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システム開発現場にかんばんボードを導入する

開発作業の流れは目に見えない。目に見えないものをマネジメントすることは難しい。
もしあなたの開発現場に作業の流れを見える化したかんばんボードがないなら、作ってみる価値はきっとある。見える化はマネジメントの第一歩だ。

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このようなタスクの付箋を貼ったボードをチームの作業スペースに置くことで、各タスクの状態や残タスクの量を全員が一目で理解できる。

かんばんボードはマネージャーが管理しやすくなるだけじゃない。むしろチームの自律を促すものだ。

詰まっているタスクがあればチームの誰でも気付くことができるため、解決に向けて自分たちで動ける。

ボードの存在は、会議室でテーブルを挟んで向かい合う「人vs人」の構図ではなく、皆で一つのボードに向かう「問題vs私たち」の構図を作る。その結果、チームとしてどう協力すれば速く仕事を進められるかを話し合うようになる。

かんばんボードは、チームのプロジェクトに対する姿勢とコミュニケーションを変えることができる。

もしあなたがマネージャーで、チームの自律が足りないと感じているのなら、それは見える化が足りていないからかもしれない。

デジタルツールではなく、アナログの付箋とボードを使おう

デジタルツールは情報の冷蔵庫になりやすい。情報の冷蔵庫とは、扉を開けないと情報が見えないということだ。
開けないと見えないだけでなく、家庭における主婦のように、情報の冷蔵庫の中身を把握しているのは一部のメンバーだけという状態になりやすい。

一方アナログのボードであれば、さながら空港のフライトボードのように、自分で情報を探しに行くまでもなくそこにありありと見えているので、次に取るべき行動が決まりやすい。
これがボードをアナログにすべき理由の一つだ。

理由は他にもある、アナログボードは日々進化させて行くことができるということだ。

例えば、Doingのスペースを意図的に小さくすることで貼れる付箋の数を制限(同時進行のタスク数を制限)したり、タスクが何らかの理由で進められない場合に小さな赤い付箋で理由を書いて上から貼るルールを追加したりなど、改善の自由度が高いのはアナログならではだ。

一方デジタルツールはツールの仕様に依存するので、このような改善は制約される。チームの仕事の進め方がツールの仕様に引っ張られてしまう。


最後に、アナログボードは全員がボードの前に立って話し合う習慣を作るので、チーム内連携の強化につながるという利点もある。
デジタルツールでも毎朝誰かの画面の前に集まって話すことはできるだろうが、その場で付箋を書き足したり動かしたりしながらの活発な議論は難しい。

WIP(仕掛り作業の数)を制限しよう

WIPはWork In Progressの略で、仕掛り中という意味だ。
ワークフローをボードに起こすと、ボード上の列はキュー(待ち)とWIP(仕掛り中)の2種類に分けられるだろう。
例えばTo Doはキューで、DoingはWIPだ。

かんばんボードではWIP数を制限することが大事になる。過剰なマルチタスクを避けるためと、後続のプロセスに負荷をかけすぎないためだ。

過剰なマルチタスクを避けるため

例えば、チームの人数をWIPのタスク数が上回っているなら、誰かが2つ以上のタスクに同時に取り組んでいることになる。
彼の脳内ではタスクの切り替えが起きている。スイッチングコストを甘く見ちゃいけない。以下はスイッチングコストに関する考察だ。

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同時に2つのタスクに取り組んだ場合、50%50%の時間をかけられるわけじゃない。タスクの切り替えの過程で20%が失われるので、タスクにかけられる時間は40%40%になる。
他のタスクにスイッチするときに、頭の中で組み立てていた構造が崩れていて、戻ってきたときにその構造を一から組み立てなければいけなくなるからだ。そこに使われる20%の時間は完全なるムダである。

スイッチングコストを計算に入れれば、同時にこなすのではなく、一つ一つ終わらせてから先へ進む方がトータルで見れば速い。

後続のプロセスに負担をかけないため

テスターが大量の作業を抱えているのに、開発者がどんどん新しい機能を作ってテスターに送り込めばパンクしてしまう。

WIP数の制限はこうした問題を明らかにしてくれるアラートになる。
チームとしてのアウトプット数を考えるなら、開発者は新しい機能を送り込む代わりに、テスターの支援に回ってタスクの渋滞を解消すべきだ。
それには自動テストを増やしたりテスト基盤を改善したりなども含まれるだろう。

見える化に終わりはない

見える化すれば終わりではない。長くなるので今回は書かなかったが、次のステップとしてはプロセスに関する指標を計測して、改善アクションを特定したり改善の効果を把握したりなどがあるだろう。例えば、1週間に完了させたタスク数や、1タスクが完了に到達するまでの平均時間などを週ごとにグラフにして、伸び率を見るなどだ。

ボード自体も日々チームで改善していくべきだ。作業の流れの見える化に決まった正しいやり方も間違ったやり方もない。
見えなかった進捗が見えるようになり、チームの連携を促し、ボトルネックが明らかになるまで、ボードをみんなで日々進化させていこう。

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