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言葉を考える 母語と母国

「私たちはある国に住むのではない。ある国語に住むのだ。祖国とは国語だ。それ以外の何ものでもない」、、、エミール・シオラン

彼は日本の様に国家と国語の境界線が厳密に一致している国ではなく、ドイツ語とマジャール語が公用語であったオーストリア・ハンガリー帝国の中で、ルーマニア語が使われるトランシルバニア地方で生まれ、ルーマニア人の両親に育てられながらも、幼少期にトランシルバニア・ザクセン人の家に下宿してドイツ語を覚えたという。

大学時代はルーマニア語図書館とドイツ語図書館に通い詰めて過ごしたそうだが、1937年、27歳の時に奨学金を受けパリに移住し、以後1995年に84年の人生を終わるまで、残りの人生はパリで過ごしたそうだ。

国家に国籍を与えてもらう必要がないと信じていたシオランはフランス国籍を取らず、あえて無国籍で居続けることを選んだが、彼のアイデンティは、生まれ育った祖国オーストリア・ハンガリー帝国でもなく、生涯の過半を過ごしたパリでもなく、過半の著作物を著したフランス語でも無く、幼少期に母語として習得したルーマニア語だったのだと思う。

一見して国籍が重要・貴重と思われがちだが、高度な精神生活を送る知識人達ににとっては、国籍よりも母語が大切なんだと思う。

翻って我が国では、国語を蔑ろにしていますね。
現在も世話になっている医療機関で、リハビリテーションというカタカナ語を何度も耳にするが、このリハビリテーションは日本語か?

Japanese : リハビリテーション
English: Rehabilitation(/ˌriːəbɪlɪˈteɪʃn/)、、、hはサイレント!
Deutsch: die Rehabilitation
Mandarin: 康复 (Kāngfù)

僕は、言葉を大切にせず、新語の日本語版を作る努力を怠り、安易に外国語の発音を真似たカタカナ語でやり過ごし、いざそのカタカナ語の元になった外国語を言ってみろと言われてもちゃんと言えない日本人が多い。こんな日本人社会は尊敬できないし、今ひとつ好きになれない。

然りとて、「日本語を使わないという条件付きで世界最高の国での永住権を保証してくれる」宝くじに当たっても、日本語を奪われる人生というのは嫌だなぁ。

大切な母語の大切さが理解できず、結果、母語を大切にしない日本の社会構成員に、がっかりして、アーメン!


 

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