高校における群発自殺後の影響

今日読んだ論文はこちら

"The Aftermath of a Suicide Cluster in the Age of Online Social Networking: a Qualitative Analysis of Adolescent Grief Reactions" (Haffel et al., 2015)

高校生の群発自殺(未遂も多発)がおきたアメリカの、ある小さな郊外における研究で、オンライン上のソーシャル・ネットワーキングのコミュニケーションや、グリーフの影響について網羅的に調べたもの。10名という小規模の調査数だけれど、何より、この分野において貴重な、質的研究であるのがありがたい。

目下、わたしが調べなければいけない、肝心の「死別後の年数」について、この研究は「1年後」としていた。その理由は書かれていない。

ただ、SNSのコミュニケーションで起きていたことなど、私の肌感覚でいうと、覚えていられてせいぜい半年から1年分なのではないかと思ったりする。文字情報は残っていても、どのように、互いに影響しあっていたのか、またそれが感覚や感情にどのように感じられていたかは、記憶を掘り起こせても、1年というのは妥当なのではないか。

私の扱っているのは「社会・経済的影響」やけれど、この「社会的」をどう定義するかがむずかしい。

今回論文を読んでいて、気になったポイントは「行動面における影響」。

10人中、ほとんど全員(9または10名)が"withdrawal"(引きこもる、退く)行動的影響として挙げていた。誰かといたくなかったり、数週間授業を休んだ人もいれば、学校に戻るのがかなり難しいと感じていた人もいたという。

「ポジティブ」な行動面の影響としては、いじめを見かけたときに、積極的に介入したり、自殺予防に取り組むようになったという学生がいた。

おまけの話… ヨーロッパと比べて「宗教」がまだ生きているアメリカゆえか、ちゃんと Philosophical / Spritual と、スピリチュアルな側面への影響をあげていた。いのちへの感謝や価値を大事に思うようになったということや、教会により通うようになったり、神様をより近くに感じるようになったということなどが挙げられている。研究面でこうした視点が取り入れられているのは重要である。ただ、日本の高校で群発自殺が起きたからといって、お寺にお参りにいくようになる子が増えるわけではないと思うけれど。(ちょっと悲しい)


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