、アイルランドのファンが多数詰めかけて大繁盛の様子だった。

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